レスフェス
レスフェスとは観ることに特化したライブだ。
イスに座り高いところから、ショーを見下ろす。中身はごくごく普通のライブと変わらない。
レスフェスの唯一の特徴は、ファンも観る、というところだ。
ステージに立つアーティストには、そこまでの物語がある。ライブへ至る努力や苦悩。「客」に見せるのは一部でしかないとしても、その物語を一番よく知るのはファンである。
その物語を他の人にも感じてほしい、熱量を感じてほしいというのが、先輩の想いだ。
だからこそ、レスフェスは観客席も二種類つくられる。
支える席と眺める席。これは、ほとんどのライブで存在する「不文律」を明文化するということだ。
いまどき、どんなアーティストであれ、ライブの映像を見ればステージのショーとそれに感動するファンの姿が映されている。腕やアイテムを一心不乱に振り回したり、顔に手をあて号泣する、ファン。
しかし、映されるのは基本的に前列か、全体かだ。それが、「ファン」であると認識されている。
つまり、ライブの盛り上がりに、ファンの姿が必要であることは常識なのだ。ファンがライブを支えているのである。
しかし、会場にはそうでない人間もいる。その人が好きなわけではない。ファンに混じってはしゃぎたいわけでもない。会場にいることが幸せな人間。好きが集まって生み出される熱量を感じたいだけの人間。
傍観者なのだろう。見方によれば、冷めた目で見ていると思われるかもしれない。でも、ライブが好き。自分にない熱量が好き。日常にない熱量が好き。そういう人種もいるのだ。
先輩はその熱量をパッケージ化して売れないものかと考えていた。
アーティストとファンがつくるライブ。それがレスフェスのコンセプトだ。