4.24章
お待たせしました。
4.24章、投稿させて頂きました。
お読みいただければ幸いです。
「よぉ、タコの坊主待ってたぞ。お前さんが最後だ。」
「げっ。」
クックにビンタされたあの後、素直に夕食を食べた俺は早々に眠りについて、朝食を注文しに下の階へ降りてきたのだが、ヒガさんに捕まってしまった。
いや、捕まったのは俺だけじゃない、シズトとバクさんも捕まっていたらしい。
「ゴホッゴホッ、いやぁ、ちょっと風引いちゃったかなぁ〜、俺は部屋に戻って休ませてもらいまーす。」
不穏な気配を感じ取った俺は速攻で踵を返し、仮病を使って部屋に戻ろうとする。
「此処まで来たら一連托生だろう?」
「うぉっ⁉︎」
だが、態々空間跳躍魔法まで使ったバクさんが紐魔法でロープを出現させ、俺をぐるぐる巻きにする。
「まぁ、タコの坊主、こっちに来て座れや。」
「身動きすら出来ないんだがっ⁉︎後、タコはやめて下さいって何度も。」
「あー、良い良い。今はそんなどうでも良いこと聞きたかねぇんだ。」
「俺も出来ればヒガさんの話聞きたくないんですけど。」
「坊主、年配の言葉は聞いとくもんだぜ。」
「年配って程の年じゃないでしょ。」
「オクト、ごねても長くなるだけだから大人しく聞こうよ。」
シズトまでもがヒガさんの肩を持つとは、この場に俺の味方は居ないらしい。
縛られた俺はバクさんに担がれると、無理やり席に座らせられた。
「細けぇことは置いといて、単刀直入に言うが、四天王の情報が手に入った。」
「「「っ!」」」
「一体何処でですか?」
シズトがその話に食いつく。
「あぁ、此処の山に洞窟を見つけてな、其処だけは魔物も雪も寄り付かないもんだから、気になって調べたんだ。」
魔物はおろか、生物でない雪すら寄り付かないとは確かに気になる。
「それで、その中を少し探索したらよ。」
「その中に四天王が?」
俺が質問するが違ったようだ。
「いや、居たのは沢山の弱った精霊と、精霊王の意識体だった。」
「精霊王の意識体?」
再び気になるワードに疑問の声を上げる。
「あぁ、精霊王は何でも普通の精霊と違って体を持つみたいでな。だがな、洞窟の中に精霊王の本体は無かったが、代わりにその精霊王の意識だけが其処にあった。」
何でまたそんな事をしてるんだと思っていたが、直ぐに続きを聞かせてくれる。
「精霊王は四天王に囚われている。だから、意識だけを魔法で飛ばして、精霊たちを守っていたらしい。」
俺でも触手魔法と距離が開けば、途端に魔力の消耗はデカくなるし、扱いも難しくなる。
口にするのは簡単な事だろうが、実際そんな事をやってのけるは相当難しいはずだ。
「そんで、偶然あっちまったオレは精霊王に色々と聞いた訳だ。」
「それが四天王の居場所って訳ですね。」
「その通りだ、金髪の坊主が見た山の向こうの吹雪、その先に四天王の居城がある。」
「ちょっと待ってくれ、まさかその吹雪の中を進んで行く気か?」
ヒガさんとシズト、バクさんは身体強化魔法で寒さを凌げるかもしれないが俺は違う。
吹雪の中を進まされるなんて、死ねと言ってるようなものだ。
「安心しろ坊主。城の周りは吹雪きや雲が無い、台風の目のようになってる。」
「そこに着くまでに死ぬって話だよっ⁉︎」
「大丈夫だ、案がある。」
そう言ったヒガさんは縛られた俺を肩に担ぐと、宿の扉を潜り外に出て、それに続くようにシズトとバクさんも外に出る。
「は?今から行くんですか?」
「大丈夫だ。ちょっと行って直ぐ戻ってくるだけだから。」
「そんな近くのコンビニ行くようなノリで言われてもっ⁉︎」
「じゃあ、金髪の坊主。頼んだ。」
まるで事前に打ち合わせをしていたようにヒガさんが言うと、シズトは服を脱ぎ上半身裸になると、全裸魔法の強化をかけた風魔法で俺たちを宙に浮かせる。
「まさかっ!」
「そのまさかだよ。」
次の瞬間、俺たちは一陣の風になり空へ高く舞い上がる。
「まじかぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉︎」
暴論にも程がある、まさか、台風の上から突っ込めば良いと考えるなんて。
俺たちはそのまま空を覆う雲に大穴を開けると、燦々と輝く太陽の下に飛び出す。
一日ぶりに見る太陽は、こんなにも明るかったのだと自覚させられる。
「おぉ、こりゃ絶景だな。酒が進む。」
ヒガさんは、バクさんの紐魔法による拘束が消え、自由になった俺を手放すと、空間収納魔法から酒瓶を取り出しコルク栓を抜く。
「なんでこんな時に飲んでるんですかっ!」
「ぷはぁっ、こんな時だからこそだ。」
そう言えばそうだったなっ!
