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2.5章

2.5章の投稿をさせて頂きました。

お読みいただければ幸いです。

「は?冒険者が1人も居ない?」


 俺たちは今冒険者組合に来て依頼を探そうとしている。


 シズトの提案だったのだが、勇者として今のお互いの実力を知るためにも一緒に依頼を受けないかと誘われて、買い物の資金が欲しかった俺は快く賛同したのだ。


 シズトが居れば討伐系の依頼なんてあっという間だろう。

 そしてシズトを思い切り利用するつもりで冒険者組合に来てみれば、冒険者と思わしき人が誰も居なかったのだ。


 俺はそれを疑問に感じ、受付嬢にどうしたのかと聞いてみたのだが、冒険者組合には今、冒険者は1人も居ないと言われたのだ。


「ええ、なんでも化け物が出たとか、割りに合わないだとか、勝てる相手じゃないとか、死んでもごめんだとか言いながら、この街に滞在していた冒険者達は依頼を全てキャンセルして出ていってしまって、今この冒険者組合には誰もいないのです。」


 おっと、心当たりがあるぞ。

 フードを深く被り直し俺は視線を絶対に合わせない。

 緊急事態だというのに流石受付嬢、取り乱した様子が見受けられない。

 受付嬢は視線を合わせない俺を気にすることなく、淡々と言葉を続けていく。


「私達職員も詳しく事情を聞こうとしたのですが、もう俺たちは関わり合いたくないの一点張りで、仕方なく街に職員を派遣したのですが、金色冒険者であるダマーさんが気を失って倒れているのが見つかっただけで、何も調査は進んでいないのです。」


 どうやら、この町の冒険者は、全員がさっきの勇者騒動に参加していたようだ。


「貴方達は何かご存知ですか。」


「「「「いや、何にも」っす」ですわ。」」


 4人の声が重なる。


「そうですか、何か情報が入ったらご連絡お願いします。金色冒険者が叶わない相手となると最悪の場合、冒険者組合から白金色の冒険者を派遣しなければならなくなりますので。」


 絶対に喋れなくなってしまった。

 墓場までこの事実は持っていくと誓おう。


「ところで今日はどういったご用件でしょうか。」


 話がようやく終わり本題に入ることが出来た。


「今日は依頼を探しに来ていたんだ。難しくて困ってるやつないかな。」


「私の冒険者登録もお願いしますですわ。」


 シズトが気負いなく答え、「忘れないでくださいですわ。」とクックが受付嬢に詰め寄る。


「はぁ、かしこまりました。赤髪の貴女はとなりの受付に人を呼びますので、そちらで登録をお願いいたします。えっと、失礼ですが金髪の貴方のプレートの色を確認させて頂けますか。」


