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3.6章

お待たせしました。

3.6章の投稿をさせて頂きました。

お読みいただければ幸いです。

「はーい、ただいまハートたちは悪〜い貴族の館へ潜入中だよ〜。現在地はそのお庭となりま〜す。」


「頼む、分かっているから少し黙ってくれないか。」


 隠密行動中だというのにやたらテンションが高くまるでリポーター気取りのラビ改め、怪盗ハートに困惑する。


「大丈夫、大丈夫だよ〜、こっちに人はいないからね〜。ハートの耳をもうちょっと信頼してくれても良いんだよ〜。」


 俺だって信頼していない訳ではないし、分かってはいるつもりなのだが、俺は怪盗業が初めてなのでもう少し緊張感を持って欲しい。

 あと、犯罪の片棒を担がされる俺の内心にも気を使って欲しい。


 マスクの内側で聞こえない溜息を零す。


「お、合図みたいだね〜、じゃあお仕事始めよっか〜。」


 何かを聞き取ったのか、ピクンとハートの耳が跳ねるように動いた。


「は?俺には…。」


「アオォォォォォォォォォォォォン!」


 ドーンッ!パチパチパチッ!


「イィィィッッッツ、ショォォォォタァァァァァイム!」


 何も聞こえないと続けようとしたところで、俺の言葉を搔き消すように遠吠えが響き、花火が空に咲き、その跡に続いて開幕が宣言される。


「成る程これが、合図か。」


「うーん、ちょっと違うけど、いっか。ほらエイト君早く行くよ〜。」


 俺のオクト改め、怪盗エイトの名を呼びハートは行動を促す。

 いや、改まっているのかこれ。


「じゃ、ここの窓から入るよ〜。」


 ハートはそう言うと窓をピッキングするでもなく、ただ単純に遠慮なく窓を蹴り割ろうとする。


「いやいや、ちょっと待てよ。」


「えっ、何が〜。」


 ふぅ、セーフ。

 ハートは構えた足を下ろし、何故待つ必要があるのかと聞いてくる。


 余りに自然に蹴り破ろうとハートが足を構えたので少し反応が遅れたが、デカイ音を立てる前になんとか止めることが出来た。


「流石に音を立てたら不味いだろ。」


「ん〜、でもここのみんなはバク兄…じゃなかった、エースに掛かりっきりだから、こっちで音立てても問題無いと思うけどな〜。隠密魔法でハートが出す音は一応聞こえなくも出来るしね〜。」


 隠密魔法便利だな。


「そうは言ってもしっかり警戒するべきだ。わざわざ派手な事をこっちまでする必要は無いだろう。一度俺に任せてくれ。」


 今、素の方が出てたけど本当に大丈夫か。


 少し心配をしながらも、俺はそう言って窓を覗き込みながら手を壁に当てる。

 そして、建物の内側から触手魔法を発動させ触手を窓越しに操り、窓の鍵を簡単に開けてみせる。


「エイト君やるじゃ〜ん。エイト君はきっといい怪盗になれるぜ〜。」


 一体いい怪盗の定義とはなんなのだろうか。

 バンバンと背中を叩きながらハートが言ってくる。


「これなら忍び込み放題、盗み放題じゃんよ〜。どしたの〜、もっと喜んでよ〜。」


 いや、悪用するつもりなど毛頭にないので喜べと言われても。


「分かった、分かったから静かにしてくれってば。」


 尚もバンバンと背を叩きづつけるハートに静かにしてくれと頼み背を叩くのをやめてもらう。


「じゃあ、行くか。」


 緊張感のせいでゴクリと生唾を飲み込み落ち着こうとする。


 人命救助の為とはいえ、やはり忍び込むというのは気が引けるというか、何となくだが腰が重い気がする。


「りょ〜かい。じゃ、入ろっか〜。」


 そんな俺とは真反対の態度でハートは気軽に言うと、勝手の知れた自分の家のように貴族邸の中へと入って行く。


「おっ邪魔しま〜す。」


 そして、呆気に取られかけた俺は慌てて、その後に続くように俺も窓からそろりと入り、中の様子をグルリと確認するがハートの言った通り人の気配は俺とハートの他に無かった。


「あちゃ〜、お姫様は今は地下に閉じ込められてるみたいだね〜。声が上からじゃなくて下から聞こえるや〜。」


 白い耳を忙しなくピクピクと動かしハートはそう答える。


「しかも、声が他にもあるね〜。囚われのお姫様はどうやら1人でいるって訳じゃないみた〜い。」


「敵か味方か分かるか?」


 囚われた人がまた増えたと言う可能性と敵が常に見張ってるというパターンも考えられる。

 まぁ、どちらも状況が悪転したことには変わりないと言えば変わりないのだが。


「1週間調査した時には聞かなかったか声だからな〜、ちょっと分からないや〜。」


 成る程、俺とクックが演劇練習に没頭している間姿を見ないと思ったら、ここの調査活動をしていたわけか。


「地下への通路は知ってるのか。」


「流石に屋敷の地下への道までは把握してないよ〜。」


「早速詰みかよ。」


 口に出してダメ出しするも、地下までと言うことは地上部分の屋敷内はだいたい把握しているのだろう。

 それを鑑みれば十分な成果と言える。


「エイト新人君、どうにかならな〜い。」


 と言われても、匂いを知らないから嗅覚強化の触手は役に立たないし。

 俺の魔法は触手魔法のみだ。

 触手を伸ばしたり縮めたりできる程度の魔法で斥候職の真似事など…。


「あ。」


 あるにはあるな。


「なになに〜、エイト君何か方法があるの〜。」


「いや、あまり使いたくないんだが。」


「こんな時に渋ってる場合かな〜。やらずに後悔するより、やって後悔せよだよ〜。」


「良いんだな、後悔するなよ。」


 ハートに最期の忠告をする。


「え゛、何でハートが後悔する流れになってるのかなぁ〜。」


 汗々と慌てふためくハートをよそに俺は魔法を発動させるのであった。


お読み頂きありがとうございました。

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