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2.8章

お待たせしました。

2.6章の投稿となります。

お読みいただければ幸いです。

「オクト、貴方はふざけているんですの、真剣にやって下さいですわ、ぷふぅー。」


「包丁構えたクックにだけは言われたく無いんだが、こんの借りパクポンコツ痴女。」


 昨日の襲撃後俺たちは現在、意思の固かった盗賊がゲロった場所に向かって目下行軍中である。


 そして俺は例の嗅覚強化の触手をピコっと顕現させ、カーメイが体を張って得た情報を確実なものにするため、犬獣人の匂いを辿っているところだ。


 辿ってはいるものの時々、弱い魔物と遭遇するだけでまだ、獣人らしきものと出会う気配はないままに進んでいる。


「オクトさん、流石にそれは庇いきれないっすプフフ。」


 カーメイお前もか。


 そんなにおかしいのだろうか、この世界で鏡は高級品のため、魔法を使った自分の姿など見たことがないのでどれくらいおかしいのか分からない。


「先に行っておくが、俺は真面目にやっているだけだからな。それを笑うのは人としてどうかと思うぞ。」


「どの口が言うんっすか⁉︎」


 おっと、何かがカーメイの気に触れたようだ。


「まぁ、オクトのやる事だからね。そのセンスは君だけのものだよ。クフフ。」


「よし、お前ら全員俺のこと馬鹿にしてんのは分かった、一列に並べ全員に触手ビンタお見舞いしてやるっ。」


「誰だ!そこに居るのはっ!」


 茂みの奥から盗賊であろう者の声が聞こえて来た。


「「「オクト…。」さん…。」」


「先にからかってきたのはクックだろっ!だいたい残り2人も笑ってただろっ!」


 これで見つかった責任を押し付けられるのは余りにも理不尽だ。


「そこに居るんだな、大人しくしてろよ不審者どもっ!」


「アンタの耳は節穴かっ!」


 もうヤケクソになって、俺たちの大体の居場所に当たりをつけ、こっちに向かって来る盗賊の一人に怒鳴りつける。


「だいたいアンタが不審者だろ。」


 勢いのままに触手魔法を発動させ、触手を腹にめり込ませ一撃で沈める。


「見回りがいたということはこっちであってるみたいだね。」


「ですわ。」


「っす。」


 おっと新たなカーメイくん検定などお呼びでないのだよ。


「とっとと先に進むぞ。お前らとグダグダやってるとあっという間に時間が無くなる。」


「「「はーい。」ですわ。」っす。」


 3人の声が綺麗にハモり、引率の先生みたいな気分になるが、もう絶対に構わないと決め込んでずんずん先に進んでいく。


 しばらく歩くと洞窟と番をする人物が居る場所が見えた。

 どうやらカーメイの体を張って得た情報は間違ってなかったらしい。


「で、どうするんだシズト。」


 洞窟の番を警戒しながら俺はシズトに小声で聞く。

 洞窟の周りは半径300メートルは何も無く、かなり見渡しのいい状況に整備されている。

 洞窟の上部は完璧な断崖絶壁であり、ロープで降りたとしても、降りているうちに容易に発見されてしまうくらいの距離はある。


「街で僕の実力を見せたでしょ。それなら今度はオクトの番だよ。」


 なるほど、街では金色冒険者を圧倒する姿を見せてもらっている。

 確かにあれだけで十分シズトの強さは分かった。


 最初のシズトで無双するという作戦は狂ってしまったが、シズトはナルシストでも天才ナルシストだ。

 ノープランという事は無いはずだ。


「わかった、で作戦は?」


「それもオクト次第だよ。」


 オーケー、つまりノープランと。

 頭を抱える俺。


 シズトは恐らくポンコツ二人のお守りでもやって待っているつもりだ。


「はぁ…、じゃあ、あの作戦で行くか。」


 ため息を吐いて少し考えた後、洞窟を見てキングゴブリン戦の事を思い出した。


 一旦、洞窟の番をしている盗賊をこっそり倒したあと、キングゴブリン戦で使った触手の毒を麻痺毒にまで毒性を下げて洞窟の天井から垂らせば簡単に無力化出来るだろう。

 最初の洞窟の見張り番をしている奴の無力化は触手の擬態を使えば難なく出来そうだ。


「あ、罠とかは無しだよ。僕はオクトがどこまで戦えるか知りたいだけだからね。」


 楽をしようと考えた俺の思考を読んだかのように、シズトに先手を打たれた。

 いや、シズトの事だから読んでいたのかもしれない。


「俺は盗賊達のアジトに向かって特攻して死ねということか。」


「違うよ、盗賊達に特攻して勝って来てねって事だよ。」


 いや、わかってるのだが出来れば避けたかったから敢えて言ってみたんだ。


「もう、早く行ってくださいですわ。オクトなら簡単でしょうですわ。」


 超大型ドラゴンの時のことを思い出しているのか、クックの期待が凄い。


 そう期待されてるのだ、決して中々進まない状況に痺れを切らしただけということは無いはずだ。

 視線をこっちに合わせず爪を弄っているのは信頼の証だ。


「オクトさんの力を俺っちも早く見てみたいっす。」


 そして、純粋な目が痛い。

 シズトのせいで勇者に好感を持っているようで…いや待て、なぜ全裸勇者なんぞに好感が持てるのだ。


「もう焦れったいなっ!」


 いつのまにか上半身が裸のシズトが俺の襟首をガシッと掴む。


「はっ?」


「じゃ、投げるよ。」


「ちょちょちょちょっと待てって。」


「大丈夫、オクトならやれるって信じてるよ。」


 何その信頼⁉︎

 その信頼を得るためにこれから戦うのではなかったのか?


「いやいや、待て待て待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 俺はシズトに投げられ綺麗な放物線を描き盗賊達のアジトへと山なりに飛んで行った。


 マイペースにも程があるだろう。

 昨日の友は今日の敵らしい。

お読み頂きありがとうございました。

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