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2.21章

お待たせしました。

2.21章の投稿となります。

お読みいただければ幸いです。

「メイちゃーん、お爺ちゃんが一番だったよぉ〜!約束のご褒美ちょーだ〜い!」


「うぇっ⁉︎村長、何でまだ魅了魔法が解けないんっすか⁉︎」


 シズトの回復魔法で全員の治療が終わったあと、街に戻ると俺たちを出迎えたのはクックとテッカイさんではなく、見知らぬ巨人族の老人であった。

 カーメイが村長と言っていたがどっちのだろうか。


 そんなことを考えてると、村長は某国民的アニメのようなカエル跳びでダイブをかまし、カーメイを見事にキャッチする。


「うぇ〜、髭がジョリジョリするっすぅ。師匠助けて〜っす。」


「あはは、ごめんねメイ、頑張って。」


 助けを求められた師匠だが、弟子のメーデーに取り合う気は無いようだ。


「メイちゃん、ごほーびのちゅー。」


「村長っ、俺っちそんなこと言ってないっすよね⁉︎ギャーァァァァァッッス。」


 しっかり語尾を忘れないその精神に敬意を払おう敬礼。

 そして、カーメイの顔半分をベトベトにしたところで村長はようやく魅了魔法から解放されて、カーメイもそれ同時にどさっと手放され解放され、地面へと打ち捨てられる。


「うぅ…ぐすっ…、だから魅了魔法なんて…っす…。」


 起き上がる気力も湧かないカーメイが地面で横になったまま足を抱えて丸くなる。

 さっきまで冒険者だったカーメイのすがたはもうどこにも無い。


「どこじゃ、此処は。」


「気がついてすぐで悪いんだけど、ロック=ロックのことで村長に話があるんだ。」


 シズトがカーメイが村長と呼んだ人に話しかける。


「うぇ、俺っちのことは無視っすか⁉︎」と死んだはずのカーメイの声が聞こえた気がしたが、誰も気付く様子が無いので俺の気のせいだったみたいだ。

 カーメイは死んだんだ…。あいつは最後までうん。まぁ、いいや。


「なんじゃ、お主は。」


「はじめまして、金色冒険者のシズトです。村は僕たちが解放したから、もう大丈夫ですよ。」


「なんじゃと、他の皆はどうしたのじゃっ!」


 村長がそう言いかけた所で、他の巨人族が先ほどの騒ぎを聞きつけたのかぞろぞろと集まって来ていた。

 ついでにクックとテッカイさんの姿もその中にあった。


「オクト、やっぱり無事でしたですわ。信じていましたですわ。」


 俺の前に来たクックが小声で言う。


「ああ、取り敢えず勝った。」


「ふふっ、なんですのその変な言い方はですわ。」


 素直になれない返事に微笑むクック。

 俺たちが一言会話を終えると村長が俺たちに話しかけてきた。


「感謝する冒険者様方よ。わしらはあのまま死を待つばかりじゃった。しかし、お主らのおかげで無事に助かったのじゃ。」


「気にしなくていいですよ。」

「気にするな。」


 また、いつかのように俺とシズトの声が重なる。

 だから今回は視線でシズトに譲ることにした。


「僕たちの目的は四天王の討伐でした。だから、むしろ僕たちの戦いに巻き込んでしまった挙句、村も台無しになっちゃって。」


「良いのじゃ、あやつを倒して頂いただけでわしらは十分救われたのじゃ。だから何か礼をさせてくれんかのう。」


「じゃあ、一つだけお願いがあります。」


 礼という言葉にシズトが食いつく。


「なんじゃ。お主らに命を救われたのじゃ今更捨てるのも惜しくは無いのじゃ。」


「いやいや捨てないでよ。単純な話だよ。シダメシ村の凝り固まった規則を捨てて、これからはもう彼みたいな人を出さないで欲しいってだけだよ。」


「…。」


 シズトの真っ直ぐすぎる言葉が刺さり、押し黙る村長。


 シズトは天才ナルシストでマイペースなふざけきった才能を持った奴だ。だけど、それと同時に凄く真っ直ぐな奴だ。


 実はシズトのことは転移前から直接関わりがあった訳ではないが知っていた。

 シズトは周りの人たちからは、天才だけど残念な奴と評価されていたのも知っている。

 そんな風評など気にせず、シズトはそれでも自分を貫き続ける奴だった。


「彼のことは村にも責任があるはずだよ、でもその彼は死んだ。僕が殺した。もうこんな悲劇を二度と生まないと僕に約束してくれないかな。」


 シズトの言葉の端々に殺したくなかったという気持ちが見え隠れしている。

 それでも、自分を傷つける言葉と分かっていながらシズトはその事実と向き合い逃げない。

 自分から逃げないシズトの言葉だからこそ、その言葉は深く突き刺さる。


「…約束するのじゃ。もう二度とあやつのような悲劇は起こさん。」


「わしらも協力するのじゃよ。」


 巨人族の人だかりから、また別の巨人族の老人が出て来た。


「リクオミ村の村長…。」


「わしらも同じ巨人族じゃよ。これからは手を取り合うって村を作っていくのじゃよ。」


「感謝するのじゃ。」


 どうやら、あの老人も村長だったようだ。

 会話を聞いてる限り、協力して村を復興していくという方針で固まったようだ。


「めでたしめでたしですわ。」


「いや、お前が締めるのかよ。てか、終わらせんなよ。」


 クックの締めの言葉に突っ込んでしまった。

 コイツのボケは本当に油断ならない。


 それにしても村の復興か、どっちの村も家屋など一つも残っていない状態だし大変そうだな。


「まぁ、村の復興なら大工魔法を使える奴らが居たからなそいつらに罰として手伝わせれば良いだろ。」


 あの2人のことを思い出し俺はそう呟く。

 あの2人がこれからどうなるのか分からないが、村の雰囲気を見るともう一度やり直せるのではと考えてしまう。


「そういや、オーパスが相手してた奴らはどうなったんだい。」


「あっ。」


 言われてから要約、自分が放りっぱなしで街まで帰ってきてしまったことに。


 この後、二つの村の男総出で大工ら反逆軍どもの捜索という、初めての共同作業が行われた。


お読み頂きありがとうございました。

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