3.3章
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「じゃあ、ボクの劇団の団員を紹介しよう。そこの2人はボクの友達だ、ほらみんな自己紹介して。」
バクさんはそう言って、入ってきた彼女たちの隣に立つと彼女たちに挨拶するようにと促す。
「はいはーいっ!じゃあラビから、ラビから〜っ!」
白い兎耳を生やした白髪少女がはしゃぎながら一番手に立候補した。
「ラビはラビ、ラビって呼んでね〜。18歳だよっ。兎人族だぴょん。」
えっ、本当にぴょんって語尾なのかっ!
クックも同感なのか驚いた表情をしている。
「こらこらラビ、2人をからかわないで。」
そんなラビを何故かバクさんは注意する。
「はーい、バク兄。ごめんね〜、語尾にぴょんってつけるとみんな面白い顔してくれるからついついからかっちゃった〜。テヘッ♪」
アイドルみたいな自己紹介をかまし、ラビと名乗った少女は舌を出して謝る。
正直1人目でお腹いっぱいな自己紹介なのだが。
しかも、バクさんのことを兄と呼んでいたな今。
そういえば、入ってきた時も誰かアニキと呼んでた気がするな。
「ラビの次はアタシだな。アタシはドグだ。年は確か19になる。犬人族だ。ドグで良い。よろしく。」
そう言って名乗ったのは茶色い犬耳を生やした茶髪少女だ。
「え〜、ドグ姉つまんな〜い、最後にワンってつけようよぉ〜。」
「やっ、やるか馬鹿っ!良いんだよアタシはこれで。」
ラビの煽りに顔を少し赤くして、絶対にやらないからなとドグは吠える。
明らかに種族が別なのにまたラビはドグのことを姉と呼んだな。
団員内では兄弟姉妹のように呼び合うルールでもあるのだろうか。
「はいはい、2人ともそこまで、さあ、最後の紹介だよ。」
バクさんがそう言うと漆を思わせる黒髪の少女が前に出る。
「えっと、私は、その…バドって…言います…。そのえっと、14歳です。あとなんだっけ…、あっ…、鳥人族です。」
なんとか自己紹介を終えたといった様子の彼女は背中から漆黒と言える一対の翼を広げ見せると、ぺこりと頭を下げ、広げた翼をすぐに畳んでしまった。
「おっと、俺はオクトだ。17歳。人族だ。」
相手が自己紹介をしたのだから自分もと自己紹介をと自己紹介をしたのだが、彼女たちにつられて年齢と種族を言ってしまう。
「私はクックと言いますですわ。16歳ですわ。同じく人族ですわ。」
そしてクックもつられ自分の年齢と種族を言う。
というか、年下だったのか。初めて知ったぞ。てっきり同い年かと思っていた。
いやでも、思い返してみると結構子供っぽい所もあったような。
「子供っぽいのはオクトもですわ。」
表情をまた読まれた。
「あはははっ、人族なのは見れば分かるよぉ〜。2人とも面白〜い。」
そんな俺らにラビが腹を抱えて笑う。
「さて、自己紹介も終わった所で本題だ。」
緩んだ空気を仕切り直すようにバクさんは告げる。
「君たちをボクの劇団にスカウトしたいんだ。」
「「は?」」
一度引き締まった空気が緩む。
いや、バクさんはまだ真面目な顔をしているんだが。
劇団にスカウト?訳がわからない。
困惑している所にバクさんが説明を入れてくれる。
「ボクの劇の演目はね、マジックショーを織り交ぜた怪盗勇者が活躍するお話なんだ。」
「でもねぇ、なんか最近貴族の人たちからの受けが悪くてね〜。」
「あの悪徳貴族を成敗する話じゃそりゃ、プライドの高い貴族様方からは反感を買うさ。」
バクさんの話にラビとドグが途中から口を挟んでくる。
ドグは首の辺りを爪でカリカリと掻きながら、明らかにイラついた態度を見せている。
「そこでだ、貴族役が出来る子を探してたんだ。」
バクさんが話を本題へと戻す。
「でも、貴族役なんて貴女方のどなたかがやれば良いのでわですわ。」
「あの…、貴族の人たちに…その、私たち見たいな獣人はいないんです…。」
「あっ。」
クックは一度断ろうとするも、バドの言葉に理解する。
言外に私たちでは貴族を演じれないと言っていることに。
「いや、待て。なら普段の貴族役は誰がやってるんだ?」
