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3.17章

お待たせしました。

3.17章の投稿をさせて頂きました。

お読みいただければ幸いです。

「あれは、アウルムホークですわっ。」


 遅れて牧舎の屋根へと登ってきたクックが手で日避けを作りながら教える。


「ここに来てなんで別種の魔物が。」


 姿は同じく鷹であり、アルゲンホークを一回り大きくし金色にコーティングしたような姿だ。


「恐らく(つが)いだと思いますですわ。」


 あり得るのかそれ。

 見た目はほぼ一緒だけど別種だぞ。

 魔物の生態はよく分からん。犬種が違うようなものなのか。


「アウルムホークは大型ドラゴンに匹敵する強さ持っていますですわ。」


 しかも超大物じゃないか。

 下の動物たちはそのプレッシャーに当てられ怯えていたのか。


「アイツは自分の嫁を取り返しに来たってことで良いんだよな。」


 なんだか一気に悪者になった気分だ。

 オスかメスか知らないけど。


「キュオーンッ!」


 空中にいる金鷹が鳴き声をあげると、「キュウッキュウッキュウッ。」と銀鷹が鳴き声をあげ、それが助けを求める鳴き声に聞こえるのが余計にタチが悪い。


「なんか捕まえる方法あるか。」


 早速膠着状態に陥りかけた戦闘の打開策を求める。


「今のうちにアルゲンホークを殺すべき。」


 血も涙も無いセリフがパパラチアの口から溢れる。


 だが、それについては賛成だ。

 逃げ出すことは不可能だろうが、外から何かされれば触手が保たない可能性がある。


 止めていた触手を再びアルゲンホークの首へと伸ばす。


 その時、それに気づいたアウルムホークが上空から急降下する。

 その翼には僅かだが魔法の光が宿っている。


 アウルムホークは俺とアルゲンホークを横切る軌道で突っ込んでくると、突然黄金の翼を広げ、体を傾けその黄金の翼を刃物代わりに触手へと叩きつける。


 引っ張られると思ったが、その予想に反して翼はスパッと触手を切断し、牧舎の屋根にも鋭い斬撃の跡を残し上空へと急上昇した。


「なっ、魔法を使えるのか⁈」


 しかも、苦手な斬撃系統の魔法ときた。

 空中戦をする(すべ)を持たない俺では不利と言わざるを得ない状況だ。


 そして、この魔法が効果的と判断したアウルムホークは再び黄金の翼に魔法の光を宿し、今度は俺を狙い急降下を開始する。


「マジか。」


 俺は腰から触手を4本顕現させ、その場から触手の力に任せ飛び退き、屋根の端まで退避する。


 俺が先程まで居た場所を黄金の塊が疾風の如く、過ぎ去り先ほどと同じように屋根に切れ込みが入る。


 飛び退かされたせいでアルゲンホークとの距離が開いてしまった。

 それを待って居たかのように、俺とアルゲンホークの間にアウルムホークが降りたつと、太陽の光を眩い程に反射する大翼を広げ威嚇する。


「くそっ、不味いな。」


 今はアウルムホークの注意がこちらに向いているが、隙を見せればアルゲンホークを直ぐに助けるだろう。


 さっきの斬撃系の魔法で無くとも、あのサイズが伴う筋力量なら可能であるはずだ。


「パパラチア、俺たちが金色を引き受ける。」


「私もなのですわ⁉︎」


 少しは魔法が発揮できる状態なんだ我慢してくれ。

 それに注意を逸らすだけで良い。


「その間に銀色を倒せるか。」


「可能。」


「なら任せた。おい、金ピカこっちだっ!」


 叫ぶと俺は、腰の触手をアウルムホークの翼へと巻きつけ無謀な取っ組み合いを開始する。


 そのせいで、自然とお互いの顔が近くに寄せられ、その黄金の(くちばし)が俺を啄もうと伸ばされる。


「ぐおおぉぉぉっ。」


 これは確かに1人なら確実に負けていたであろう、だが。


「全く無謀過ぎますでわっ!」


 クックがアウルムホークの右横から弱く魔法の光を纏った包丁(りゅうさい)を振るう。

 その横薙ぎが(まぶた)の上を傷つけ視界を血で塞ぐ。


 そして、クックはアウルムホークの頭を跳び箱のように飛び越えると、残った目の視界へ映り込み、包丁をちらつかせ自分の方へと注意を向かせ続ける。


 そして、俺から注意が逸れた瞬間に触手をアウルムホークの顎下から垂直に伸ばしアッパーを決める。


 アッパーによって軽く脳震盪を起こしたのか、ぐらりとその巨体が揺れ、牧舎の屋根から転がり落ちる。


 だが、落下の衝撃で意識を取り戻したのか、直ぐに翼を羽ばたかせ、再び牧舎屋根へと巨体に似つかない軽さで着地する。


「悪いな、卑怯な手を使った。恨んでくれても構わない。」


 屋根から飛び降り一旦姿を隠したクックとパパラチアの姿は無く。

 金鷹の鋭利な瞳に映るのは俺と、嘴の間からダランと舌を垂らし、血を流す力尽きた銀鷹の姿。


「キュオォォォォォォンンンッッ!」


 番いを失った慟哭が響く。

 正直心が痛むが、だが殺すか殺されるかなのだ。

 奪うことに心を痛めていたら、勝てるものも勝てなくなる。


 だけどせめて、その怒りだけは引き受けよう。


 憎しみが籠るその視線が射殺すかのように爛々(らんらん)と輝く。


「行くぞっ。」


 そう凄み戦闘を再開しようとするものの、これ以上牧舎を壊されては堪らないので、俺は触手で跳ねアウルムホークに飛びかかる風を見せ、そのまま横を通り抜け地面へと降りる。


 当然その背をアウルムホークは低空飛行で追いかけてくる。


 立体的戦闘であればこの腰に顕現させた触手は強いと自負があるが、平面である平原などの戦闘では重りにしかならない。


 だが、無防備になる訳にもいかず、触手をさながらタコの様に這わせ、重さを軽減しながらダッシュをする。


 時々、背中から啄もうとアウルムホークの嘴が迫るも、触手で何度も払い退け目的地まで走り続ける。


 そして、目的地である一本の大樹の横を通り抜ける。


「今だっ、パパラチアッ!」


 木の上で待機していた、パパラチアが金鷹の首目掛け飛び降りる。

 その音なき接近に金鷹は気づく様子が無い完璧な隠密。

 パパラチアが手に持つナイフが魔法の光を灯し、魔法の光がナイフに更なる刀身を創り出す。


「暗殺魔法、唯々殺す(マシーンキル)。」


 背中に着地した瞬間にそのナイフを一閃。

 暗殺者は仕事を終えると直ぐに背中から離脱する。


 アウルムホークはゴブリンの時同様に首が離れ、地面へと先に落下し、胴体も続く様に地面にズサァッと引きずり後を残し転がる。


「流石、白金冒険者ですわ。」


 念の為、パパラチア同様、木の上に控えていたクックが飛び降りながら呟く。


「これくらい簡単。」


 大物を倒したというのに誇るでもこと無く、少女は冷静に言葉を返すだけだった。


お読み頂きありがとうございました。

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