表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水無月学園生徒会は、どんな世界でも最強なのです!  作者: 葉月 都
第四章 水無月学園生徒会は、平凡なる毎日を所望しています
56/68

56,闇夜に紛れて

やや短めです




「お待ちしておりました、姫………貴方様のことを、今までいくら探したか………」

「えっ、えっ、えぇ…………?」




突然の急展開に、私の思考は処理が追いつかない。

ひ、姫?!この人もしかしてやばい人なの!?それとも何かのイベント!?


すると、その男の人はひざまずいたまま自己紹介をしてくれた。




「覚えておりませんか、姫?貴方様の騎士、ラオでございますよ?」

「き、騎士ぃ!?」




思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

もうクエストとしか思えないけど、クエストの表示が全然出てこない。




「お父上のクローレン殿下もたいそうお待ちしております。どうぞ、我らの国へお帰りください。」




えっと、これは誰かと私を間違えてるのかな………?

慌てて誤解を解こうと口を開きかけた私を遮るように、ようやくクエスト表示が出てきた。





【魔族の姫】

種類:シークレットクエスト

適正レベル:32

クエストランク:A


〈クエスト内容〉

魔の国・デーモルガの姫 ミオナが行方不明だ。魔の国の騎士のラオは貴方を姫だと勘違いしているようだ。本物の姫をラオの元に連れてくれば勘違いを正せるだろう。



〈クリアボーナス〉

・5000G

・魔国の王章





…………やっぱりクエストか。

だけど、思えばもう数時間もすればアリーナが始まる。忘れかけるけど今私達がここにいるのはそのための練習だし………これって保留にできないのかな?


少し探してみると、左上にバツ印があった。試しに押してみる。すると、ラオさんが興味を失ったように再びその辺りでさまよい始めた。あ、これでまたラオさんに話しかければまたクエストができる感じかぁ。



ちょっと悪い気もするけど、私はラオさんの後ろ姿に声を出さずに苦笑いを向けた。

今まで木の陰で見ていたウィルとララが、ラオさんから離れて戻ってきた私に飛びついた。




『ヒマリ様っ!!大丈夫ですか!?』

『ヒマリ様ぁぁぁぁぁぁ!!!』




むぎゅっと抱き着いてきた二人の頭をよしよしと撫でてあげながら、私は言った。




「大丈夫だよ。ちょっと頼み事されそうになっただけだよ。」

『ええええええ!?ま、まさか奴隷に……!?』

「なんでそんな考えに至るのよ………一応VRMMOゲームだし!」

『ぶ、いあーる、えむえむおー?なんですか、それ…………?』

「あ、それは気にしなくていいよ。」




あはは、と笑いながらラオさんに背を向けて、私とウィルとララはモンスター狩りへと向かった。

ララがこっそりラオさんにあっかんべーと舌を出していたことに気が付かずに。



ーーーーー



しばらく探索をしていると、数十体ほどのクランモンキーと遭遇した。

クランモンキーは水属性の藍色のサルで、HPはそう高くないけど知能がある。




『では、ヒマリ様は後方支援お願いしますね!』

『行ってきまーす!』

「うん!よろしくねー」




ホントは私が前線に出て二人は後方支援っていう逆の立場なんだけど………二人には感謝しかないよ。

小さく微笑み、私は先にコマンドボードを動かしていく。


使うのは光魔法【ライトベル】。幻を見せるスキルだ。二人の周りを幻影で覆い、クランモンキーに近づき奇襲をかける。

ウィルの【ウォーターボール】が当たって、クランモンキー達が動き出したのを見て、私は広範囲攻撃の【スター】を放つ。続けてウィルは【幻想弾幕】を発動させて、横と上からの連続攻撃が始まる。その間に、私は別の魔法を組み上げる。


