3.14章
お待たせしました。
3.14章投稿させて頂きました。
お読みいただければ幸いです。
「やあやあ、冒険者さん方よく来てくれたね。僕はミーティス。」
麦わら帽子を被りピッチフォークを持った男性が汗を拭きながら挨拶をしてくれた。
目的の村に着いた俺たちは、早速畜産農家のミーティスさんに迎えらている。
「俺はオーパス銀色だ。こっちがクックで小さいのがパパラチア。アルゲンホークに狙われてるのはここの村だよな。」
フードを外した俺は、自分たちの紹介を軽く済ませてアルゲンホークが現れるのはこ此処かと質問する。
自己紹介の途中で柵に囲まれた農用地をチラッと見回すも、家畜と思われる生き物は見当たらない。
「そうだとも。本当に来てくれて助かるよ。ああ、家畜が見当たらないのが疑問かい。うちの子たちならみんな牧舎の中だからだね。」
それもそうか。
わざわざ魔物に餌なんぞくれてやる必要など無いからな。
「何時頃にアルゲンホークは現れたんだ。」
魔物の行動なので対して当てにはならないだろうが、一応目安として聞いておく。
「そうだね、昼下がりの事だったかな。うちの子たちがやけに騒がしいと思って振り返ると、空飛ぶ魔物が一瞬でうちの子の一匹が連れ去られてしまったんだ。」
とても悲しそうにミーティスさんは言う。
一応、育ててるのは家畜だよな?
このメンタルで良く家畜の出荷が出来るものだ。
「ああ、そういえば、今日の昼頃にも空におっきな影が飛んでいたのを見たよ。」
ふむ、という事は家畜を狙いにやって来るのは昼頃からか。
楽に狩れる獲物に味を占めたといったところか。
「取り敢えず今日はもう来なさそうだな。」
「同感ですわ。もうお昼の時間帯はとっくに過ぎていますですわ。」
俺とクックは同じ結論に至る。
「そうなると宿か。」
「それなら僕の家の空き部屋が一室あるから貸すよ。せっかく来てくれた冒険者さんたちを野宿なんてさせられないよ。」
ミーティスさんは善人オーラ全開で、今日来てくれたばかりの俺たちを泊めてくれるという。
「借りる。」
どうやらパパラチアはここで良いらしい。
俺も不満はないのでお言葉に甘えさせて頂くことにする。
「ありがとうミーティスさん、じゃあ今晩は泊まらせてもらうよ。」
「お願いしますですわ。」
「うん、うん、わかったよ。じゃあ、僕の妻にも伝えて来るよ。」
奥さんが居たのか。
やっぱり奥さんも穏やかな人なのだろうな。想像すると少し羨ましい。
妻と話を付ける為ミーティスさんは家の中に入って行った。
そして、外まで響く大声が聞こえる。
「ミーティスっ!なんでアンタはそうやって、私の相談無しに決めるんだい。」
「ご、ごめんよっ、イーラ。」
俺の穏やかな夫婦の理想像が一瞬で砕け散る。
これは完全に尻に敷かれているな。羨ましい何て思ってごめんなさいミーティスさん。
草食な旦那さんは肉食な奥さんに食われたみたいだ。
もはや馴れ初めさえ容易に想像できる。
プロポーズは奥さんの方から胸倉を掴んでだな。
暫くすると、ガチャリと玄関の扉が開き、ミーティスさんの奥さんと思われるお腹を大きく膨らませた女性が出てくる。
外の仕事を手伝っているのか、その肌はこんがりと焼け小麦色で活発な人に見える。
うん、何というか想像通りだ。
お腹が出ているが、太っているというには少し違和感があるのはなぜだろう。
「みっともないもの聞かせて悪かったね。私はイーラってんだ。悪いね、泊められる部屋が一室しか無いんだけど、本当に良いのかい。」
「今からでも私が知り合いに頼んで、」と言った所でイーラさんの言葉をクックが遮る。
「大丈夫ですわ。泊まらせて頂けるだけで有難いですわ。」
「そうかい、じゃあ、狭い所だけどどうぞ入ってくんな。」
イーラさんが家の中へと招待してくれる。
「「お邪魔します」ですわ。」
「ん。」
それぞれ挨拶をしていえのなかに入る。
パパラチアのは挨拶というには微妙だが。
「あいよ。」
イーラさんはパパラチアの無礼な態度も気にせず、快活に返事をし家へと迎え入れてくれる。
「部屋はあっちにあるからついて来な。荷物だけでも置くと良い。」
そして、部屋に着くと雑巾を持ったミーティスさんとばったり出くわす。
oh、ミーティスさんのポジションは完全にイーラさんの尻の下だ。
使いっ走りにされるミーティスさんに少し哀れみを感じてしまう。
「今、粗方掃除が終わった所だよ。まだ汚れてるかもしれないけど、ゆっくりしていってよ。」
