59,アリーナ編Ⅱーテイル部門、開始!ー
やや短めです。すみません
パーティ部門ではエリアが追加されて、総当たり戦からのトーナメント戦になった。
パーティ戦だから、あのシーカーズも参加している。でもトーナメント戦の時に一回戦負けして、優勝は抜群のチームワークの二人組、ナツとツキというパーティとクラティ・マロン・ダイ・ヒアの四人パーティが同率優勝をした。
「ヒマリ、行くよ。」
「あ、うん。」
パーティ戦が終わり、二十分の休憩時間に入った。
シノが私にそう言い立ち上がる。
ちなみに、お昼ご飯はパーティ戦の少しの合間に食べているから空腹感はない。
ようやくテイル部門が始まるんだ!
胸がドキドキと高鳴って、ついつい口角が上がってしまう。
そんな私を見て、ヤツが「………キモッ。」と呟いていたのを、もちろん私は聞き逃さなかった。
「ウィル、ララ。準備はいい?」
『大丈夫です!』
『ばっちぐーっ!』
二人も元気っぽいね。
よしよしと指先で頭をなでてあげると、二人はえへへと笑ってくれた。
プレイヤー用出入り口に八人が集まる。
先頭に立つリョウ先輩が、こちらを小さく振り向いて言った。
「…………しっかり動け。悔いのない戦いにしろ。」
「「「「はい!」」」」
「「了解。」」
「ああ。」
その声が終わると同時に、ルキアルさんのナレーションが入る。
私たちは、その言葉を合図にフィールドへ入っていった。
ーーーーー
「あ、ミユウ!ひっさしっぶりぃ!」
「ええっと………ナツ?」
「そう。本当にいつも姉が……ナツがごめんなさい。」
「ツキ………」
ヒマリ達がプレイヤー用出入り口へ向かっているその時、観客席に座るミユウのもとに来客があった。
先ほどのパーティ部門で同率優勝をしたナツ・ツキペアである。
元気で明るいナツに反して、ツキは落ち着いているおしとやかな少女のようで、きゃっきゃっとミユウにまとわりつくナツを横目でにらみながらミユウに謝っている。
どこか正反対な二人だが、まるで同じ人物かのように端正な顔がそっくりだ。だが、どこかナツの方は凛々しく、ツキは清楚な雰囲気を持っていた。
「隣、いいかなっ?」
「もちろん。」
「………ナツ。もう少し静かにして。」
少女のような見た目に反して少し低めの声でツキがナツを制する。
その言葉に、ナツは少し唇を尖らせながらきちんと席に座った。
「………パーティ部門、優勝おめでとう。」
「そっちこそ!ソロ初撃優勝おめ!」
「まあ、同率だから何とも言えないけどね。」
辺りの観客席も少しずつ埋まってきて、中にいたプレイヤーが戻ってくる。
「あれって制限時間オーバーだよね?」
「うん。あと三秒あればまとめて狩れたんだけど。」
「ツキ怖いよ(笑)」
「もう少しだったのに、残念だったね。」
ミユウの脳内で、双剣を構えた二人がもう一つの四人パーティ(ただしその時にはもう二人しかいなかった)に飛びかかるシーンが呼び出されていた。
さっきからナツは表面上不機嫌モードだ。
「次はテイルかぁ………」
「今回は、楽しくなりそうだよ?」
「え、どしたのミユウ?知り合いでもいるの?」
天井に映し出されるうっそうとした森林フィールドを眺めながら、ミユウは呟く。
ナツが興味津々に聞くと、彼女は嬉しそうに小さく笑って言った。
「うん…!」
ーーーーー
専用フィールドに入ると、私達を迎え入れたのはうっそうとした木々達だった。
どうやら第一回戦は森林フィールドらしい。
森林フィールドなら奇襲がかけやすいけど、かけられやすい。
「ヒマリ、【スピリット】。エン、【伝蝶】。」
「「了解。」」
ここで、私とエン先輩はとある魔法を使うことになっている。
通信系のスキルを持っていないから、その隙間を埋めるための作戦の一つだ。
チーム戦で重要になってくるのは【チームワーク】だ。
そして、それをする上でも情報の伝達は必要ではないか、とリョウ先輩は言う。
『もちろん、事前の作戦をしっかり用意しておくことも重要だが、作戦など一つの形でしかない。その時その時にハプニングが起こり、作戦が崩れることもある。その非常時を個人で切り抜けるのは当たり前だが、時と場合によっては誰かの助けが必要になる。その時は情報伝達の術があった方がいいだろう。』
作戦会議の場で、リョウ先輩は最初に言っていた。
そのために必要になったのが、私の【スピリット】とエン先輩の【伝蝶】だ。
スピリットは言うまでもない、水と光の妖精を呼び出す精霊魔法の一つだ。
そして、エン先輩の【伝蝶】は、蝶の形をした幻影が言葉を伝えてくれる魔法。ただし、この伝蝶は伝えるスピードがやや遅く、同時にたくさんの蝶を呼び出すことができない。しかし、出現させた時、その時出したすべての蝶の記憶が一体化されているので、どこかの蝶が伝えられた情報を、別の蝶がその場で伝えたい相手に伝えることができる。
だから、スピリットと伝蝶を混合で混ぜ合わせることでより多くの伝蝶を一度に出すことができるのだ。
それにプラスして、緊急事態の時に私がカバーしきれないところで補助することもできる。




