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2.18章

お待たせしました。2.18章の投稿となります。

今回はカーメイ視点となります。お読みいただければ幸いです。

「俺っちたちも直ぐに行動するっす。」


「わかったよ。」


「ですわ。」


 俺っちの言葉にテッカイさんとクックさんが頷く。

 師匠とオクトさんが飛び出して直ぐに俺っちたちは、村に囚われた巨人族の民間人たちの救出へ向かった。


「森の影に隠れながら行くっす。テッカイさんはなるべく屈んでほしいっす。」


「カーメイさん、巨人族たちが囚われている所に当てはあるのですわ。」


 クックが質問する。


「大丈夫っす。それなら多分、一番大きくて窓が木材で塞がれて、一番見張りが多かったあそこっす。」


 俺っちは既に巨人族たちが囚われているであろう場所に当たりをつけていた。


 窓を塞いでるのは脱出経路と時間帯を知らせないため。

 見張りが多いのは強行突破された時に対処する為であろう。

 人は恐らく纏めてそこにいる筈、村一つ分の人数をバラバラに管理するには寝返った人たちだけでは人手が足りないとも推測できる。


「森と建物に一番近くなったら、最短で人質のいる所に突っ込んで皆んなを逃すっす。」


「幸い見張りの方たちも全員オクトが引きつけてくれてますですわ。」


「ああ、アタイからも馬鹿どもの姿は見えない。どう考えても今が最前だね。」


 作戦が決まり、森の影となり俺っちたちは目的の地点まで疾駆する。


「ここっす。」


 目的の地点まで着くと直ぐに伏せてもう一度人が居ないかを確認する。

 人が居ないことを確認すると、建物の影へと隠れる。


「俺っちが最初に中をのぞいてくるっす。テッカイさん、窓を少しだけ壊して開けて欲しいっす。」


「一人で大丈夫かい?」


「はいっす。不本意っすけど、一番小さくて隠密に行動出来るのは俺っちっす。」


 中にまだ反逆軍の人が残っていても、俺っちの魔法なら、出来れば使いたくは無いが平和的にその場を収めらる。

 間違いなく適材適所でこれが最前である。


「わかった。」


 テッカイさんは窓に打ち付けられた下の部分だけを軽く壊し外すと、丁度俺っちが通れるだけのスペースが出来た。


「じゃあ行ってくるっす。」


「気をつけて下さいですわ。」


 テッカイさんに持ち上げて窓枠に辿り着いた俺っちにクックさんが声をかける。

 俺っちは視線を合わせ頷くと空いた隙間から建物の中に潜り込んで行った。

 中に俺っちが潜り込むとやはり辺りは薄暗かった。

 そして、窓から侵入したこともあり、かなり高い窓なせいで降りるだけでも足が着かずに苦戦する。


「よっ、とっとっとっ。」


 それでも何とか無事に着地して辺りを見回す。

 すると、さっきから見ていたのか巨人族の老人と視線が合う。


「なんじゃ、小人族が入ってきおったわ。」


 やっぱり助けるのやめるっすかね。

 そんな思考に囚われかけるも直ぐに持ち直し、目の前のその人物に質問する。


「巨人族のひとたちはここに捕まってるんすか。」


「ん?ああ、皆ここにおる。じゃが、お前さんは何しに来たんじゃよ。」


「皆んなを助けに来たっす。」


「小人族のお前さんがかい。」


「俺っちは人族っす!」


 いい加減しつこく小人と言われるのが嫌なので、ここはしっかりと訂正しておく。


「俺っちだけじゃ無いっす。外には巨人族のお姉さん。テッカイさんも居るっす。」


「テッカイと言ったか、その子はわしの孫じゃよ。」


 何という奇跡。

 どうやらこの人はテッカイさんのお爺ちゃんらしい。


「今、俺っちの師匠たちが反逆軍の人と戦ってるっす。師匠たちが囮をやってくれている間に俺っちたちと一緒に逃げるっす。」


「いや、辞めとくんじゃ、孫にも伝えてくれ、巨岩(ロック)()無頼漢(ロック)様には勝てんとな。」


「ロック=ロック?それがあの一番大きかった巨人の名前っすか。」


「そうじゃよ、このシダメシ村に連れてこられたわしらは見たんじゃよ、ロック様の本当の姿を。直ぐに皆理解したのじゃよ、アレには誰も勝てないと。」


「今、俺っちの師匠がそいつと戦っているっす。お願いっす、師匠も頑張ってるんす。」