だが、使いっ走りをなんの苦にも思っていないのか凄くいい笑顔で返してくれる。
「ああ、ありがとう。」
少し引き攣りかけるもなんとか返す。
部屋に案内を終え挨拶をすると、ミーティスさんとイーラさんの2人は自室へと戻って行った。
2人を見送った俺たちも部屋に入る事にする。
「はぁ、明日は忙しくなりそうだな。」
「でも、昼頃までは暇そうですし、それまでは休んでいられますですわ。」
「疲れた休む。」
パパラチアが1つしかない少し大きめのベットを占領し呟く。
彼女にとっては初めての魔物との戦闘だったのだ。一瞬で終わったとは言え、慣れない事をして疲れたのかもしれない。
ぐでぇとベットの上で溶けるように脱力するパパラチアを見て気づく。
「ああ、ベットが1つしかないのか。」
「オクト、貴方は床ですわ。」
「分かってるよ。」
俺も女の子に床で寝ろという程鬼じゃない。
幸い野宿の用意をしておいたので毛布もある。
クックに毛布をもう一枚借りて、学生鞄に巻き枕代わりに使えば床でも余裕で寝れる。
「さてと、明日の準備でもするか。」
俺は荷物を広げ、今日使ったものの消耗具合を確かめて行く。
魔物避けの香水はまだまだ余裕があるな。
あっ、剥ぎ取り用のナイフが少し痛み始めてる。
うーん、安物だったからなぁ。
一応、演劇代の報酬としてバクさんから支払われた給金があるから、それも使ってもう少し良いのを買うか。
そんな具合に過ごしているうちに、部屋の外からまたイーラさんの声が聞こえる。
「アンタは料理が下手なんだから台所に立つんじゃないよ。」
「いや、でも。」
「今日1日くらい大丈夫さね。さぁ、退いたどいた。」
夫婦の騒がしい声が聞こえる。
「私、イーラさんを手伝って来ますですわ。」
「えっなんで?」
「妊婦のイーラさんを無理に働かせるわけにはいきませんですわ。」
イーラさん妊娠してたのか、気づかなかった。
ああ成る程。お腹が出ているのに太って見えなかったのは、太ってるからじゃなくて、妊娠してたからか。
1人納得してる間にクックはさっさと出て行って、イーラさんを手伝いに行っていた。
「うーん、俺もなんか手伝うか。」
料理は出来ないけど、力仕事くらいならと立ち上がり俺も台所へと向かう事にした。
台所に着くと、既にクックが占領しており、イーラさんは椅子に座り休んでいた。
「クックなんか手伝う事あるか。」
「スープを焦がさないようにかき混ぜておいでくださいですわ。」
テキパキと肉や野菜を切り分けながら指示をしてくれる。
「了解。」
「アンタたち良い夫婦だね。」
「なっ⁉︎」
「あっぶなぁっ⁉︎」
クックが包丁を手から滑らせ、俺の足の真上に向かって落ちる包丁をギリギリの所で躱す。
包丁はビーンッと音を立てて床へと穴を開けた。
「あっ、すみませんですわ。」
「あはは、良いさ良いさ。ウブだねアンタ。」
「私と彼はそういう関係では有りませんですわっ。」
なおもからかうイーラさんにクックが反論する。
いやいや、クックさん謝る相手もう1人忘れてるよ?
危うく俺の足と床が合体しちゃうとこだったんだぞ?
「そうかいそうかい、なら素敵な彼氏を逃すんじゃないよ。」
「なっ、なっ、何を言ってるのですわっ。」
顔を真っ赤にしてクックが叫んでテンパる。
俺はそんなクックを横目に平静を装い、床に刺さった包丁を抜くと、キッチンの上に戻す。
「こらイーラ、冒険者さんたちが困ってるでしょ。」
ちょうど良くやって来たミーティスさんがイーラさんを注意してくれる。
「いやぁ、すまないね。面白い反応をしてくれるからついついね。」
反省の言葉とは裏腹にカカと笑うイーラさん。
「全くもうですわ。」
クックは落ちた包丁を拾おうとして、既に拾われていたことに気づく。
「あっ。拾ってくださったのねですわ。ありがとう…、」
視線が俺の方を向き、きっとクックよりも赤くなっているであろう俺の顔を見てしまう。
「ございま…す…です…わ。」
言葉が尻すぼみになり、クックはまた顔を赤く染める。
「おふっ。」
俺の脇腹にクックが左肘で肘鉄を入れると、料理に戻って行った。
顔が赤くなりやすいのは昔からなんだからしょうがないだろ。
内心そう叫ぶが、照れているのが後ろの2人にバレるので口には出さない。
後ろから察したような忍笑いが聞こえるが気にしないったら気にしない。
そんな一幕を過ごしながらも料理は順調に進んで行くのであった。
お読み頂きありがとうございました。




