おぶることが多いと感じる僕であった
遅くなってすみません!7話です
「えー、これから夏休みとなるが高校生と言っても羽目を外しすぎないように。夏休みだからと言って遊びすぎず勉強を疎かにせず、宿題は計画的にーー」
そんな夏休みのど定番の諸注意を物語の台本から出て来たかのようにペラペラと述べる筋肉。そして日直の号令とともに始まった夏休み。その1分と経たない間に僕に寄ってきた女…こほん!僕に話しかけてくださった女子は…
「淳君!この夏休み、私と過ごそうよ!」
かなり思いがけない言葉が飛んできてビビる僕。ゆっくりと目を向けるとそこには舞さんが立っていた。
「う、うんそうだね。たくさん遊ぼう。」
そんな僕らを見てくる3つの視線。教室内1の廊下1か…
そして夏が来た…
僕は最近すっかりと馴染んだメンバー、いわゆるいつメンとやらである英夜、舞さん、琴葉に奏音で夏休みを満喫することとなった。カラオケやら海やらプールやら…。挙句の果てには花火まで…。そんな僕らの夏休みはあっという間に過ぎ去り次の計画を練る…
「やっぱりお泊まり行きたいよね〜。」
その奏音の言葉に子供らしい笑みで反応する琴葉。
「いいね!お泊り。私は温泉付きがいいのです!!」
「じゃあ温泉旅行と行きますか。僕の親戚に温泉旅館の管理人やってるおじさんがいるから安くしてくれるかも!まあそこなかなかに山奥なんだけどさ。」
『賛成!』
僕らはその翌日、例の温泉旅館に向かってバスに乗り込んだ。そのバスには僕ら以外誰もいなかったが、僕らはこの時、大した緊張感や不信感も持たずただただ旅行を楽しむつもりでいた…
「遠いのか?」
「1時間くらいかなぁ」
バスが出発してからの第一声である英夜の発言に答える僕。その後は5人で他愛のない会話が続いた。
プシューッというバスのドアの開閉音とともに飛び出す僕ら。旅館を見ても別に変なところは何もない。とりあえず部屋に行って荷物を置こうとし部屋に向かう僕ら。
そして5人で和室の部屋に入り荷物を置き終えた僕らはやっとその問題に気がつく。
『男女一緒の部屋なの!?』
その瞬間予約を取った僕に目線が行くが僕は必死で否定する。
「い、いや!僕はちゃんと2人と3人の2組に分けて予約を取ったんだよ!」
その時の僕には疑惑の目線が向けられた。
「ほ、本当だって!」
その僕の発言ののち、ドアが勢いよく開き館長が息を弾ませながら話し出す。
「申し訳ございません!淳君!本当にごめん。急遽国からの命令で来た客人を泊なくてはならなくて。」
「そういうことなら大丈夫ですよ。身内の僕が2部屋も取ってるんだし優先的かつ断りやすいのは僕だってことくらい把握できます。」
「ありがとう!本当にありがとう!お詫びとして今回の宿泊、食事代はもらわなくていいよ。」
「そんな…流石にそこまでしてもらうわけにはいきません!」
「いいからいいから」
この館長と僕のやりとりの後、僕は強引に押し切られあえなくタダ飯タダ宿となった。
僕らは時間があるためゲームした後、山へと散歩しに出た。
「虫の鳴き声がきれい。」
「そうだね〜。なんだか、心が和むよ。少し下に行ったら川があると思うからそこまで行ってみようか。」
『うん。』
そんな時僕は黒服の男たちを見つけ手招きされたので英夜たちから適当な話をつけて離れた。
僕がいなくなって4人になった彼らはしばらく話をしつつ山を下っていった。すると光が見えたのでそこへ行くと沢山の蛍の光が反射した川に着く。周りには木やら林やら。そして前には蛍の光とそれを写した川。その風景を見た彼らはふと沈黙を作る。
『…』
さっきまで騒がしかった4人が黙って景色に見とれる。
