キス魔今野淳誕生
第8話です!!
僕らが部屋に戻ると女子3人もちょうど部屋に戻ったところだった。女子のお風呂上がりの寝巻き姿を堪能していると舞さんや琴葉はまだ調子を取り戻しておらず少し元気がないようだった。それを見越した僕は5人で旅館の下にあるちょっとしたゲームセンターに行くこととした。
着くと目に入るクレーンゲーム二台に戦闘型のアクションゲーム四台。そして戦闘型ゲームには若い男性が4人で遊んでいるらしい。僕らは仕方なくクレーンゲームに目を移し少し遊ぶも流石に長続きがしない。
「どうしよっか。」
「うん。あそこの台が空けばみんなで変わりばんこで遊べるのにねぇ。」
僕の発言に返してくれるあま。その時自然にアクションゲーム機に目を向けるとゲームが終わったらしく1人の男と目が合ってしまった。
「ん?なんだ、おめぇ。これ使いてぇって顔だな。」
「あ、はい。」
「俺らもちょうど飽きてきたところなんだわ。」
「そ、それじゃあ…」
僕と男性の会話で和解できそうになり皆が明るい顔になったところで…
「俺らとゲームしねぇか?そちらから2人、こちらから2人で。お前らが勝ったらここ譲ってやるよ。でもお前らが負けたらここは譲らねえしお前らにはこのゲームを4人であと5回遊べるだけの金を払ってもらう。こっちが譲ってやるっていってんだから当然だよなぁ?」
「そうですがあなたの言い分には一つ大きな勘違いがあります。それはあなたはこれを自分の所有物だと勘違いしていることです。それはそうですよね??何故かあなたの会話の前提条件としてこれは自分たちが優先的に遊べる機会となっているのですから。それともーー」
僕にスイッチが入ったところであまの邪魔な仲裁が入る。
「まあまあ!その勝負お受けしましょう。こちら側は私とあっちゃんで勝負します。」
「お、おい…あま……」
「まあまあ。」
そんなこんなで僕とあまVS相手の若い男性×2の勝負が始まった。あまは一応さっき色々あった3人はやめさせるという気遣いはしてくれたようだ。
「(さてどうしよっかな…。このゲームは初見だしあまもおそらく…。これじゃあさっきまで使っていた相手の方が断然有利なのにあまは何を考えているんだ)」
どうやら格ゲーのようだが奥行きまである三次元仕様のバトルロイヤル戦らしい。全部で最大5戦できる。チーム戦ならば最初に3勝した方が勝ちらしい。
「お前ら今のうちに謝っといたほうがいいかもな!」
相手側の挑発に一つ反論することなくできる限りの集中力でゲーム内容についての把握に努めた。いよいよ第一戦!
「(初見のゲームで勝つにはどれだけ一戦でゲームの情報と相手の情報を掴めるかで決まる。あまもわかっているだろう)」
僕らは一戦目は完敗したが2戦目には惜しいところまで行ったが負けてしまった。
「おいおい後がないぞ〜?大丈夫かぁ?こんな弱いとつまらないんだがなぁ」
だがこの時すでに僕らにはどちらが勝つか見えていた。
第3戦目、勝利。第4戦目、勝利。最終戦……勝利。僕らは残りの3戦で相手からノーダメで勝つまでの成長を見せた。
「どんなチートを使ったんだよ!こんなんおかしいだろ!!」
「チートも何もありませんよ?あなたたちは相手が攻撃してくるのを待ってはガードや交わしで避けつつチビチビと攻撃を与え必殺技でダメージを与えていき勝つといういかにも初心者のチキンがやりそうな手を使ってきていたので簡単でした。このゲームには逆境というルールがあって負け数が多いプレイヤーほど必殺ゲージが溜まりにくくなっていてですねーー」
あっちゃんの解説が終わるとお兄さんたちは部屋に戻っていった。私とあっちゃんは顔を合わせて笑う。他の3人もホッとしたように体勢を崩す。そんな時、あっちゃんの優しい声が耳に届く…
「あま…」
私が振り向くとあっちゃんは私と唇を合わせる…
『…』
しばらくの沈黙と接吻…。空気が固まりあまの顔がみるみる赤くなるのをみた少年は長い口づけを終わらせ優しいトーンで…
「あま、7年前のあの約束。やっと果たせたね。」
「え?でもあれはあっちゃんが私とゲームして私が勝ったら…でしょ?」
「僕に勝ったら…って約束じゃないでしょ?」
すると少年はいたずらっぽく笑うと他の3人はそれぞれ複雑な表情をしていた。その夜はみんな色々あって疲れていたのでぐっすり眠った。朝起きるともう昼になっていてみんなを急いで起こしてバスに乗り込む。
「こんな慌ただしくなるなんてあっちゃんの計画ミスでしょ。」
「誰も昼前に起きないなんて予測できないじゃん!」
「まあこんな日もあっていいんじゃねぇか?」
その日の夕方バスから降りると僕と舞さん、英夜と琴葉とあまでそれぞれに家に向かった。
「ねぇ淳君。」
「うん?」
「楽しかったね。また来ようよ!」
「う、うん。そうだね…」
「どうしたの?何か元気ないよ?」
「いやいや全然なんともないよ。」
「そう?そういえば散歩の時はどこいってたの?」
「いやちょっと忘れ物しちゃって取りに行ってたんだよ」
「(あの夜…僕は黒服の男たちに呼び出され警告されたんだ。それでも僕はこんな日常とは言えない日常を愛して楽しくてもっとこのままでいたいと思った。でもそれは本当はーー)」
「…淳君?」
「え?あ、いやなんでもない。」
「(流石に全部は話せないよな〜)」
「淳君…」
「ん?」
「眉毛のところに何か付いてるよ。取ってあげる。しゃがんで目を瞑って。」
「ほんと?あ、ありがとう」
そうして目を閉じた僕はすっかり夜になった風景が消え、舞さんの僅かな呼吸音が聞こえ息が当たるレベルまで近づいてドキドキするとそのまま唇が重なった…。
一瞬の硬直とともに目を開けると涙の溢れている舞さんを見て愛おしく思い熱い口づけを交わした…
「私…淳君のことが好き。淳のことが好き!!でもこの想いは届かないってわかってる。だからせめて…一緒にいて私のことをみんなと同じように名前で呼んでくれないかな…」
「うん。ありがとう…舞……」
そうやって抱き合う2人が夜の景色に包まれていった…
だがこの時の僕らは知らなかった。僕らの日常がもう終わろうとしていることを…
最後まで読んでいただきありがとうございます!!この調子でどんどんと投稿していきますのでよろしくお願いします!!10話完結予定です!