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水無月学園生徒会は、どんな世界でも最強なのです!  作者: 葉月 都
第五章 水無月学園生徒会は、アリーナをも征服します
57/68

57,アリーナ、開催です!

いよいよアリーナ編です!お待たせしました!




「あ、きたきた。おーい、ヒマリーん!」

「うわ、ミネト………」




待ち合わせの噴水広場に行くと、嫌な奴の顔が一番に目に入り、私はぴくりと眉根があがる。

いやいやいや、今は気にしない気にしない!




「ちょっとヒマリん、今むっちゃいやそうな顔したでしょ!」

「え、気のせいじゃない?」

「ちょっとそこ!喧嘩しないで!」




慌ててヒナタくんが止めに入ってくる。

律儀なのはかわいいけど、こんなやつのために間に入らなくてもいいのに………


よしよし、とつい頭をなでていると、ヒナタ君が「ちょっと!」と言って少し怒った顔を見せた。

今のヒナタ君はケモ耳状態なので、なんだか保護者欲を掻き立てられる。私も獣人になればよかったかなぁ…………

そんなことを隣を歩くシノにぼやいたら、なぜかむっちゃ睨まれた。




今私達が向かっているのは、始まりの国の王城の真横にあるバトルコロシアム。

そこで開会式兼エキシビションマッチが行われる。

しかも、それにナイトが出ることになったんだから見に行かねばならない。

もうナイトはすでに会場に行っているらしく、待ち合わせの場所にはナイトを除いた七人がそろっていた。




「そういえば、ナイトと対戦するのって誰なの?」

「あー………誰だっけ?シノ知ってる?」

「…………ナイトと同じ、かなりのトッププレイヤー。Lvもナイトぐらいだった気がする。」




………えぇっと、そういうことじゃなくて。




「な、名前は?」

「さあ。」




シノがぷいっ、とそっぽを向く。

知らないんだ…………誰だろう。


すると、前を歩いていたリョウ先輩がくるりと首だけ振り返って言った。




「ゲイル、だ。」

「へ?」

「………ナイトの対戦相手。【ゲイル】という名だそうだ。」



あ、ああ………



「ありがとう、ございます……?」

「ああ。」




変装用のメガネをくいっと上げて、リョウ先輩は前に向き直り再びエン先輩と話し出した。

げいる………どっかで聞いたことあるような?気のせいかな。

召喚中のウィルとララに聞いてみるけど、二人とも首を傾げた。


げいる……げいる………うーん、なんだっけ?


コロシアムに行くまでの間、私の思考は謎の「ゲイル」というプレイヤーに埋め尽くされていた。



ーーーーー



いつの間にか私は王宮の敷地内に足を踏み入れていた。

たくさんの人が王宮に足を踏み入れていて、その波に流されながら私はコロシアムへと向かう。


始まりの国の王城はデ○ズニーのシン◯レラ城みたいな形をしていて、真っ白な壁に真っ赤な三角屋根のお城だった。もう本当にあの夢の国にいるみたいで、危うくこれがゲームだと忘れかけてしまう。




「ヒマリ、離れないで。はぐれたら見つけられないし。」

「あ、ごめん………」




人ごみの中からシノが顔を出して私の目の前に手を出す。

そっか、こんなに人がいたら迷子になっちゃうもんね。

私はその手を握り、笑顔で言った。




「ありがとっ!」

「…………」




すると、シノが口を開けてフリーズする。

被っているフードもずれてしまいそうな雰囲気になり、私は笑顔を半分に落として首を傾げた。


と、突然、シノが手を放して背後に素早く回り、フードパーカのフードをばっ、と私にかぶせてきた。




「ちょ、な、なにするのっ?」

「……………ちっ、厄介な………」




ちょっと怒ったようなシノの声がフード越しの耳元で聞こえてくる。

えっ、えっ、えええ?な、何で怒ってるの?


突然のことにゲイルのことなんてすっかり忘れて頭が混乱する。


あわあわとしている私の手を再び取って、シノはずんずんと人込みをかき分けてコロシアムのほうへと向かう。




「し、シノ?」

「……………いいから、ちょっと黙ってて。」




たいそうご立腹みたい。

…………Why?


そんな私とシノの姿を、肩に乗ったウィルとララが楽しそうに見つめていたのを私は知らなかった。

まあ色々あったけど、私達はコロシアムに到着した。

かなり早く着いたリョウ先輩とエン先輩がもう受付を済ませてくれていたみたいで、手をつないでやってきた私達を一瞥してから、小さなビニール製の水色のリストバンドを渡してくれた。




「これって何ですか?」

「うーん……身分証明書みたいな感じかな?あとはGPS。」

「じ、GPSっ?」




エン先輩の口からかなり物騒な単語が聞こえる。

ってことは、監視されるみたいな感じなの!?こわっ!


