1.19章
お待たせしました。
1.19章投稿させて頂きました。
お読みいただければ幸いです。
「「頂きます。」」
平和に始まる食事に安堵を覚える。
あのあと、ブロック並みの肉を洗い終えた彼女はすぐに戻ってきて調理を開始した。
ちなみに火の準備は口内探検隊になる前に済ませてあった。
並んでるのは薄くスライスされたドラゴンの舌とちょっと厚めに切られた舌の2パターンと、鍋がわりに沸騰させたやかんに鉄板という並びで、どの食い方から始めるか迷うバリエーションだ。
俺はまず生で頂くことにした。
口に放り込むと、薄いながらも弾力を持ち、凄く美味い。
次にしゃぶしゃぶのようにフォークで肉を突き刺し、沸騰するやかんに突っ込み湯通しをして、熱がしっかり通ったあと口に放り込む。熱で脆くなった肉が破れていく完食が気持ちよく舌が癒される気分になる。
最後に王道、鉄板で焼いた重圧な肉にかぶりつく。
肉汁が口いっぱいに広がり、咀嚼して飲み込むたびに活力が湧いてくるような気がする。
「はぁ、幸せ。」
「ですわ。」
また、ですわだけで会話を済ませる彼女だがこれは流石に肯定しているのだとわかる。
だがこれを理解できたところで、クックさん検定三級レベルだ。
クックさん検定の道のりは厳しいのだ。
馬鹿なことを考えつつも夕食は進み、夜闇は暗さを増していく。
超大型ドラゴンの死体を背にキャンプをする俺たちの夕食は終わり。
焚き火を囲いながら、これからのことをポツポツと語り始める。
「私は一度、コロッセオの街に、私の家に戻りますですわ。」
「ああ。」
旅の目的を終えたのだ。彼女も貴族であり、いつまでも旅をするというわけにはいかない。
「貴方とはそこでお別れですわ。」
「ああ、清々するよ。ただ、美味い飯を食えなくなるのは少し残念だ。」
強がってはみるものの少し寂しく、本音が混じった言葉が漏れる。
「その様子ですと、貴方はまだ冒険を続けるのですわね。」
「勿論だ。帰るあてもないことだしな。」
「なら……、いえなんでもありませんわ。」
勝気ですぐに口に出る彼女にしては珍しく言い淀む。
言わんとしたことはなんとなく察しは着く。しかし、俺はそれを追求したりはしない。
「そうか、悪いが先に休ませてもらうぞ。」
死闘を繰り広げて体はすでに疲労困憊状態で、先ほどある程度回復した魔力も随時足の修復に使っているため、俺は魔力を回復するためにも体を休めたかった。
死闘を繰り広げたのは彼女も同じだが、万全なコンディションにすぐに整えたい俺は悪いと思いつつも先に休むと申し出る。
「構いませんですわ。ゆっくり休んでくださいですわ。」
初めて俺を労う言葉を言った彼女に視線を向けると、彼女はこちらに今までで見たことない優しい顔を浮かべていた。
「なんだその顔、らしくないぞ。」
「はぁ?せっかく人が優しくしてさしあげた言うのに全く貴方ときたら、もう台無しですわ。」
直ぐに怒り出す彼女。
「ぷっはははははははははっ。」
いつもの態度に戻った彼女に、怒っているというのに不思議と安心感を覚え、失礼だと思いつつも堪えきれず、笑いが溢れる。
「もう怒っているのに貴方はなにを笑っているのですわっ!……くっ…ぷっあはははっ。」
彼女も吹き出し不思議と笑い出し、目端に涙を浮かべそれを拭っている。
「いや、悪い悪い、こっちの方がアンタらしいと思ったんだ。」
「そうですわね。」
「じゃあ、おやすみ。」
「はい、おやすみなさいですわ。」
そいういうと俺は疲れから押し寄せる微睡みに体を預けていくのであった。
お読み頂きありがとうございました。