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3.2章

お待たせしました。

3.2章投稿させて頂きました。

お読みいただければ幸いです。

「少年少女よ、急にわけのわからぬ場所に呼ばれ、誘拐されたとも思える状況で、見知らぬ者に戦えと命じられるのだ。君たちならどう思う。」


 怪盗勇者エースは俺たちに問いかける。


 確かにそう言われれば異世界転移など無茶苦茶な話である。

 不安に感じる人もいれば、恐怖、憤り、困惑する人もいるだろう。

 エースもそのうちの一人だったのか。


「ワタシはめっちゃワクワクしたよ。」


「なんでですわっ!」

「なんでだよっ!」


 俺とクックの声が重なるダブルツッコミが決まる。

 最初の不満とやらはどこへ行ったのだ。


「思わず同情しかけて損したわっ!」

「まったくですわっ!」


 俺のシリアスを返して欲しい。

 そんな俺の想いを他所(よそ)にエースの話は進んで行く。


「召喚者は美姫であり、その召喚の儀の神々(こうごう)しさも良かった。しかしね、一つだけ気に食わなかったことがあったのさ。」


 ここまで言われて俺も察しがつく。

 王都内では散々な記憶しか無いのだが、転移直後に気に食わなかった事なら俺もいくつか心当たりがある。

 いや、俺の場合は空間収納魔法が俺だけ貰えなかった事もあるのだが、エースは手に入れてる。

 固有魔法も全員微妙としか言えないものであった。


 なら、エースが抱く不満とはアレのことだろう。


「そうさ!あのエロ姫の態度が悪かったことがね。」


「あー、やっぱりあのエロ姫ね、態度悪かったもんなぁ〜。」


 この件に関しては俺も同感である。

 最初は騙されかけたが、本当に見た目が99パーセントと言うのは当てにならない。


「パトリダ=エロエトラス姫ですわっ!不敬罪で貴方達は捕まりたいのですわっ!」


 印象が最悪で名前など覚える気など全く湧かなかったんだが、クックに言われそんな名前だった気がして来た。

 パトリダ=エロエトラス姫、現国王と現王妃のたった1人の娘であったはずだ。


「少女よ、まぁ、落ち着くと良い。」


「…次はありませんですわ。」


 それだけ言うとクックは口を噤む。


「あのパトリダ姫は態度が悪かったのだよ。」


 あ、言い直した。


「ワタシたちは呼び出されてから直ぐに、お付きの者の手によって鑑定魔法にかけられたのだよ。」


 鑑定魔法とは、鑑定した者の持つ魔法を知るための魔法であるらしい。

 鑑定前にパトリダ姫がそんなことを言っていたと記憶している。


「しかし、その場にいる全員の魔法が判明すると、少し取り乱した後、明日に出陣式を執り行うと告げるだけ告げ、あとは従者に任せるとほっぽり出してしまったのだよ。」


 部屋を出て行く時一度も振り返らなかったからなぁ、あのお姫様。

 まぁ、俺、シズト、バクさんとその魔法のラインナップを考えると同情しないこともないが。


「そこでワタシは考えたのさ、そちらの都合など知ったことこか、ワタシはワタシで自由にやらせてもらおうと。」


 エースは仮面の奥で密かに燃やしていた感情を語る。


「しかし、何をするにも資金が必要だ。だからワタシは少しお宝を頂いただけさ。なに、世界を救う代償だと思えば安いくらいじゃないか。」


「確かに、世界を救うのであればそれくらい安い?のですわ。」


 おい、騙されてるぞ。

 やってる事は歴とした犯罪行為だからな。


 そう思いつつもわざわざ気付かせるとまた面倒くさいので黙っている事にする。

 それに、俺も少々あの態度にはムカついていたので清々した気持ちも少なからずあるのも確かだしな。


「そうだろう。ワタシが『泥棒勇者』と呼ばれるようになった理由にはそんな深い事情があったのだよ。少女よ、質問の答えとして納得頂けたかな?」


「はい、納得しましたですわ。」


 ちょろい。

 どうしてうちの子は人を疑うということを知らないのだろうか。

 うちの子の将来が心配でならない。


 あと、深いとかエースは言ってるが、要はムカついて盗んだという浅はかすぎる理由なんだが。


「次は俺の質問に答えてくれ。」


 まぁ、『泥棒勇者』と呼ばれるようになった経緯はこの際置いておこう。

 正直、語られた分だけでお腹いっぱいだ。それに俺の質問も残ってる。

 俺は疑問に早く答えて欲しくて、エースを急かす。


「簡単な事だよ。」


 今度は仮面を外し、落ち着いたテンションでエース、いやバクさんは話を始める。

 このギャップ差には慣れるのは大変そうだな。


「言っただろ、普段は劇団をやっていると、この街には劇をしに来たんだよ。」


 彼がそう呟くと後ろから階段を下る音が聞こえ3人の女性が入ってきた。


「たっだいま〜。」


「今、帰りました。」


「アニキ、今帰ったぜ。」


「おっとタイミングが良いね。どうやらうちの団員が帰って来たみたいだ。」


 入ってきた彼女たちをバクさんは『団員』と呼んだのであった。






お読み頂きありがとうございました。


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