1.19章 幕間
この話は主人公の知られざる一幕として投稿させて頂きました。
お読みいただければ幸いです。
「まさか人間どもがこれほどの力を備えていたとは、ダークネス様と四天王どもにこの情報を伝えねば。」
空中を漂い浮かぶそれは超大型ドラゴンが2人の人間に倒されるのを見ていた。
このドラゴンは勇者を倒すために洗脳を自ら施して、我が主人ダークネス様が預けてくださったのだ。
ダークネス様は魔を統べるものであり、ダークネス様が勇者の召喚の儀を察知し、偵察の任を私に与えてくださった。
本来の私の作戦であれば人間の村を一つでも潰し、勇者をおびき出す作戦であった。
単独で私はその標的となる村を探すため、人間領へとやってきたのだが、その途中ドラゴンの縄張りで暴れまわる2人の人間を見つけたのだ。
その人間のうち1人は気色の悪い魔法を使いあっさりと中型のドラゴンを倒してみせたのだ。
これに俺は丁度いい試運転となると考え、超大型ドラゴンを呼び放ったのだ。
しかし、その超大型ドラゴンがたった2人の人間に倒されてしまったのである。
これは予想外の由々しき事態である。
「くそっ、忌々しき人間どもめ。」
計画が予定通りに進まないという事態と、予想を遥かに上回る人間が存在するということが私はとても気に食わなかった。
一カ月前に放ったキングゴブリンもいつのまにか何者かに倒されていた。
付近の村で情報を嗅ぎまわったがそれも勇者が倒したという噂が出回っている。
本当につくづく計画が上手くいかない。
「しかし、勇者以外にも強い存在がいるという情報を得ることが出来た。」
事前に知ることが出来ればそれに対策を立てられないこともない。
この人間を知ることが僥倖と言えよう。
ふと、もう一度、超大型ドラゴンを倒した者の姿を目に収めると、不意にズキンッと脳に鋭い痛みが走った気がした。
「づっ。」
その痛みに思わず蹲りたくなるが、少しすると勘違いだったかの様に痛みが霧散する。
そうだ、私はこんな事をしている場合ではない。
「我が主人ダークネス様の野望のために私は呼ばれたのだ。計画の支障となる存在はただちに報告せねばならない。全てはダークネス様のために。」
そう呟くと、漂うそれは魔族領がある西へと姿を消していった。
お読み頂きありがとうございました。
次回は1章の最終章までの投稿となります。