そんな時、英夜に何者かが後ろから近づき睡眠薬が含まれているハンカチによって英夜を気絶させた。
視線から消える英夜。その異変に気付いた舞さんが反応する。
「英夜君!?」
そのピンク髪少女は振り返りその声に反応した2人、黒髪超絶ロング少女におっとりの唯一の外見女子高生もすかさず振り返る。すると目の前にはいかにもな英夜を抱えた大柄の熊のようなおじさん一人、ただのおじさんが一人の計おじさん×2がこちらを見ていた。
「誰…?」
恐る恐る声を出す舞さんに答えるおじさん。
「そんなのわかってるだろ?」
そう言ってニヤニヤしながら舞さんの手を握る英夜を抱えていない方の通常サイズのおじさん。舞さんは抵抗するも襟を掴まれ隣にある木に叩きつけられる。それを見て泣き出す琴葉に助けに行こうとするが熊おじさんに阻まれる奏音。
「や、やめて…。お願い……」
服を取られて下着だけになった舞さん。そしてとうとう上の方の下着を取られた瞬間、蛍の光とは裏腹に暗い林の中から出て来た少年の手がおじさんの手を掴む。あまりの力に痛みで体をよじるおじさん。少年が手を離すとおじさんは熊の方へ後ずさりする。舞さんを庇うように立った彼は蛍の光によって顔が現れる。
「あっちゃん!」
「おっと。お仲間さん登場ですか。この光景を見て逃げ出さなかったことは評価してあげましょう。」
通常おじさんが手を抑えながら話しかけると睨まずとも笑みのない感情のないかのような顔で少年は言葉を返す。
「あなたに評価される筋合いはありませんね。むしろこのような行為を行ってなお胸を張って発言できるあなたのその〜(チルダマーク)のように曲がりくねった根性には感心さえ覚えますね。」
「そうは言っても今時の女が素直じゃないのが悪い。男なんてどうせヤれれば誰だっていいと思ってんのに選びやがって。だから文句を言うのならそういう女に言ってくれ。」
「なんて偏差値の低そうな発言でしょうか。まさかレイプまがいの行為を正当化しようとは…。あなたのその行為は結局は自分の個人的要因による相手への障害。この場合性犯罪ですね。その行為を否定するということは即ち国の法律を否定することと同義であると自覚ありますか?またそもそものこととして自分の事情で他人に手を下すことを間違いだとわからないんですか?ここまで言ってもなお理解できないのであれば精神科行った後に小学校へと入学希望を出して来てください。まあ通るわけがありませんが。」
そう嘲笑混じりに言った少年に焦った通常おじさんは頭を赤くして手にブラを持ったまま叫んだ。
「うるせえ!やっちまえ!」
そういうと熊が襲いかかって来た。
「こんな短い言葉でさえ頭が悪そうですね。」
そう言って少年は熊パンチを軽々しくかわすと熊の手をとって体ごとテコの原理を利用し熊を地面に叩きつけた。すると熊は気絶し通常おじさんは慌ててブラを投げ出し逃げていった。そのブラは川へと落ち流れてしまった。
「みんな怪我はない?」
そう言って僕は自分の上着を舞さんにかけた。
「うん、でも琴葉ちゃんはきついかも」
「とりあえず僕は英夜を運ぶからあまは2人を見てて。流石に気持ち落ち着くまで旅館に戻るのはやめといたほうがいいだろうし。」
「わかった。」
「少し待っててね。すぐ戻るから」
僕は舞さんにそう声をかけ、琴葉の頭を撫でてから英夜をおぶって走っていった。
僕が戻っても舞さんは泣き続けていた。
「少しあまと舞さんで話なよ。僕は琴葉とすぐ駆けつけられるところにいるから。」
「わかった。」
そういってまだ涙をポロポロこぼしている琴葉をおぶって遠くへ離れる僕。
「琴葉、大丈夫か?もう悪い人はいなくなったし大丈夫だよ。だから元気出して。」
そう言いつつ近くの適当な木に琴葉を寄りかからせると僕はまた続ける。
