2.2章
お待たせしました2.2章の投稿となります。
「なんで、なんでこうなるのですわ〜!」
「そりゃ顔出して冒険してれば狙ってくるのも当然だよなぁシズトっ!」
「待てや勇者ぁぁぁ!」
現在、俺たちは100人近い冒険者集団から逃亡中で街中を駆け回っている。
冒険者達は逃げている間にどんどんと数を増やし、未だに増え続けていると思われる。
「いや〜、もう狙ってくる人とかいないと思ってたんだけどね〜。」
当の本人は呑気な者である。
「俺っちの師匠がお前らなんかに捕まるわけないだろバーカ、バーカ。」
シズトの肩に担がれたカーメイは冒険者達にビビり、震える声で必死に強がり敵を煽る。
お前とクックが足手まといでまともに戦えないというのに本物バカはお前だと言ってやりたい。
「んだとゴラァ!」「クソガキが舐めた口きいてんじゃねーかっ!」「待てやゴラァっ!」「逃げてんじゃねぇぞ!」「勇者らしく戦えや!」「シズトォあん時の借りを返しに来たぞぉ!」「ぶっ殺してやるぞゴラァっ!」「そうだ、ぶっ殺せ!」
「殺せ!」「殺せ!」「ぶっ殺せ!」「「「ヒャッハー!」」」
一体どこの世紀末だろう。
というか、手配書には生きて捕らえろって書いてあったと思うんだ。
後ろからは、もう明らかに冒険者と呼ぶにはキツイ集団が迫っている。
「俺はてっきり幻影魔法かなんかで姿を誤魔化しているものだと思ってたんだがな。シズト。」
飲食店で食事中に突然後ろから複数の武装した冒険者集団に、「よう」と普通に声をかけられたのだ。
声をかけてきた奴らの表情は明らかに普通では無かったが、そこは置いておく。
「まさか、僕の美しさは幻影魔法でも誤魔化せないよ。」
あまりに白昼堂々と歩き回る者だから、何かしらの対策をしていると思っていた俺が馬鹿でだった。
このナルシストの思考は全く理解できない。
「シズトさんは、なんでこんなに冒険者の皆様から恨みを買っているのですわ。勇者だと顔が分かっていても、この雰囲気は異常ですわっ。」
頭を抱える俺の横を並走していたクックが、冒険者達のあまりの形相を不思議に思いシズトに質問する。
「んー、分からないかな、冒険者組合で突っかかってきた人たちは全員ぶっ飛ばしたからなぁ。僕を捕まえようとする人は残ってないと思うんだけどね。」
「それが原因ですわっ!」
ここまで執着して追ってくる理由が分かった。
シズトに復讐しにきたのだ。
なんとも涙ぐましい冒険者精神だろか。
「シズト、俺たち実はもう街をでる予定だったんだ。アイツらによろしくな。」
ならば俺が一緒に追われる筋合いは無い。
そう言いうと、シズトから離れようとする。
「君が勇者だって後ろの友達に教えちゃおっかな。」
「あーまだ街に用事あったからもう少し友達と遊んでいくわ。」
コイツぅ、同じ勇者の仲間だというのに俺の立場を人質に取りやがって。
キングゴブリンのことをシズトになすりつけていたということはすでに忘却の彼方だ。
「師匠まずいっす、このまま逃げる一方じゃ、騒ぎが大きくなる一方っす。」
さっきまで冒険者にビビっていたカーメイは、状況が好転しないことに焦りを感じ進言する。
確かに騒ぎが大きくなればここに勇者がいると王都に報告が行くだろう。
そうなれば、居場所がバレてこの街での活動が難しくなってしまう。
「ですが、街の外に出てしまえば、魔法で蜂の巣ですわ。」
世紀末集団のくせに良識はあるのか、街中で魔法を放ってくる気配は全くない。
さっきも店内では武器を抜こうとしなかったから、民間人を巻き込むつもりはあちらにも無いと見える。
「おい、誰か回り込め!そこのお前らはあっちに行って道を塞いでこい。ついでに民間人を遠ざけとけ。」
「わかった。」「俺もそっちについて行く。」「ここは任せたぞ。」「俺が民間人の誘導をしておこう。」「あたしも手伝うわ。」
さっきまで烏合の衆だった冒険者が急にやっと冒険者らしく連携を取り始めた。
どうやらリーダーとなる存在が現れてしまったようだ。
「ん、あの人は。」
「シズト、心当たりがあるのか。」
「うん、確か、一番最初に突っかかってきた冒険者で金色のなんとかってごにょごにょ言ってたかな。喋りながら斬りかかってきたから最後まではちゃんと聞けなかったんだよね。」
「金色冒険者ですのですわっ!」
「師匠、あの金色の大剣をもつ冒険者聞いたことあるっす。確か、後一歩で白金と言われる。ダマーって冒険者っす。」
「白金に近い冒険者ですの、終わった…ですわ。」
ダマーが相当の手練れだとすると、それを含めてクックとカーメイの2人を、100人を超える冒険者から守りながら戦うのはかなり厳しいだろう。
「おら、こっちは通行止めだゴラァ!」
なんともガラの悪い誘導員さんだ。
仕方がないので、ガラの悪い誘導員さんのいない方向に何度も曲がりながら進んで行くといつのまにか大きい広場へと誘導されて、冒険者達に完全に囲まれていた。
俺たちを追ってきていた冒険者が最後の逃げ道を塞ぎ完全に袋小路となる。
「ちょっと顔見知りみたいだから、メイを頼むね。」
「師匠、いい加減メイって略すのやめて欲しいっす。」
シズトは担いでいた抗議するカーメイを下ろし、俺に預けると前に進み出た。
「よぉ〜、久しぶりだな、勇者シズトぉぉぉ!」
ドスの効いた声を響かせながら、顔に引っ掻き傷を持つ大剣使いが歩み出てきた。
「うん、久しぶりだね、えっと誰だっけ。」
「金色冒険者で白金に足をかけている、この黄金のダマー様を忘れただとぉ〜、ふざけやがって。てめぇはここで終わりだ、シズトぉぉぉ。」
どうやらダマーと名乗る彼は本物の実力者らしい。
完全業績主義の冒険者組合は勝手に別の色を名乗ることを禁じている。
金色を名乗れるのはそれだけの業績を持っているということだ。
「僕に何の用かなダマー。」
「とぼけやがって、俺様は手配書通りお前を痛めつけに来たんだよぉ!」
それは違う。
「大人しく俺様に痛めつけられてから捕まれやぁっ!」
あ、流石にちゃんとわかっていらっしゃった。
同じ勇者である俺も痛めつけてOKみたいに言われてたら思うと内心ヒヤヒヤする。
「それじゃあ、捕まるわけにはいかないね。」
「コイツは俺が殺る、テメェら!手ぇ出すんじゃねぇぞぉぉぉ!」
最強金色冒険者と勇者シズトが今対峙する。
お読みいただきありがとうございました。




