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2.10章

お待たせしました。

2.10章の投稿をさせて頂きました。

「師匠ほどじゃないっすけど、オクトさんも凄く強いっす。」


 興奮気味に目を輝かせ俺を純粋な目で見てくるカーメイ。


「オクトのあんな戦い方初めて見ましたですわ。」


 普段の魔物などは触手だけで片付けていることもあり、あんな風に触手で跳ねるように移動しながら戦う姿をクックに見せるのは初めてだ。


「うんうん、オクトの強さがだいぶわかったよ。これなら任せられそうだよ。はい、これロープね。僕は中の方見てくるから。」


 ロープを手渡したシズトは、不穏なセリフを残しつつ、光魔法で洞窟内を照らすと洞窟内へと消えていった。


 投げ飛ばされた文句を言う間も無かったな。

 しかし、光魔法も使えるなんて本当になんでもありだな。


「はぁ、まぁ後処理もやらなきゃだな。」


 俺は最後の仕上げとして、盗賊達を次々とロープで縛って行く。

 盗賊達は未だに吊るされて気絶している盗賊リーダーを見せられているせいか反抗心はゼロだ。


 盗賊を縛り終えた頃にシズトは何人かの女性を連れて洞窟から出てきた。

 予想はしていたが、やはり捕まった者が居たようだ。


 捕まった者の中には犬獣人と思われる人種の人もいた。

 人族に恨みがあるとかでは無く、どうやら見境なしに街道を行く者達を襲っていたようだ。


 すっかり怯えた様子の彼女達だったが、洞窟の外の様子を見て互いに抱き合い泣き始めた。


「シズト、それで捕らえられていた人達は全員か?」


「うん、生きてる人はこの人達だけだったよ。他は僕が空間収納魔法で預かってるよ。」


「そうか。」


 他とはつまりそういう事だろう。


「その人達の容体は大丈夫か。」


「一通り回復魔法をかけておいたからもう大丈夫だよ。」


 サラッと更に他のチートを見せるシズトに俺は構う気になれなかった。


 盗賊団を退治したと言うのに俺の気分は晴れない。

 遣る瀬無い気持ちに歯噛みしてしまう。


「さて、帰ろうか。冒険者組合に依頼達成の報告に行かないと。この人達も早く街に帰りたいだろうしね。」


 重い空気に俺とクック、カーメイが黙っていると、シズトはやるべきことをやるために歩き出す。


 そして被害者と盗賊達を連れたまま、一夜明け、夕食などを振る舞いながらも足を進め、ようやく町の入り口が見えてきた。

 俺は顔を隠す為、既にフードを被っている。


 街の入り口を過ぎ、冒険者組合に着くと、シズトが俺たちを代表して依頼達成の報告をしてくれた。

 盗賊達はリーダーを含める幹部格の者達は死罪、ほかの盗賊は奴隷へと堕とされるようだ。


「冒険者様、私達を救っていただきありがとうございました。救っていただくだけでなく、食事までも用意していただけるなんて、本当にどう感謝したら良いか…。」


 手続きを済ませ冒険者組合から報酬を受け取ると、助け出した女性の1人が代表としてお礼を言って、自分たちに差し出せるものが無いかと探し始めた。


「「いらない」よ。」


 俺とシズトの声が重なる。

 目を合わせると自己中の塊であるシズトが、珍しく俺に続きをどうぞと譲ってきた。


 いや、続きなど考えていないのだが。

 振られたからには何か話さなければ。


「アンタらを救えたのは偶然だし、ついでだ。だから感謝なんて要らない。」


 自分が何を言いたいのかうまくまとまらず、言葉にするのがやたら難しい。

 ただ彼女達からお礼をもらうのだけは何か間違っている気がしてならない。


 モヤモヤした気持ちに整理がつかず、俺はフードの中に手を突っ込み頭を掻く。


「ですが、「それでもっ、…アンタらが何かしたいなら世界平和でも願っていてくれ。」」


 まだ、何か言おうとしていた女性の言葉を遮り、俺は背を向ける。


「おい先に行くぞ、この街に俺は用があって来たんだ」


 逃げるように俺はクック達に言いうと、一足先に冒険者組合から出る。

 シズトもそれに習い、俺の後を続く。


 その後にカーメイと続き、最後にそれを追いかけるようにクックは一言二言彼女達と言葉を交わすと、軽く女性達にお辞儀をしてすぐに俺の後に追いついた。


「あの女の人達は冒険者組合が責任を持って、全員家族の元に返すって言ってたよ。今後のあてのない人には仕事も紹介するってさ。」


「本当に良かったっす。俺っちあの人達のこと心配でしたっすから。」


「そうだな、良かった…。」


 俺に彼女達がこの後どうなるのかを教えてくれるシズトとそれを心配していたカーメイ。


「オクトがあの人達の傷の分まで悔やむ必要はありませんですわ。オクトは十分やれることをやりましたですわ。」


 突然、クックが突拍子もなくそんな事を言ってきた。


「別にそんなこと思ってない。」


「思っていますですわ。」


 いつになく噛みついてくるクックに皆んなが黙っている。


「だから…。」


 俺もつい意地になって言葉を返そうとするも、クックがそれを遮り諭すように喋り出した。


「オクト、貴方は充分やりましたですわ。どうか、救えなかった命を悔やむより、救われた命を喜んで下さいですわ。」


「…善処する。」


 クックの話の聞かなさと頑固さは本当に面倒くさい。

 だけど今は、その頑固さに少しだけ救われた気がする。


「本当に素直じゃありませんですわ。」


 そう呟くとクックはクスクスと笑った。


「ほら、早く行くぞっ。」


 顔を少し赤くした俺は、顔を覗かれないようにと歩調を速める。


「あっ、そうそう、オクトの用事が済んだら僕の用事に付き合ってくれない。」


「ああ、分かった分かった。」


 シズトのお願いに軽く返事を返すと俺は目的の場所。


 俺の特大アイスピックを買った武器屋へと向かうのであった。


お読み頂きありがとうございました。

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