「こういうこともたまにはあるさ。せっかくの旅行だしもっと楽しもうよ!ね?」
「淳が……してくれたら…涙止まるかも」
「え?」
「淳が…スしてくれたら…涙止まるかも」
「ごめん聞こえない」
「淳がキスしてくれたら涙止まるかも!」
そう僕に叫んだ琴葉は下を向き耳を赤くしている。そんな時奏音がこちらに手を振って呼んでいる。
「もう元気じゃん。奏音も呼んでいることだし戻ろう、ね?」
「淳がキスしてくれないと動けない。」
「なんだよそれ。もうしょうがないなぁ。他の人には内緒にしてよ?」
そう言って僕はあまのことなんか忘れて琴葉と唇を重ねた。その後顔を真っ赤にした琴葉と歩いてあまのところに戻ると舞さんは相変わらずだった。
「琴葉ちゃんどうしたの?顔真っ赤だよ?」
どうやら木に隠れて見えていなかったらしい。
「いやいやなんでもないよ。それより舞さんの調子はどう?」
そう耳元で言うとあまも同じようにして答える。
「戻れるって言ってるんだけど体の震えが止まらないみたいで」
そう言ってみると彼女は泣きながら体が震えている。その時僕は舞さんの前でしゃがみこみ話しかける。
「その恥ずかしいだろうしこれなら一番隠せるかなって…。それとも嫌かな…?」
するとあまはなにか感じたらしく「先行っとくね」と言い残して足早に琴葉を連れて帰った。
「うん…」
すると彼女は僕の上に乗っかり僕は歩き出す…。
「えっと…大丈夫?その、僕は全然見えてないし英夜だって気絶してたし気にすることないと思うよ!」
「うん、ありがと。淳君もあーいうことしたいとか考えたりするの…?」
「んー、まあそれはちょっとはね。舞さんは?」
「私だってそりゃちょっとは考えるよ。そうなんだ…それは私とでもいいの?」
「え…?それは……」
「いやなんでもない、忘れて。それより淳君。」
「あ、うん。で、なに?」
「淳君はいつになったら私のこと呼び捨てにしてくれるの?奏音ちゃんや琴葉ちゃんのことはそうやって呼んでるのに」
「えっと…ちょっと恥ずかしくってそれにあまは幼馴染だし琴葉は同い年に見えないしなんか舞さんとは違うっていうか…」
「そっか。ならさ…」
舞さんがそこまで切り出した時…
「あ、旅館に着いたよ。ん?今何か話しかけてた?」
「いやなんでもない。」
戻って少しすると舞さんは調子を取り戻してきて英夜は起きたので事情を簡単に説明した。その後僕らは大浴場に行くこととなった。
僕と英夜は大きなお風呂に入り僕が話を切り出し言葉を交わし合う。
「ここ露天風呂だったんだね。」
「だな、星が綺麗だ。」
「この星をずっと見ていたい…。」
それから星に見入ると少しの間心地よい沈黙が流れた。
そして今度は英夜から会話が始まる。
「なぁ、淳。俺らがこうやって過ごせるのも高校卒業まででそれからは別々の道を歩むんだよな。」
「そうだね。時間は限られてる。だから精一杯一緒に過ごして楽しんでゲームして…。それで卒業してもずっと友達でいよう。ところで英夜はまだクラスを上にしたいと思ってたりするの?」
「前ほど強く思ってはいないな。今はもうこいつらとゲームできればいいって思うし。」
「そっか…。」
「なんだよ、気持ち悪りぃ。」
「え〜。それは酷いよ〜」
「ジョークだバカ」
「知ってるけどね」
「そうか。」
「怒らないの?」
「俺はこの空のように心が寛大なのさ」
「…」
「なんとか言えよ。悪かったから」
「ふふふ。」
「ふっ。」
しばらく心地よい沈黙とともに空を見上げ、その後僕らは風呂を上がった…
最後まで読んでいただきありがとうございます!これから頑張って完結させていくのでどうかよろしくお願いします!!