かろうじて弾幕と星をよけてウィルに近づくクランモンキーもいたけれど、薄い黄色の結界がそれを阻む。ララの【聖光結界】だ。


次々にクランモンキーが倒れていき、三十匹くらいいた彼らはあっという間に殲滅され、残り五体となる。

だけど、次の瞬間、突然地面から電撃が走り、残りのクランモンキー達の動きを止めた。

精霊魔法【トラムタムス】。10秒間敵をスタンさせる罠魔法だ。

再び私はスターを放ち、すべてのクランモンキーを倒した。




『ナイスです、ヒマリ様!』

『ぐっじょぶ!』

「ありがとう、二人とも!じゃあ、もうちょっと奥にすすもっか。」

『『らじゃー!』』




びしっ、と敬礼した二人に敬礼を返し、再びフィールドへと戻っていった。




次に現れたのはたくさんの蜘蛛達。シャドウスパイダーというらしい。

もちろんその名の通り闇属性。赤い目がこっちを見ていてかなり恐怖を掻き立てる。


まず私が【ホーリーアーチャー】を放って、木陰に隠れている蜘蛛達を追い出す。

そのまま【スピリット】で妖精達を集めて捕まえる。真ん中に引きずり出したところでトラムタムスでスタンにさせて、【エレメントフェニックス】でとどめを刺す。


シャドウスパイダーは闇属性だから光魔法が効きやすい。今度は五分とたたずに終了した。




「ええっと……これでいいのかな?ララに【ヒール】。」

『わっ!ヒマリ様からのヒール気持ちい!ありがとう!!』

「あはは、お礼を言われるほどでもないんだけど…………」




少し蜘蛛に引っかかれたらしいララを初めてのヒールで治してあげると、予想外に喜んでもらえた。

おかげで光魔法はLv6、つまりMAXになった。精霊魔法はもうちょっとらしい。


そうして私が新しく取得したのが




『それにしても暗くなったねー。』

「もう実質深夜だもんね。」

『でも、さすが閃光魔法【ライトフラッシュ】です。』




私の横に浮いている光球は、光魔法の上位進化【閃光魔法】のLv1の魔法、ライトフラッシュだ。

ライトでも十分な光量はあったけど、ライトフラッシュは半径30mを照らすことができるというのだから驚きだ。視野は十分確保できるし、突然の光に魔物が全然寄ってこない。まさに一石二鳥だっ♪




「じゃあ、このままボス戦いっちゃう?」

『うんうん、そうしよぉ!』

『………………残念ながら、それは無理そうです。』




えいえいおー!と拳を空に掲げた私とララに、ウィルが申し訳なさそうに口をはさんだ。

そして、私にステータスウィンドウを開かせて、時間のところを指さした。




『残り二時間ほどでアリーナの受付が始まります。皆さんとの集合時間は受付時間の五分前ですよね?さすがにボスエリアまで行っていたら間に合いません。』

「わわ、もうそんな時間だったの!?」




リアルタイムだと午後十時少し前。こっちの世界でももう深夜深い。

戻るのに多少時間がかかることも含めると、ウィルの言う通りになる。

うぅ………戦ってみたかったのに…………って、私はいつの間にこんな戦闘狂になったのよ!




「と、とりあえず、もう少しで精霊魔法のスキルが上がるから、ギリまで特訓しよ!」

『了解です、ヒマリ様!』

『らじゃー!』




二人の元気な声を聞いて、私は小さく笑った。そして、明かりに使用していたライトフラッシュの光球を、さっきから気になっていた魔力反応のある方へひょいっと投げる。断末魔が小さく聞こえ、ウィルとララがひきつった笑顔でフリーズした。


あ、あれ?なんか変なことしたかな?




『…………だ、大胆なことするね、ヒマリ様…………』

『わあ…一気に暗くなっちゃいましたね…………』




二人の棒読みともとれるセリフを聞きながら、私は小さく笑う。

別に、ボードを改めて動かすのが面倒だったからそうしたんだけど…………なんで驚かれてるのかな?


光が森へ沈み、部屋にいるときほどの光で照らされていた木々が一瞬にして暗闇に溶け込む。うっすらとかろうじて月の光で辺りが見える程度になり、私は少しだけ目を細めた。

ララが光操作で小さな明かりを作り、(私がライトフラッシュを使っていたのは、閃光魔法のお試し)魔力感知で魔獣を探す。


すっかり慣れてしまった夜の戦闘は、精霊魔法のスキルレベルが5になったところで終了した。



ラオさんのイベントはまた今度になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