2.12章
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2.12章の投稿となります。
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「ちょっと待ってオクト、次は僕のお願いの番だよ。」
すっかり忘れていた俺は、シズト言葉に店を出たところで足を止める。
「シズトの頼みってなんだ?」
シズトなら大概のことを一人で出来るだろう。
俺が出る幕は無いのではないのではないか。
しかし、珍しく頼みごとをされた訳だし、付き合ってやるとするか。
「僕のお願いごとは付近にある巨人族の村の調査と四天王の居場所の発見だよ。」
「四天王だと、もう見つけたのか。」
「四天王ってなんですわ?」
俺たちの会話が気になったのか、クックが横から質問を入れて来る。
「四天王は魔王が抱える幹部みたいなもんっす。俺がクックさんの質問に答えるので、師匠たちは会話を続けてくださいっす。」
カーメイはそう言うとクックを俺たちの会話からフェードアウトさせていった。
因みにカーメイの説明の通り四天王とは、俺たちの最終討伐目的である魔王の幹部と言える部下たちである。
「えっと、そうそう。まだ見つけてはいないんだ。ただ、もしかしたら四天王かもしれない情報があってね。」
途中で割り込まれたので珍しくテンポを崩されたシズトが俺の質問に答える。
「どんな情報なんだ。」
「なんでも、四天王の部下を名乗る巨人族が巨人族達を虐げているみたいなんだ。」
「なんで巨人族が巨人族を苦しませる必要があるのですわ。」
俺も疑問に思っていたことにまたクックが横から質問する。
「そこまでは流石に分からないよ。でも、巨人族の行きつけの店を発見出来て良かったよ。」
「武器屋の親父の店のことか、なんでだ。」
「ここで買い物をした巨人族を尾行するっす。」
日本ではそれをストーカーと言う。
犯罪ギリギリじゃねぇーか。いやアウトか?
結局こちらの会話に混ざって来たカーメイが答える。
「普通にお願いして連れてって貰えば良いのではですわ。」
「素直に聞いてくれるっすかね。他の種族には差別意識が高い人もいるっすから。」
クックの単刀直入作戦に不満があるらしいカーメイ。
「一応僕は交渉するつもりだったんだけどね。困ってるみたいだし、金色冒険者がお助けしましょうかってね。」
成る程、金色冒険者の名前を使うのか。冒険者は国家事業だから信頼度が高いのだ。
「それなら上手くいきそうだな。」
シズトの一番まともな案に俺もクックたちも同意する。
店の前で喋ってる俺たちに不意に影がかかる。
「お、噂をすれば見たいだな。」
ちょうど良く、巨人族の客が店に来客してきたのだ。
巨人族は大体3メートルの身長を持つ種族だ。
その巨体を動かすために体の筋肉がかなり発達している。
今目の前にいるのは巨人族の女性の人みたいだ。
「すいません、巨人族のお姉さん。」
シズトが巨人族の女性に話しかける。
「ん、なんだいちっこいの。」
巨人族から見れば大体の種族はちっちゃいとおもうのだが。
「師匠はちっちゃく無いっすっ!」
カーメイが自分の師匠を馬鹿にされ、吠えるように反論する。
「なんだい小人族までいるのかい。」
「小人族っ⁉︎グハッ‼︎」
そして一撃で撃沈した。
せっかく、さっき立ち直ったばっかりなのに、カーメイ本当に強く生きてくれ。
そんなカーメイに構うことなく、シズトは巨人族の女性に続けて質問する。
「最近、巨人族の村で巨人族を虐げる巨人族が出たって聞いたんだ。だから、僕たち金色冒険者が力になれないかなってね。」
そう言い、自分のプレートを空間収納魔法から取り出して掲げるように見せる。
「それはアタイの村、リクオミ村のじゃなくて、隣の村のシダメシ村だね。隣の村がどうにも被害にあってるらしくてね。助けを出すとアタイの村の村長も言ったんだけど、これは私達の村の責任だ。なんて言って拒否してるって訳なんだ。」
「責任ってどう言うことですわ。」
被害に責任があるというのは一体どんな理由があるのか気になる。
「アタイにも分からないんだが、悪さをしているのは、どうやら元々隣村の住人だったらしくてね。閉鎖的な村でね、分かってるのはそれくらいだね。」
「少しそのことを調査したいので、僕たちをその村付近まで案内して貰えませんか。」
そう言ってにこやかに微笑むイケメン。
「…っ!しょっ、しょうがないね。でも案内するだけだし、それと一旦アタイの村に帰らせてもらうからね。」
「はい、それで十分ですよ。」
サイズ差のせいだろう、こんな重く腹に響くツンデレは初体験だ。
どうやら巨人族にもイケメンは効果抜群であったらしい。
幸先良く、手掛かりを掴むことが出来た。
「じゃあ、少し待ってな、すぐに買い物を終わらせてくるからね。」
そう言い残し親父の店に入って行った。
本当に雑貨屋だったのか。
暫くすると、調理機材や日用品を買い終わらせたのであろう巨人族の女性が、武器屋の親父の店から出て来た。
「それじゃ行こうかね。」
「あ、そう言えば名前をまだ聞いていませんでしたね。僕はシズト。」
「オーパスだ。」
「クックと申しますですわ。」
「カーメイっす。」
「ま、シズトくらいは覚えておいてやらないこともないね、アタイはテッカイって名前だ。」
一度に名乗られても覚えきれないか、多種族ともなれば顔の違いも見分けがつかないのだろう。
「じゃあ、案内をお願いします。テッカイさん。」
「ああ、任せるといいね。」
俺たちはすぐに巨人族の村へと出立したのであった。
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