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2.11章

おまたせしました。

2.11章の投稿となります。

お読みいただければ幸いです。

「だからここは武器屋じゃないと何度言えば分かるんだお前はっ!」


「何の用だ。」と尋ねられたので、武器を買いに来たとカウンターにいた強面ハゲヒゲ親父に伝えたら、もの凄い形相で親父に怒鳴られた。


「じゃあここは何屋なんだっ!」


 俺は一体なんの店に来たというのだ。


「多種族用雑貨屋だっ、この馬鹿たれっ!何度もそう言ってるだろうが⁉︎」


 おかしい、確かに俺の特大アイスピックはこの店で買った物である。


 もともとこの街に俺が来た目的は、借りパクして全く返す気のないクックに痺れを切らしたからである。

「もう返す気ないなら、新しい武器買えば良いんじゃね。」と思いこの店に訪れたのだ。


「すごい大きい包丁ですわね。しかも凄く質が良いですわ。」


 大剣並みの包丁をクックは物欲しそうに眺め呟く。


 辞めなさい、財布の中身を確認するんじゃない。

 だいたい買っても持ち運べないだろ。


「嬢ちゃんそいつは巨人族用だ。」


「そうなのですわ。」


「さっきも言ったがな、ここは色んな種族に商品売ってんだ。しかも製作から販売まで俺が全部やってるんだぜ。」


 武器屋の親父はクックの散財を止める助け舟を出してくれた。

 ナイス親父。

 あと、多分売り子をやってくれるバイトが見つからないのは、顔と売り先が特殊だからだと思う。


「逆にこっちのは普通より少しちっちゃくて可愛いっす。」


「そっちは小人族用だ。ちっちゃい嬢ちゃんでも流石に扱うには小さ過ぎるよ。」


「ちっちゃい…、嬢ちゃん…。」


 強く生きろよカーメイ。


「すごいサイズの鍋もあるね、人が丸々入りそうだ。それに頑丈そうだね。」


「それは鬼人族から巨人族用だな。俺の店はは安くて頑丈が売りだからな。」


 頑丈さなら俺も保証できるくらいには頑丈である。


「っと、そうだった、親父前買った物と同じ物売ってくれ。」


 店の商品の多様さに目を奪われていて、危うく目的を見失うところだった。


「ああ、アレか…、しかしアレも人間用ではないぞ。一体お前は何に…。」


 親父の視線が俺の腰へと向けられる。


「てめぇ、腰につけてるの俺が売ったアイスピックじゃねーか。あーああーあ、折角持ち手にまで拘って作ったってのに、お前にはもう二度と売らんっ。」


 親父がオーバーなリアクションを突然見せたと思ったら販売拒否通告をされた。


「買った物をどう使おうが自由だろうが、俺が使うには持ち手がでかすぎたんだよっ。第一儲どうせかってないんだろ!素直に売りやがれっ!」


「はんっ、いつまでも弱小店だと思うなよっ。小人族の顧客は何故かなかなかつかないんだが、最近、巨人族と鬼人族に竜人族のお得意様が出来たんだ!バーローめっ!」


 鼻を鳴らし誇らしげに自慢してくる親父だが、今までそういった人種にだけ売ってなかったから儲からなかったのではないのか。

 あと、小人族の客が居ないのはやっぱり顔のせいだと思う。


「まあまあ、店主様。私もこのアイスピックには命を助けられましたですわ。店主様は凄く良い商品を作るのですわ。」


「まぁ、俺の店だ当然だろ。」


「ですわ、ですからもう一本買わせて頂きたいのですわ。」


「嬢ちゃんがそこまで言うならまぁ、売ってやらんこともないな。」


「ありがとうございますですわ。」


 クックの発言に気を良くした武器屋の親父は、店の奥に引っ込んで行った。

 しかし、クックが親父を懐柔してくれたおかげでなんとか新しい武器が買えそうだ。


「良くやったクック。」


 クックの冒険者としての成長を少し誇らしく思うぞ。

 貴族のお嬢様からはどんどんとかけ離れていくが、それはそれ。


「はいですわ、ですからオクトは新しいのを使うと良いですわ。私はこの串丸をこれからも愛用させて頂きますですわ。」


 腰の元俺が持ち主の、いや、俺が持ち主のアイスピックの永久借りパク宣言をしてやがった。


  「おい、持って来たぞ。」


 クックに文句を言う前に武器屋の親父が店の奥から戻ってきて、アイスピックを取ってきた。


「ん、これ前と違くないか。」


「ああ、なんでも最近、超大型ドラゴンと他のドラゴンの死体が大量に見つかったらしくてな。中でもそいつは中型ドラゴンの骨を削って作ったもんだ。」


 凄く心当たりがある。


「少し値は張るが、前のよりも軽くて丈夫なものになってる自慢の一品よ。」


 自分で倒したドラゴンなのにそれを買わされると言うなんとも複雑な心境だ。

 しかも高い。


「親父さん、良く手に入ったね。」


 シズトが割って入って来た。


「ああ、貴族様方は超大型に夢中でよ、余ってるうちに俺が少しいただいたってわけよ。いやぁ、俺も超大型ドラゴンを見てみたかったんだが、商売人としては買えるもんが優先だからな。」


 商魂たくましいことで。

 俺はドラゴンの骨で出来たアイスピックを手に持つと前よりもだいぶ軽く、手の甲でコンコンと芯を叩くと、良い響きが返ってきた。


「分かった親父、これ買うよ。」


 幸いさっき貰った報酬がなかなかなものであった為、クック探しの報酬金と合わせれば買えないことはない。


「おう、まいどっ!」


 まぁ、手痛い出費ではあるが金が無いのはいつもの事と割り切る事にする。


「あ、店主様、私も一つ商品を買いたいのですわ。」


「おう、なんだい?」


「これと同じサイズの包丁で良いのはありませんかですわ。」


 そう言って、片手剣サイズの包丁を持ち出す。


「なら、さっき言った中型ドラゴンの牙を研いだ包丁があるが、…まさか嬢ちゃんも武器に使うのかい。」


 やはり、武器として使われるのは抵抗があるのか歯切れが悪い。


「私の魔法は料理魔法ですわ。」


 なぁっ⁉︎コイツ。

 さっさと売ってもらうために自分の魔法の名前を使いやがった。


「そうかい、そうかい、俺は作った商品を自分の子供のように思ってるからな、目的通りに使用されるなら俺も商品も本望だ。」


 そう言い、怖い顔に笑顔を貼り付けて再び店の奥へと消えていった。


「オクト、どうしましょうですわ。少し心が痛いですわ。」


「知らん。」


 素直に言ってお願いすれば良いものを、意外と物分かりが良い親父だしな。

 クックの完全な自業自得である。


 そして、カーメイは未だに復活出来ずにいる。


「ちっちゃい…嬢ちゃん…小人。」


 流石に小人とまでは言ってなかったぞ。

お読み頂きありがとうございました。

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