と思いきや、どうやら違うらしい。




「あはは、ヒマリん大げさだねぇ。バトルの時に実況カメラが動きやすくするのと、観客に見せるバトルマップの位置情報を知るだけだから大丈夫っ♪」

「………ミネトキモいからその語尾の音符マークだけはやめて。」




べーっと舌を出してミネトを牽制しながら、私は一応心の中でお礼を言っておいた。

まあでもそういうことなら大丈夫だね。確かに位置情報は大切だし。


そんなことを考えていると、リョウ先輩の集合の声が聞こえたので私はそっちに向かった。








「………ソロの初撃部門、ミユウ。」

「………ミユウ様ですね。受付完了いたしました。こちらソロ初撃部門のリストバンドになります。」

「ありがと。」




受付NPCが人間そっくりの笑顔を見せて、ロリータ少女に赤いリストバンドを手渡す。

そのリストバンドを自然な所作で右手首につけると、少女はすたすたと大理石でできた白いコロシアムの中へと入っていった。




「………………。」




だが、少し立ち止まって、どこか感慨深げな視線で青空を一瞥する。

目を細め、少女の緑色の瞳に青みがかかる。

少女の唇が少し緩み、顔を前に戻す。笑顔は一瞬で消えていた。


今度こそ、ミユウはコロシアムの中へ入っていった。










『レディース・エーンド・ジェントルメェーンッ!!!全世界生中継の第三回PVPバトルアリーナコロシアムの開催だぁぁっ!司会はファンツリ一の情報屋、ルキアルでお送りしまぁすっ!』




ハイテンションの男性の声で始まった第三回PVPバトルアリーナコロシアム、通称アリーナは、大歓声の中、ものすごい盛り上がりを見せていた。

ルキアル……その名前もどっかで聞いたことがあるような気がするけど………ま、いっか。


私達は、ヒロ君が取っておいてくれた前側の席で中央のグラウンドを見ていた。




『それではまず初めにッ、恒例エキシビジョンマッチの時間だぁっ!今回もファンツリの前線を走る二人のトッププレイヤーに来てもらったぜっ!まずは我らが氷騎士、幻想騎士団のナぁイトォッ!!!!』


「「「「「Yeahhhhhhhhhh!!!!!」」」」」

「「「「「キャァァァァァアァァァ!!!!」」」」」




先ほどにも勝る大きな大歓声に、コロシアムの熱気が高まる。

奥の出口から、その声に反応して人影が出てくる。


なぜか藍色の袴を着るという和装ファッション。かと思いきやその上の蒼いフードケープが風になびく。

どういうファッションセンスなんだと突っ込みたくなるけれど、今言っても何にも変わらないから押し黙る。

深紫色の髪に灰色の獣耳が映えて、危うくこれが奈糸先輩の本来の姿かっ、と思ってしまった。

相変わらずの鉄仮面で、黄色い声援も無視して、まっすぐ前に進む。


真ん中少し手前で立ち止まると、ナイトはちらりとこちらを向いた。

少し笑ってくれたような気がするけれど、すぐに前に向き直ってしまったのでよく分からなかったけど。



すると、またあのルキアルとかいうプレイヤーのアナウンスが入る。




『そしてぇ、対戦相手はっ!!!大太刀の使い手、シーカーズのゲぇイルぅっっっっ!!!!』


「「「「「「Yeahhhhhhhhhhhhhhhh!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」




再びコロシアムを大歓声が包み、私達がいる方の出口から、あのゲイルというプレイヤーが出てきた。


硬そうな銀の鎧に身を包み、背中には赤い鞘で包んだ大太刀。そして真っ赤な髪を髪になびかせて堂々たる雰囲気を纏って闊歩する。

横顔と、その右側の刀傷を見て私の記憶の中にぽんっと浮かぶものがあった。




「あああああ!!あの時のっ!!」




思わず大声を上げてゲイルを指さす。

隣に座っていたシノとヒナタ君がびっくりした表情で私を見るけど気にしない。


そうだ…………そうだそうだ!あの時の、あいつだ!

私が初めてギルドに行って登録しようとしたとき絡んできたあの三人組の真ん中のやつ!私の初めての経験値になったやつじゃない!


どうやら私の叫びは歓声に紛れて聞こえなかったみたいだけど、肩に乗っていたウィルとララには、私の叫びであいつのことを思い出したみたいだった。




『ひ、ヒマリ様!あいつって、あの時のPVPのやつですよね!』

『あいつ生きてたのか………今すぐキルってこよう!』

「ちょ、ちょっと二人とも早まらないで。それに、ナイトが打ちのめしてくれるからっ!」




ゔーゔーとうなる二人を押しとどめ、私は席に座りなおす。

そっか………あの人ってトッププレイヤーだったんだ。PVPの時はレベル見れなかったから分かんなかったよ。




『さぁーって!!二人が揃ったところでエキシビジョンマッチの始まりだぁっ!!!ルールは個人の初撃部門と同じっ!どちらかがHPを1でも削ったら勝利だっっっ!!!さあ、武器を構えろぉっ………』




その言葉に、二人が鞘から武器を抜く。

ナイトはあの時進化させた刀、ゲイルは大きな銀の大太刀だ。

二人を纏う空気がひんやりとする。







『Ledy………Go!!!!!』







その声と同時に、二人がコマンドボードを操作する。

一瞬早くゲイルが操作を終え、大太刀に真っ赤に燃え盛る光を灯す。

そして、すばやい動きでナイトに大太刀を振り被る。



次の瞬間、ゲイルが後方へ吹き飛ばされた。

そして、5mほど下がらせられたゲイルの目の前に、冷徹な光を宿したナイトが迫る。

まさに鬼刃のごとき刃がゲイルの首元に迫り、無慈悲にもナイトは下から上へと斜めに彼の体を斬る。



コロシアムの天井に映し出された二人のHP,MPのうち、ゲイルのHPが半分にまで減る。

すると、ゲイルの表示が光を失い灰色になる。


代わりに、二人の表示の中央に、「ナイト、WIN!」の金文字が躍る。

一拍おいて、会場がまたもや大歓声の渦に飲み込まれた。





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