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4.20章

お待たせしました。

4.20章投稿させて頂きました。

お読むいただければ幸いです。

「ウルフリーダーに、ジェネラルゴブリン、それに魔狐の上位種の狐妖(フーヤオ)か?この中だと一番の大物だな。」


 俺は森から現れた3匹の上位種を見ながら呟く。

 そのシルエットには見覚えがあるのだが、やはりどれも寒冷地に対応した白が中心の体色をしている。


 そして、俺を見つけるやいなや白い狐妖は氷魔法を使ったのか、5本に枝分かれする長い尻尾を逆立て、その尻尾を支柱に氷の針が大量に発生し、豪雨のように放たれた。


「随分せっかちだなっ。」


 俺は厚めの触手を地面から生やすと盾代わりに使用し、氷の針を防ぎきった触手は針山のようになって、原型を留められずに霧散した。


「こっからが本番か。」


 戦況はイージーモードからハードモードへって所だな。

 だが、まだ余裕がある。


「なら、余裕がある内に仕掛けるか。」


 狐妖に向かって俺は駆け出す。

 当然、狐妖は足を止める為に再び同じ魔法を使い、針の雨を降らせる。


「そうくると思ってたよ。」


 俺は腰の触手を前面に持ってくると、触手を四段重ねタワーを作りあげ、それを盾に一気に距離を詰める。

 狐妖との距離が零に近くなる頃には、触手の盾は生花で使う剣山になっていたが、役目は果たしてくれた。

 俺は即座に触手を霧散させると、直ぐに新しい触手を補充し、腰の黄金(アウルムホーク)製アイスピックを触手に引き抜かさせる。


「物は試しだっ!」


「ヮウゥンッ⁉︎」


 アイスピックを掴んだ触手による刺突。

 狙い通り狐妖の首のど真ん中を捉え、首に深く潜り込んだアイスピックを即座に引き抜くと、狐妖は苦悶の声を上げる。


「チャンスッ!」


 ここで攻撃の手は緩めない。

 手が空いている腰の触手を、狐妖の首に巻きつけ地面に向かって引っ張ると、触手の持つアイスピックを上から真っ直ぐ狐妖の長い口に突き刺し、地面へと縫い付ける。


「フグゥフゥルッ⁉︎」


「トドメッ!…うぉっとっ。」


 たが、そう簡単にトドメを許してはくれない。

 俺の連撃を止めに、ウルフリーダーの爪が遅いかかり、俺は後ろへ飛び退く。

 その結果、アイスピックを手放してしまう事になり、狐妖の頭を上から押さえつける力が無くなり、狐妖は顔を地面から引き剥がし、アイスピックを抜こうと頭を振るが、相当深く刺さったのか、アイスピックは外れない。