その絶景の下で酒瓶に口をつけてラッパ飲みなんてしてるのだから、風情のカケラも無い。
しばらく白い雲海の上を飛び続け、ヒガさんが酒瓶を3本空けた頃にシズトがそれを見つける。
「見えたよ。」
その言葉に前を向くと、ポッカリと雲が口を開けている場所を見つけることが出来る。
そして、その穴の真上について見えたのは『氷の城』。
王都で見たような大きな城が、氷で作られており、辺りは整備された様子が無く、森のど真ん中に不自然に建てられている。
「実に盗みがいがありそうだな。」
開口一番のセリフがそれとは、バクからエースにジョブチェンジしたエースが口を開く。
「それで、こっからどうするんだ?」
「んなの決まってるだろ。」
酒瓶をしまったヒガさんがズイッと前に出る。
「精霊よ、星よりも光り輝け。」
その謎めいた言葉と共に現れるのは、いくつもの光の球体。
それが次第に集まり始め、巨大な光の球体となる。
そして、光の球体が一際輝いたと思ったら、光の熱線が放たれ、美術品のような氷の城にどデカイ風穴を開け、穴の付近からは凄まじい熱量だったのか水蒸気が発生する。
だが、開けた穴から出るの水蒸気だけでは無かった。
そこから何百もの魔物群れが、一斉にこちらに飛んでくる。
「うぉっ、ペンギンが空飛んでやがる。酔って幻覚まで見えちまってるのか?」
「違いますよ、それにしても可愛い。」
「可愛いのは見た目だけだからっ!早く倒せっ!」
「では、ワタシが捕まえよう。」
エースは紐魔法を発動させると、巨大な網を作り魔人鳥の群れを一網打尽にする。
「じゃあお次はこれだっ、酒の泉っ。」
酒瓶を取り出したヒガさんは栓を抜き、酒瓶の口をエースが捕らえた魔人鳥の群れに向けると、消防車のポンプのように酒が噴射される。
「最後は僕だね。無刀抜刀、爆穿っ!」
シズトが手刀を振るうと、その手刀がなぞった部分に爆発が起こり、気化した酒を含めて大爆発し、魔人鳥の群れは跡形も無くなった。
「うっし、進むぞ。」
群れを片付け、ヒガさんの言葉に俺たちは一気に急降下する。
3人のコンビネーションは見事であり、これなら四天王も簡単に倒せてしまえそうだと俺でも思う。
けれども、一つだけ言わせて欲しい。
「なぁ、これ俺必要だったか。」
3人の実力をまじまじと見せつけられると、もう此処に居るのが場違いとしか思えない。
「強い者は多いに越したことは無い。それに言ったであろう、一連托生だと。」
「それ、ただの道連れだよなぁっ⁉︎」
自分がヒガさんに捕まって、早く終わらせたいからって理由で俺まで捕まえやがったな。
何が一連托生だっ。
思いっきり利己目的じゃねぇかっ。
「ほらっ、もう目の前だよ。準備してっ。」
シズトの声に俺は腰から触手を4本顕現させ臨戦態勢を作る。
飛び込んだ場所は謁見の間だったらしい。
氷で作られた窓にシャンデリア、全ての物が氷で作られており、その先の氷の玉座に座るのは氷の王冠を被る巨大な人型の氷の彫像。
その氷の彫像は太々しく肘置きに肘を乗せ、更にその上に顔を寄りかからせ此方を睨む。
「何用だ人間ども。」
美術品だと思っていた巨大な氷の彫像が喋り、その言葉にヒガさんが前に出る。
「おう、お前さんが元精霊王、スピサだな。」
元精霊王だってっ⁉︎聞いてないぞっ⁉︎
大事な事は、もっと先に話しておいて欲しいんだが。
この様子だと、俺が聞いていない事がまだありそうだ。
「その名は捨てた。」
言葉と共に巨大な氷の彫像は立ち上がる。
「我が名は炎熱を支配する者なり。四天王の一角にして、精霊を終わらす最後の精霊なるぞ。」
氷の彫像はマントを靡かせ、それだけで凄まじい冷気が巻き起こる。
「我が名を汚した罪、我が居城を傷つけた罪、我が居城に無断で侵入した罪。万死に値するぞ穢らわし賊共。」
氷の彫像の手に、その体のサイズに合わせた巨大な氷の杖が作りあげられる。
「覚悟は出来ておろうな人間。」
戦いの火蓋すら凍りつきそうな声が、氷の城に反響するのであった。
お読み頂きありがとうございました。
お待ち頂いている皆様には申し訳ないのですが、次からの更新はしばらくの間3日おきとさせて頂きます。
ストックが溜まればまた更新ペースを戻したいとも考えていますので、よろしくお願い致します。