「はいですわ。」


 クックは受付嬢の指示通りに隣のカウンターへと移って行った。


「じゃあ、僕もはい。これだよ。」


 シズトは慣れた手つきで空間収納魔法を開き金色のプレートを見せる。


「し、失礼致しました。まさか、金色の冒険者がこの街に2人も居るなんて、お名前を伺ってもよろしいですか。」


 金色のプレートを目にした受付嬢の顔が青くなり、即座に今までの対応を詫びてきた。

 だが、そんな受付嬢さんの態度を気にすることなく、シズトは笑顔のまま答えた。


「気にしなくて良いよ、僕はシズトだよ。」


 普通に本名を答えるシズトに思わず目を剥く。

 声を上げそうになったが寸前のところでなんとか堪えることができた。


「シズト様ですか、……ん?シズトですか。少々お時間を下さい。」


 机を立つと依頼書などが貼り付けてある掲示板に向かい歩いていく。

 不味いと思い、俺はフード気持ち深く被る。


「あの、貴方はこの手配書にある勇者シズトですか。」


 受付嬢が依頼書を掲示板から剥がし持って来て質問する。

 受付嬢もまさかなと思っているが、風貌の欄に金髪、高身長と書かれて似顔絵まであるのだ。

 万事休すか。


「もう失礼しちゃうな。受付嬢さん、ちゃんとよく僕の顔見て。」


 そう言い、受付嬢の顔に手を伸ばし、指で顎をクイッとあげ視線を強引に合わせさせる。

 それはまるでドラマのワンシーンの様に様になっていた。


 もしかして、魔法か何かで認識を書き換えるとか見たいなことがシズトには出来るのかもしれない。

 俺はシズトの可能性に賭けることにする。


「僕の方がそんな下手な似顔絵よりかっこいいでしょ。」


 馬鹿だコイツ。

 さて、諦めて逃げるか。

 俺はこの後の展開を先読みし踵を返す。


「は、はいそうですね。こんなカッコいい貴方があの悪名高い勇者一味なはずないですよね。」


 コイツ無敵か⁈

 目の前で起こった現象に理解が及ばず二度見してしまう。

 あ、イケメンがいる。いや、そうじゃない。


 まさか、いつもこうやって誤魔化してきたのか。

 受付嬢の目の中にハートが浮かんでいる様にも見える。


「じゃあ、依頼どんなのがあるか教えてもらえるかな。」


 シズトに質問された受付嬢さんは疑いの目を向けることなく質問に答え始めた。


「はい、今ある難易度の高い依頼は、国から出ている勇者の捕縛、ですがこの依頼は、白金冒険者である赤猫さんも狙っている依頼でおすすめが出来ません。」


 すでに白金冒険者に狙われていたのか、思わぬ形で情報が手に入った。

 夜道には気をつけよう。


「それ以下の難度になりますと貴族様方の被害届が沢山届いている、怪盗を名乗る一味の捜索と捕縛、街の町長から出ている街道に現れる盗賊団の殲滅となります。」


「じゃあ、盗賊団の依頼を受けるよ。」


 まぁ、妥当なところだろう。

 怪盗の方は捜索からだから、街道に現れると情報のある盗賊団の方が比較的早く済ませられそうだ。


「かしこまりました。少々お待ち下さい。…受理しました。貴方達冒険者の健闘を祈ります。」


 受付嬢がそう言い、俺たちの受付が終わった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「貴方は冒険者の登録をしに来たのですよね。」


「はい、そうですわ。」


「ではこちらの紙にお名前の記入をお願いします。」


 私は冒険者になるために冒険者組合に訪れ、冒険者登録の真っ最中だ。


「名前を書く欄は…、ありましたここですわ。えっと、クック…。」


 家名を書こうとしてペンを持つ手が止まる。

 違う気がするのだ。

 言葉に言い表せないが、何かが違うと私の中の何かが訴えかけている気がする。


 だから私は『クック』とだけ記入した。


「はい、クックさんですね。冒険者登録には銀貨一枚が必要となっております、後払いが出来ますがどう致しますか。」


「今払いますですわ。」


「かしこまりました。それで冒険者プレート作成までに少しお時間を頂くことになります。その間、冒険者というものについての説明などはいかがでしょうか。」


 冒険者の人たちとはコロッセオ家でも関わりがあったが何となくでしか知らなかったのだ。

 ここでしっかりと聞いた方が良いだろうと思い聞くことにした。


「お願いしますですわ。」


「はい、冒険者様方にお伝えしていることは大まかに2つあります。ではまず、冒険者のプレートの色の説明からさせてもらいますね。」


 一旦そう区切ると言葉を続け始めた。


「冒険者のプレートの色は銅から始まり、銀、金、白金と上がっていきます。白金に上がるとそこが上限となるので白金冒険者といっても強さは金以上ですがバラバラなんです。」


 白金以上が上限となるのは知っていた。


「業績によってのみ、色の昇格があります。ですが冒険者組合を通さない依頼であれば、たとえ、超大型ドラゴンを倒したとしても昇格は無いのでお気をつけ下さい。」


 ぎくり。


「はっ、はいですわ。」


 見に覚えがある話であまりに確信を突かれたので少し焦ってしまった。

 しかし、私の様子に気づくことなく冒険者組合職員の人は続ける。


「次に、罰則についてですが、これについてはとても厳しい処分がくだされます。冒険者組合は初代勇者様が立ち上げた国家事業なので、犯罪行為などに加担したりすれば直ぐにでも冒険者としての資格は失うので覚悟をしておいて下さい。」


 これは有名な話だ。

 泥棒の一つで金色冒険者が冒険者資格を失ったという話も聞くくらい冒険者組合は厳しく取り締まっている。


「あと、もう一つ、冒険者プレートの色を偽ることを冒険者組合では禁じています。色は信頼の証ともなる重要な身分証明書ともなるのでそれを偽るとかなり厳しい罰則があるのでお気をつけ下さい。」


「わかりましたですわ。」


「以上が冒険者組合からお伝えすべき2点です。丁度、プレートが出来上がったようなのでお渡ししますね。」


 そう言って冒険者組合職員から銅色のプレートが渡された。

 表面には冒険者組合の照明の刻印、裏面にはクックと刻印されていた。


「これで冒険者登録手続きは終了しました。良き冒険を。」


「ありがとうございましたですわ。」


 思わず顔がにやけてしまう。

 これで晴れて私は冒険者となったのだ。


 どうやら向こうの話も終わったみたいなので私は合流することにした。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「オクトっ!今日から私も冒険者ですわっ!」


 クックの方の冒険者登録が済んだのか、嬉しそうにクックは銅色のプレートを俺に見せつけてくる。


「はいはい、おめでとさんおめでとさん。」


「良かったねクックちゃん。」


「クックさん、おめでとうっす。」


 素直に言うのが恥ずかしく、ついつい投げやりに答えてしまう俺とは対照的に、素直に喜んであげる2人。


「もうオクトも2人みたいに素直に喜んで下さいですわ。」


「さぁ、さっさと準備しにいくぞ。」


 ちゃんと喜んでもオクトらしくないとからかわれるだけなので、俺はフードを更に深く被り、誤魔化すように出発を急かす。


「そう言えば私達はどんな依頼を受けるのですわ。」


 一緒に受付をしていなかったクックが依頼の内容に質問してくると、シズトがなんでもないように答える。


「普通の盗賊退治だよ。」


「えっ…?」


「…あ。」


 絶望したように絶句するクックとそれを思い出し声をあげる俺。


 料理魔法しか使えないクックの足手まといが確定した瞬間であった。


お読み頂きありがとうございました。


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