世界はこれまた唐突に幕を閉じる…
9話です
いつものメンバーが集まっているのは家から数分の海辺…。その6人の中で1人の少年が話を切り出す…
「みんな、急に集めてごめん。でも聞いて欲しいことがあるんだ。僕は一つ、みんなに隠していたことがある。」
メンバーが息を飲み少年は話を続ける
「この世界は、仮想世界なんだ。」
綺麗な夕焼け、綺麗な海…。それらに包まれた美しきこの空間。そんな世界にいる彼らは少年の発言に言葉が出なかった。そんな中少年は話を続ける。
「驚くかもしれない。信じてくれないかもしれない。でも信じて欲しい。この世界は僕が作り出した仮想の世界なんだ。でも、コンピュータで作り出した人間をおいてもそれはただの絵でしかない。だから僕はこの世界に現実を移したんだ。僕がプログラムしたこの世界に現実の人々を入れたんだ。
順を追って話そう。僕は昔、科学者だった。僕は世間から一目置かれるとんでもなく若い科学者で当時は13歳だったんだ。中学一年生ほどの年齢で普通の中学生は勉学に励み友達と遊び部活動に勤しむ。でも僕はといえば実験室でただただ実験をし結果を出し考察をあげそれを立証する。僕の周りにはおじさんやらおじいさんやらばかりで退屈もそうだがなにより窮屈だった。そんなつまらない世界だったからこの世界を作った。僕は青春を味わうことも、同級生の友達と話すことも許されなかった。求められるのは結果だけ。両親も共働きでとても裕福な家庭だったことは確かだけれどそれでも僕は大好きなゲームすら満足にできない、アニメや漫画やラノベの世界にある青春を味わえないことへの不満が僕にこの世界を作らせたんだ。僕が決心すると周りの研究員は手伝ってくれた。一応研究だし僕が求められていることには違いない。
中学一年生から始めて世界の構築からスタートした。最初から世界の情報を全て入力したからすごい時間がかかっちゃって世界が出来上がるのに6年もかかっちゃった。でもそれからは楽だったよ。電波をジャックして徐々に世界中の人々の脳をジャックした。それで共通の世界『仮想世界』という名の夢を見させたんだ。あとはプログラムした世界に人々を解き放ち記憶を都合のいいように改変するだけ。それでも高校のメンバーはこだわりたいし頑張って同い年のゲーマーを集めたんだ。僕らが高校生で青春を謳歌して当初の予定である1年が過ぎれば終わって夢から覚め何事もなかったかのようにそれを徐々に忘れてまた現実に戻るはずだったんだ。でも研究員から情報が漏れていたのか国の人間には対策を練られていた。そして国の人間は外からの妨害により強制的にその電波ジャックの発信元を壊すことによる世界の破壊で僕らを起こすつもりらしい。あの黒服の人間らは国の人間だったんだ。元々は僕を殺すことによって夢から覚まさせ電波を止めさせる気だったらしいが実際はその衝撃によって僕はこの世界の管理人であることもここは仮想世界であることも全て思い出した。でも僕は現実に戻りたくなかった。だから黒服の男からの警告も無視し続けた。みんなを…騙し続けたんだ……そして昨日の森で『明後日の午前0時をもって発信元の電波を辿って世界を壊す』と黒服は言ってた。その時の衝撃によってかなりの苦痛を味わわせることになる。本当にごめん。謝って許されることじゃない。そう言っている今もまだ心のどこかでいつかは忘れ去られることだと思ってる。本当にごめん…。だけど僕の権限はまだ残ってるしみんなをログアウトはさせることできるよ。」
みんな真剣な顔になっていた。そんな中1人の親友は僕に笑いかけながら声をかけてくれたんだ。
「顔を上げろって。あ、もちろん俺は最後まで残るぜ?お前らと出会えたこの世界。どうしたって途中リタイアなんてしたくねぇ。夢はいつか覚めて夢はいつかは忘れる。俺らのこの日々も全て忘れ去られる。例えそうだとしても俺はこの世界をこのメンバーで終わりを迎えたい。それに苦痛なんてゲームしてりゃ忘れられるだろ」
「うん。」
「そうね。」
「そうそう。」
「だね。」
上から舞、あま、琴葉、僕の順に同意したのち笑顔になって…
『だって僕(俺・私)たちはゲーマーなんだから!』
そう、僕らはゲーマー。いろんな思考の違いはあれども根底にあるのはゲームを純粋に愛する気持ち。そんな僕らはきっと心のどこかでつながっていれるだろう。
僕がそれぞれにゲームを渡すとVR式のゲームコントローラーを皆は装着した。辺りはすっかり夜になり月の光とともに海が綺麗に光っている。そんな綺麗な風景の中、5人はゲームを起動し彼らの脳はまた仮想現実から離れていった。
AM.00:00
世界は静かに消えていった…
最後まで読んでいただきありがとうございます!次で最終回となります!読んでいただけたら嬉しいです!