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水無月学園生徒会は、どんな世界でも最強なのです!  作者: 葉月 都
第五章 水無月学園生徒会は、アリーナをも征服します
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58,アリーナ編Ⅰーロリータ少女ー



大歓声の中、ナイトは刀を鞘の中にしまい、ゲイルに一礼してから出てきた出入口から出ていった。

横では見事復讐を遂げてくれたナイトに、二人の精霊が声援を送っていた。


それにしても速かったなぁ………

きっと風魔法とかを使ったんだけど、あのゲイルを飛ばしつつ、すぐに自分も飛んでいくんだから、すごいよね………落ちる位置とかも計算してたのかな?


胸がドキドキとする。

あんな風に戦えたら。そう思う自分がいて、私は久しぶりに笑った気がした。






「お疲れ様!ナイト。」

「………うん。」

「さすがだな、ナイト。」

「………うん。」




席に戻った途端、ナイトを褒めたたえる賛辞が飛び交った。

ナイトはいつも通りの返しをして、私の一つ向こうの席に座る。


あんな瞬殺プレイをしながらもナイトは「いつも通り」だ。息もいつも通りだし、返事もいつも通りだ。

これがトッププレイヤーの実力かぁ………




『さァ!エキシビジョンマッチはまさに疾風の如く幕を閉じたァ!だが!これからが本番だ!野郎共!そして可愛コちゃん達!準備はできてるかぁ!?』




そんな私の思考を破り去り、大音量のナレーションが入る。

ナイトの試合の時以上の歓声が会場を揺るがす。


もちろん私も負けじと大声で叫ぶ。




『おーけぃ、おーけぃ!そんじゃあまずはソロ部門からだ!十分後に開始するから、ソロ部門のやつらは全員入場口集合だ!!改めて、第三回・PVPバトルアリーナフェスティバル、開園だ!!!』




再び客席から歓声が上がる。

そして、少しずつ観客が移動を開始した。

でも、私たちは動かない。だってソロ部門だもん。


どうやらソロ部門、タッグ部門、パーティ部門、そして最後にテイル部門があるらしい。だから、テイル部門は本当に最後の方。ちなみに、直前で決まったらしいけど、ソロ部門以外の部門は初撃決着・10%・全滅の三つに分かれなくなったらしい。参加者が多くて、それぞれで分けていたら時間がかかるから全部まとめて、全滅を勝利条件にしたらしい。




「ね、ヒマリ。」

「うわぁっ!なな、なに、ナイト!?」




突然、休憩に出かけたシノの席に身を乗り出して、ナイトが私に話しかけてきた。

予想以上の反応だったらしく、ナイトは私に小さく謝って言った。




「ソロの初撃部門、ミユウ出るんだって。応援してあげてね。」

「み、ミユウちゃんが、ですか!?」

「うん。」




こくんと頷くと、ナイトは話は終わりと姿勢を戻した。


そっか……あのミユウちゃんが……………

私の脳内にあの狐耳のロリッ娘が思い浮かぶ。そういえば、ミユウちゃんと最後にあったのって結構前だなーとか思いつつ、私は胸がドキドキしてきた。




ーーーーー




『ソロ初撃部門第四回戦!ロリータ少女ミユウVS(バーサス)烈火の炎龍グランドだ!』




ナレーターの声に合わせて空中に画面が表示される。

そして、左右の出入り口から二人が出てきた。

左からは赤いロリータ服のミユウちゃん、右からはハンマーを担いだ日焼けした大柄の男の人が出てくる。

うっわぁ………体格差。お父さんと娘ぐらい違う気がするよ………



二人は中央で向かい合い、お辞儀をする。

そして、両者コマンドボードに手を置いて開始の合図を待つ。


会場内の空気が変わり、どことなく緊張感が漂う。


初撃決着は始めが大事。むしろ始めで決まるから集中が命になる。

二人の真ん中やや後ろに立つ審判NPCが旗を降ろした瞬間が開始になる。



バサッ!



布が風を切る音がして、審判が旗を降ろした。

その刹那、二人の指が軽やかにボード上を舞い、コンマの動きで武器を構え、振り下ろす。


グランドさんが繰り出したのは炎の龍。それに対してミユウちゃんは無数の氷柱つらら。二つの力が中央でぶつかり合い、先にHPを削ったのは、ミユウちゃんだった。

氷柱を一本、敵の死角になるように飛ばし、頬に傷をつけたのだ。


空中に『ミユウ WIN!』の文字が出て、客席のボルテージが上がる。

二人はお辞儀をしてそれぞれの出口へ帰っていった。



それにしても、初撃決着は終わるのが早いなぁ………

開会式のデモンストレーションが終わって十五分しかたってない。さすが。

でも、ウィルとララが楽しそうだからいっか。


次の対戦相手二人が出てきて、私は小さく笑いながら歓声に混ざった。






そしてそれから三十分後。無事ミユウちゃんはソロ・初撃決着部門を制覇し、優勝カップを手にした。

なんでも、ミユウちゃんはこれで二連覇だそうだからすごいものだ。



次に始まったのはソロの10%部門。

こっちはギリギリまで削るからかなり白熱した戦いになった。優勝したのはクラムというレイピア使いの若い男の人だった。


そしてソロ部門最後の全滅部門。

全滅というかHPを全部削りきる戦いで、こっちも白熱した戦いだった。ソロ初撃以外のソロ部門の出場者はその時だけHP500、ATK150に統一させられる。オーバーロードや回復はOK。バフもOK。公平に戦うためなんだって。