 狐妖はアイスピックを外すのに忙しそうで、こちらに構ってる余裕はなさそうだ。


「なら、まずはお前からだっ!」


 俺は最初に買った鉄製アイスピックを触手で引き抜き構える。


 ウルフリーダーは大口を開け噛みつきに掛かる。


「ご丁寧にどうもっ。」


 俺は触手に持たせたアイスピックを素早く空いた口に滑り込ませる。


「ガフハッ⁉︎」


 アイスピックはウルフリーダーの喉を貫き、背中へ飛び出し、ウルフリーダーは絶命する。

 アイスピックをウルフリーダーの死体から引き抜くと、直ぐに狐妖へ駆け出し今度こそトドメに向かう。


 狐妖も最後の抵抗か、口から大量の血液を垂らしながらも5本の尻尾を逆立て、尻尾の先端を一まとめにすると、今度は針ではなく氷柱が出現し、回転を始める。


 氷柱の射出。


 空気を裂きながら、回転する氷柱が俺を穿つ為に放たれる。


「でかい方が避けやすいんだよっ。」


 触手を伸ばし触手の吸盤の無い背の方を使い、氷柱に添えると氷柱の射線を上へ逸らす。

 射線を逸らす為に使った触手は回転に巻き込まれるネジ切れるが問題無い。


 俺は最初に開けた喉の穴に向かい、銀製アイスピックを突き刺しねじ込む。

 それと同時にガキンッと砕けるような音が響き、アイスピックを引き抜こうとすると、持ち手の部分だけが手元に戻ってきた。

 触手の筋力と、狐妖の肉の硬さにアイスピックは耐え切れなかったのだ。


「げっ、折れちまった。」


 だが、アイスピックは最後にキチンと役目を果たしてくれた。

 狐妖の体内に残るアイスピックは気管支を貫き呼吸を妨げる。

 そして、息の代わりに大量の血を吐き、次第に暴れる力を失っていった。


 俺は折れたアイスピックの持ち手をポケットにしまうと、狐妖に突き刺さる黄金製アイスピックを引き抜き鞘へとしまう。


 銀製アイスピックは気に入っていたのだが仕方ない。

 それに落ち込んでる暇は無い。


 接近していたジェネラルゴブリンは、両手の拳を合わせハンマーの様に振り下ろす。

 けれども打撃系は俺の得意分野。俺は触手でいとも簡単に受け止め、そのまま両腕を拘束し釣り上げる。

 そして、防御手段を失ったジェネラルゴブリンに、触手で持つ黄金製アイスピックを目から叩き込むように突き刺し、頭蓋を砕き脳まで貫通させると、体をびくんと痙攣させた後、直ぐに動かなくなった。


 魔物の上位種を片付けた俺は辺りを見回すが、現れた上位種は俺の見た魔物だけだったようで、戦線は未だ拮抗から少し優勢程度のままだ。


 とりあえず俺は空になった鞘を置きに、一旦塹壕へ戻ると、冒険者たちから次々に声を掛けられた。


「おい、アンタすげぇな。」「名前は?色は?」「良かったら俺たちと組まないか?」「面白い魔法を使うんだな。」「これは勝ったも同然だな。」「あぁ、楽勝だ。」「気持ち悪いって言ってごめんなさい。でもやっぱり気色悪いの。」


「おい、最後のホントに誰だっ!」


 人の功績を素直に褒められないのか。

 どれだけ頑張ったと思ってるんだ。


「凄く人気。」


「うぉっ、サファイア。どうしたんだ。」


 いつの間にかサファイアが俺の側にいた。


「ん。」


 驚いた俺を無視しサファイアが両手を前に出したので、サファイアの手元を見ると、ボロボロになったナイフが数本。

 健在なのは俺と同じく、黄金製のナイフくらいなのだろう。

 ナイフを破棄しにきた訳か。

 けれど、サファイアが離れたとなると戦場の方はキツイのでは無いだろうか。

 俺は気になり質問する。


「離れて大丈夫なのか。」


「見えるのは片付けた。」


 振り返ると下級の魔物死体が散乱し、動いているものは一切無い。

 成る程、単純に手が空いたから補給に戻った訳か、流石としか言いようがないな。


 サファイアは武器に愛着が無いようで、壊れた武器が無造作に積まれた山にナイフを投げ捨てると、この戦いの為にかき集められた武器の中から、同じようなナイフを手に取り、数度振るうと鞘にしまった。


「行ってくる。」


「おう。」


 魔物はまだ全部倒せた訳じゃ無いからな。

 俺が返事を返すと、サファイアは跳ねるように戦場へ戻って行った。


「さてと、俺もなんか無いかなぁ。」


 空の酒樽に無造作に放り込まれた剣や槍の(つか)を引っこ抜いては手に持って見るが、やはりしっくり来るものが無い。

 時間が無いというのに…ん?