「貴族が嫌いな庶民の人なんていっぱいいるからね〜、そこら辺のお兄さんにお給金弾むからと頼めば、ノリノリでヤラレ役を演じてくれるよ〜。うわっ、ヤラレタ〜って。」
おい庶民。
ラビが普段どうやって役者を確保しているか教えてくれた。
「だけど、今回は貴族令嬢役だ。庶民にはあまり良いイメージを貴族に持たれないからな、だからと言ってお姫様役をやらせてやると言えば、王族から睨まれるかも知んねえしよぉ。」
クックが先程言っていた、不敬罪辺りにお姫様役が該当するのであろう。
まぁ、今回は貴族令嬢役が必要という訳で貴族役を受けてくれる庶民が見つからなかったわけか。
「まぁ、丁度クックは貴族だしな。」
「なっ…、今のタイミングでそれを喋りますかですわっ!」
この貴族ヘイト感漂う空気の中で自分が貴族だと暴露されるとは思っていなかったのか、クックが驚きの声を上げる。
「えっ、そうなんだ〜、でもでもなんかクックちゃんて貴族っぽくないよね〜。」
「それはそれで傷つきますですわ。」
「悪かった、貴族に嫌な記憶が有るだけだ。別にだからと言ってアンタを嫌いって訳じゃない。」
1番敵意剥き出しだったドグが素直に謝る。
「そ、それは安心しましたですわ。」
クックが胸をホッと撫で下ろす。
「またまたぁ〜、ドグ姉ったら照れちゃって可愛い〜。」
「煩いラビ、貴族だからとかそういうのはやめただけだ。」
「も〜、すっかり丸くなっちゃって〜、ホント、誰のおかげかなぁ〜。」
「それ以上続けるなら咬み殺す。」
「キャー、こわ〜い。」
「ったく。」
ドグを散々からかうだけからかい、ラビは部屋の外へと退散した。
しかし、ラビのお陰で少しだけ重くなった雰囲気が霧散した。
「えっと、私も貴族というものが庶民の方々にどう思われているかは理解がありますですわ。なので気にしなくても大丈夫ですわ。」
この話はクックがそう締めて終わった。
「それで、劇の話なのですが…ですわ…。」
やはりどうも乗り気ではないらしく、煮え切らないクックの言葉。
「クック、やれば良いんじゃないか。」
言葉に詰まるクックに俺は助け船を出すことにした。
「ですがですわ…。」
うん、最後にですわってつけられるとシリアス感が薄れるな。
あと、ですがですわはやっぱり語尾的にキツさがあるよね。
そんな下らない事を考えながらも俺の答えは決まっていた。
「クックの演技は凄く上手いから誇って良いぞ。バクさん、その役を是非クックに任せてくれ。」
俺はクックの返事を待たずに勝手に話を進めることにした。
「他人ごとのように言ってるけど、オクト君、君もやるんだよ?」
「え?」
バクさんの予想外の言葉に思考が停止する。
「オクト、貴方の魔法の気色悪さは随一ですわ、誇って良いですわ。」
「いや、なにも誇れねぇよっ!」
すかさずクックが、あるはずのない言葉の触手を伸ばし、俺を道連れにするため絡みとろうとする。
だが、そうはさせない。
言葉の触手であろうと、触手の扱いは俺が上手だ。
「無理だって、クックはともかく俺に演技の才能なんて無いし、使える魔法はバクさんアンタも知ってるだろう。」
触手魔法などとてもじゃないが、ヒーロー向きの魔法とは言えない。
「ああ、だからこそ、君には敵の悪魔役を演じて欲しいんだ。」
「オクト、お似合いですわ。ぷふぅ、くすくすくすくす…。」
「うれしくねぇよっ!」
オクトさんの悪魔役大抜擢にクックはとても
良い笑顔だ。
「俺は今金欠なんだ、この後も冒険者組合に行って依頼を受けるつもりだったんだ。」
「生活費なら心配しないで良いよ。タダ働きなんてさせない。ちゃんと給料を出すよ。」
バクさんはそう言い胡散臭く微笑む。
ぐぅ、逃げ道を塞がれた。
「大丈夫、大丈夫。なるべくオクト君のセリフは少なくするから。」
「マジかぁ〜。」
俺の口から諦観の声が漏れる。
結局その触手扱いの上手さが仇となり舞台へと立たされるハメになり、この日から開演までの一週間、みっちり演技指導をクックたちから受けることになったのであった。
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