優勝したのはレモネードさん。黄色い長い髪の魔術師の女性だった。





二十分の休憩の後、タッグ部門が始まった。

タッグっていうのは、妖精・精霊種族のプレイヤーと妖精・精霊種族じゃない妖術師・精霊術師のプレイヤーの二人組パーティのこと。ただ、普通のパーティと違うのが、二人が"契約"をしているということ。

契約って聞くと響きが悪いけど、思っているのとは少し違って、例えば意思疎通が出来たり、魔力の共有をしたり、自分が使えない魔法を場合に応じて相手に渡すことが出来たりするらしいんだ。

さすがウィル。物知り!


タッグ部門は初撃部門無しの10%部門と全滅部門に分かれている。

ソロ部門とは違って人数が増えるからバトルも緻密なものになる。タッグの場合、タッグマスターと呼ばれる妖術師、精霊術師側のプレイヤーがゲームオーバーになると試合が終了する。

もちろん、妖精・精霊側のプレイヤー、タッグライトがゲームオーバーになったら、タッグライト側は戦闘不能になるけどマスター側はその分きつくなる。なんせ2対1になるんだから。


結果は、タッグ・10%部門はいちごさんとひかりさんタッグが。タッグ・全滅部門は、高いコンビネーション力を見せたリルル・レイタッグの優勝となった。





そして再び二十分休憩が始まる。

ふうっと一息ついた私の肩を、誰かがたたいた。

一拍遅れて聞こえてくる、懐かしい少し高い声。




「………ヒマリちゃん。」

「!!ミユウちゃん!」




そこには、試合のときと同じ赤いロリータ服を着たミユウちゃんが立っていた。




ーーーーー




「優勝おめでとう!」

「ありがとう。次は三連覇だね。」




コロシアムの屋内へ入り、私たちはベンチに腰掛ける。

どこか重い石造りの漆喰の壁が、外の喧騒を少し遮ってくれる。




「それにしても、あのツララの配置はすごいね………ミユウちゃんってなんの職業なの?」

「………妖術師。」

「へぇ………タッグは組まなかったの?」

「うん。団体行動苦手だから。」




緑色の瞳を細くして、ミユウちゃんはそう答えた。

どこかナイトを思わせる会話に、私は小さく笑った。


すると、ミユウちゃんはどこかを見つめながら言った。




「…………テイル部門、出るんだよね?ヒマリちゃん。」

「うん!初めてのアリーナだから楽しみ!」

「……私、応援してるから。いつでも。」

「?う、うん…………?」

「今回出てくるテイル部門の参加者で………」




そう言いながら、ミユウちゃんはウィンドウを呼び出して、可視モードにしてから私に見せた。

それはお知らせの中にあった、今回のテイル部門の参加団体の一覧表だった。ミユウちゃんはその中の【火炎帝国】というテイル名を指さした。




「要注意は【火炎帝国】。【大天使兵団】も【バードウォッチャーの集い】も空中戦を強いられるけど、戦力や技術力は火炎帝国が何枚も上手。ただ、火属性のプレイヤーしか集まってないから水属性のヒマリちゃんなら大丈夫。ただ、注意してて。」

「【火炎帝国】…………?」




そういわれて、私は数日前にリョウ先輩に同じようなことを言われたのを思い出した。







『今回も火炎帝国が参戦するそうだ。』

『かえんていこく?』



そう尋ねた私に、隣に座るシノが答える。




『入隊条件が「火属性のプレイヤーであること」っていう妙なテイルだよ。』

『うんうん。水属性なら有利だけど、やけに連携力高いし高火力だからかなり強いんだよね。』




シノの言葉にミネトも同調し、私はうーんと首をひねった。

どう考えても真っ赤な服を着た赤毛のプレイヤーがたくさんいるテイルとしか考えられない。


すると、私の思考を破るようにリョウ先輩が口を開いた。




『とにかく。大天使兵団、バードウォッチャーの集いとの空中戦はいいとして、火炎帝国との対戦は要注意だ。ヒマリ、シノ、エン。水・氷属性のお前たちが頼りだからな。ヒマリ、ウィルのレベル上げも頼んだぞ。』

『はい!』

『了解。』

『わかったよ。』






そういえばそんなことを言われたなぁ。

たぶんトッププレイヤーのミユウちゃんも言うんだから、火炎帝国はそんなに強いテイルなんだ。




「ありがとう!ミユウちゃん。」

「ううん。テイル部門、頑張ってね。」

「はーい!」




入退場口でミユウちゃんと別れ、私は観客席に戻る。




「おかえり。何してたの?」

「ミユウちゃんとお話だよ!」




シノがいつもの仏頂面で聞いてくるから、いつもの笑顔で答えておいた。

そういうと、シノは「ふうん」と言って、興味を無くしたように元に向き直った。


ティスイとレゥイと遊んでいたウィルとララも帰ってきて、パーティ部門が始まった。




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