 一本の竹槍、いや、誰だこんな馬鹿な事したの。これじゃ槍には太さが足りない。

 言うならば、ただの馬鹿でかい竹串だ。

 持ち手には雑に布が巻かれただけ。

 当然、誰も手に取らないのか、数えたら9本ほどあった。


 だが、手に持つと、案外しっくりくるのだ。


 俺は自分の感覚を信じて、9本まとめて空になった鞘へ突っ込むと、再び勢いを取り戻す魔物の群れへ駆け出す。


「良しっ、試運転だ。」


 俺は一本竹串を下投げで、地面スレスレに投げるとゴブリンの足に軽く突き刺さり、ゴブリンが痛みに足を取られ転んだ所で、触手でゴブリンの首を捻って倒す。


「微妙としか言いようが無いな。」


 この程度では上位種の魔物なら絶対に刺さらない。

 ゴブリンに突き刺さった竹串を見ると先端が潰れており、もう使い物にならなそうだ。


「これなら使い捨てで良いな。」


 どうせ誰も使わないのだからと、俺は竹串を使い捨てにする事を決める。


 自分の直感を信じた結果に気を取り直し、魔物たちを次々と触手で捻ったり叩き潰したりしながら倒していき、ようやく魔物勢いが衰えてきた。


 途中でなんどか上位種が出てくるものの、クックやサファイアが引き受けている為、冒険者たちに被害は殆ど無く、死傷者は未だ出ていない。


「もう一踏ん張りだっ!絶対に気を抜くなっ!」


 フォートの方ももう勝利が見えているのか、最後の激励の声を上げる。

 そんな時、気を抜くなと言われた側から冒険者たちの気の抜けた会話が聞こえてくる。


「だいぶ片付いてきたな。」


「おう、楽勝、楽勝。ちょろいもんだわ。」


「んっ、あそこにいるのはスライムか?アイツも見かけるのとは色が違うな。」


「そんなん関係あるかよ。スライムなんて全部雑魚じゃん。サクッと俺が倒してくるわ。」


 調子に乗った冒険者がタッタッタと森へ駆け出す。

 まだ全部魔物は片付いてもいないのに、森へ近づくのは危険だ。

 俺は静止の声をかける為、冒険者に声をかけようとすると、『黒いスライム』の姿が見えた。


「くっそ、間に合えっ!」


 俺は触手をその冒険者に伸ばし、胴に巻きつけると、思い切り引っ張り寄せる。


「うげぇっ⁉︎」


 いきなり腹を掴まれた冒険者は声を漏らし、思わず自分の武器を手放してしまう。


 次の瞬間、スライムが膨張し冒険者がいた場所そのものを飲み込むと、武器、地面、空気の一切が消え失せ、失った大気を取り戻そうと風が渦巻く。


「下がってろっ!」


「ひっ、たっ、助かった。」

「いっ、行くぞ。」


 俺は助けた冒険者を触手から解放すると、冒険者と一緒にいたもう一人の冒険者は一目散に背を向け逃げ出した。


「勇者ァァァ、貴様どこまでも邪魔を…。」


 怨嗟の篭った声が俺を今にも呪い殺しそうだ。


「久しぶりだな、黒いの。今度は魔王からどんなお使い頼まれたんだ。」


「様をつけろ無礼者っ!」


「つける訳無いだろ、それで目的はなんだ?」


「教えるものか戯け。それにどの道貴様は此処で死ぬのだ。この私の手によってな。」


「手なんて見当たらないんだけどな。」


「直ぐに見えるようになるさ。」


 俺が煽るも、歯牙にもかけないのか冷静に返すと直ぐ変化は訪れた。

 黒いスライムはグニョグニョと蠢き、肥大化し、1匹の魔物の姿を作る。


 その巨体には見覚えがある。


巨岩(ロック)()無頼漢(ロック)だとっ⁉︎」


「勇者ァ、さぁ、存分に捻り潰してくれよう。」


 倒したはずの四天王は再び俺に立ち塞がるのであった。


お読み頂きありがとうございました。

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