 俺っちたちが話しているとそれに気づいたのか、他の囚われた巨人族の人たちが薄暗い中、姿を見せ始めた。

 そして、別の老人が姿を見せる。


「何を騒いでおるのじゃ。」


「テッカイのお爺さん、この人は誰っすか。」


「この人はこのシダメシ村の村長じゃよ。」


 俺っちがテッカイのお爺さんに質問すると此処の村の村長だと言う。

 ちょうど良いので、助けに来たと言う旨を伝えることにする。


「ここの村長っすか、俺っちはカーメイ、ここにいる囚われた巨人族の人たちを助けに来たっす。」


 俺っちがそういうと、周りに集まっていた巨人族たちがどよめく。

 それを村長は手で制すと、語り始める。


「やめておくのじゃ。お前さんはまだ見つかっとらん見たいじゃから、お前さんだけでも逃げなさい。」


 この村の村長はカーメイに逃げろと告げた。


「それは出来ないっす。今、師匠が頑張って戦ってるんす。弟子として師匠の頑張りを無駄には出来無いっす。」


 師匠やオクトさんが頑張って戦ってる中、俺っちだけが逃げるなんて絶対にありえない。


「その師匠とやらには悪いんじゃが、師匠のことは諦めなさい。わしの村の問題に巻き込んで済まなかったわい。じゃが、小さいお前さんだけなら敵の目を盗んで逃げれるかもしれん。」


 深く頭を下げた後、顔を上げた村長の主張はやはり逃げろの一点張りであった。

 だが、カーメイは気になる発言を聞き逃さなかった。


「村の問題ってどういう意味っすか。」


 確かに村長はわしの村の問題と言った。


「あやつはこの村の出身なんじゃ。」


 村長はポツポツと語り始める。


「あやつは幼い頃から図体がデカかったのじゃ、そして同じくらい性格がデカく、暴力的で自分より弱い者への差別意識を持っとった。暴力を振るえば大人数人がかりでやっと止められるほどの力の持ち主でもあったわい。」


 体が大きいとは言うが、流石に家より大きいのはデカイの一言で済ませられるのだろうか。


「そんな性格じゃから問題ばかり起こす子でもあったのじゃ。村の外の者と関わりを深く持つなという規則を破り、外へ行きたいと駄々をこね、村が代々祀っているほこらも壊すわで大変じゃたんじゃ。」


 村の外と関わるなとは、テッカイさんから聞いていた通り随分閉鎖的な村だった様だ。


「ある日、それを見兼ねた両親が叱ってのう、大人の言う事に従えと言ったのじゃ、じゃがその言葉が原因で両親にも暴力を振るいその両親は夜逃げしてしまったんじゃ。」


 昔からすごく凶暴だった事と両親に捨てられた事、いくら子供といえど自業自得だが、子どもだったからこそ不憫にも少し思ってしまう。


「そして、自分より弱い者の規則つまり、村の規則や現在の人族が指揮をする王政に従って生きるということに、日々苛立ちを持つようになっていったのじゃ。」


 ここまで聞いて、だから反逆軍かと納得する。


「そんななか、あやつは魔法を手に入れおった。『倍化魔法』それがあやつの心の引き金となったのじゃ。」


 他の巨人族よりも遥かにデカい謎はこれで解けた。

 倍化魔法、名前からして体を大きくする為の魔法だろう。それを踏まえて昔から体が大きかったなら、あのサイズもあり得なくは無い。


「あやつは今こそ、弱い奴らの首をすげ替えるべきじゃと皆に説いて回った。じゃが、わしは村を守る義務があった。じゃからあやつを仕方なく村から追い出したのじゃ。」


「けど戻って来たんっすね。」


「そうじゃ、あやつは更なる力をつけて村に戻って来たんじゃ。わしらに復讐するために。」


「反逆軍と一緒にっすね。」


 反逆軍はかなり数いると見えた、恐らく反逆軍の人数に屈してしまったのだろう。


「違うのじゃ、あやつは三人、いや、実際にはたった一人で村人全員の心を折ったのじゃ。」


「ありえないっす。だってたった三人っすよね。村の男の人を全員集めれば勝てないこともないんじゃないかっす。」


 一体何を見れば全員の心が折れるというのだ。


「わしも最初はそう思ったんじゃ、じゃが、あやつはあまりにも強くなり過ぎたのじゃ。あやつの責任はわしにある。済まんかった。じゃからお前さんだけでも逃げておくれ。これ以上この村の名を汚すわけには行かないんじゃ。」


 逃げてくれと懇願していた立場が逆転して、俺っちが逃げてくれと懇願される立場になってしまった。


「じゃあここにいる人たちはどうなるっす。俺っち嫌っす。絶対に助けるっす。」


 恥を忍んであの魔法を使うことを決意する。

 俺っちの魔法は意思の強い人には効かないから、村長のような意思の強い人に効くのか不安になる。

 だけど使い所はここしか無いと分かっている。


「師匠なら勝ってくれるって信じてるっす。」


 俺っちは師匠の為にもと呟き気合を入れる。

 そして、大きく空気を吸って、ふぅと息を吐き体に魔法の光を纏わせる。


「村ちょっ♪メイのお願いっ!皆んなで逃げて欲しいの。ダメかなぁ?」


 両手の人差し指をツンツンしながら聞いてみる。

 あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁっ!

 今すぐ転げ回りたい、なにが村ちょっ♪だっす。

 燃えるような羞恥心が俺っちの心を苛む。


「うんうん、お前さんのお願いならわしなんでも聞いちゃるのじゃ。」


 掛かった。

 精神的犠牲を払ったお陰で、村長は一瞬で魅了魔法の虜となった。

 そして、俺っちはさらに魅了魔法の力を行使し、魔法の能力建物全体へと振り撒く。


「皆んなも良いかな?」


「「「「はーい!」」」」


 建物内の全員の返事が得られた。

 いや、無理矢理得たのだが、魅了下に置かれた彼らに逆らうだけの意思は既に無いだろう。


「じゃあ、ちょっと準備してくるから待っててね。」


 そう言うと窓枠によじ登…れない!

 俺っちには高すぎるっす。


「村ちょっ♪、メイをあの窓まで持ち上げてくれないかなぁ?」


「うん、良いんじゃよ。お爺ちゃんなんでも聞いちゃう。」


 俺っちは村長に窓までもちあげてもらうと、窓から顔を出しクックさんとテッカイさんに報告をする。


「皆んなの了承が得られたっす。直ぐに表の扉を壊して欲しいっす。」


「おうっ、アタイに任せな。」


 そう言うと、テッカイは表へと回って行った。

 それを確認すると俺っちは再び建物内へと戻る。


「ねぇ皆んな!今から扉が開くから扉が空いたら全力で森に向かって走って欲しいのっ♪でね、その後に森に入ったら一番近い人族の街まで逃げてくれないかなぁ?」


「「「「良いよぉ〜!」」」」


 正直どのくらい魅了の効果が持つか不明だが、半日程度は掛かったままでいてくれるだろう。


「じゃあ、扉が開いたら走ってね。一番早かった人にはご褒美あげちゃうかもよ♪」


「「「「おおー!」」」」


「じゃあ行くよ、よーい。」


 ドンッと音がし扉が内側へと吹っ飛ばされると同時に、外へと巨人族の人たちが一斉に駆け出して行った。


「なっ、なんだったんだ一体⁈」


 扉を開けた途端出口へと向かう巨人族の群れに、圧倒されたテッカイさんは壁際に跳びのき目を丸くする。


「企業秘密っす。さぁ、俺っちたちも直ぐに逃げるっす。」


 そう言うと、外へと出る。

 そこで先程まで快晴と言って良いほど晴れていたのに影が差している事に気付き空を見上げる。


「まじっすか…。」


 恐らく村長が言っていた心を折ったものとはこれのことだろうと直感的に理解する。

 そして、見てしまう。


「えっ、嘘っすよね?」


 それに打ち落とされ村に向かって吹き飛んで行く自分の師の姿を。


「師匠ぉぉぉぉぉぉっ!」


「ちょっと待ちなアンタっ!死ぬ気かいっ⁈」


 テッカイが止めるも、もう耳には届かない。

 俺っちは師匠の元へと駆け出していた。


「テッカイさん待ってくださいですわ。」


「けどよ。」


「大丈夫です。カーメイさんの事は2人に任せましょうですわ。私たちは巨人族の皆さんの避難を優先するべきですわ。」


 まるで勝利を疑わないクックの様子に渋々とテッカイはついていくのであった。


「オクト、信じていますですわ。」


 呟く声は巨人族たちの雑踏によって掻き消された。

お読み頂きありがとうございました。

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