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水無月学園生徒会は、どんな世界でも最強なのです!  作者: 葉月 都
第四章 水無月学園生徒会は、平凡なる毎日を所望しています
47/68

47,どちらを選ぶ?



「まず、経験値ダンジョンっていうのは、その名の通り、通常のダンジョンやバトルよりも多くの経験値がもらえる特殊ダンジョンだよ。月曜日の決まった時間にそれぞれの国のフィールド一か所にに一つ出現するんだけど………」




すると、そこまで言ってヒナタ君は言いにくそうに言葉を切った。

苦笑いともとれるその笑いに、私は首をかしげながら言った。




「えと……どうしたの?」

「…………それがさ、それぞれの国で一か所しか現れないんだけど、経験値ダンジョンに入れるの、一か所につき二人までなんだよね。」

「…え?ええええええ?!」

『聞いたことがあります……魂の宿る岩屋の祠の中には、選ばれし二名の旅人のみが入れるそうです。それは、大昔に多くの旅人がその岩屋に入り宝物を持ち帰ろうとするが、とある魔法道具を取り合いになってそのほとんどの旅人が死んでしまったという伝説があるからだそうです。

他にも、その岩屋を護る守護者ガーディアンである大きな金色の龍が少しずつ人間を捕食し、じわじわと世界を侵略しているとか……………』

「ひっ!?怖いこと言わないでよウィル…っ!」




ニタアッと気味の悪い笑顔で伝説を語っていくウィルに、私はストップをかける。

なんだかほんとにそんなことがあったっぽくて怖いよっ!


ぶるぶる、と私が震えていると、ヒナタ君が天使の笑顔で私の頭をなでた。




「なぁんてウィルちゃんは言ってるけど、経験値ダンジョンには実際にモンスター一匹倒してもらえる経験値の数十倍ぐらいの経験値があるらしいから、スキルスロットに制限かけたりするようなチート防止の運営側からすれば、目的はわかりやすいけどねっ。」

「あ、あ、そっか。一週間に一回だったり一か所につき二人しか入れないのも、チート防止なんだ。」

「うん♪さすがヒマリん!」




茶目っ気たっぷりにウィンクをすると、ヒナタ君はすっ、とカウンター席から立ち上がってこう言った。




「今回の予測ではエルフェラは東フィールドに出現するらしいよ。気になったら行ってみたら?ヒマリんの実力なら絶対突破できるからさ!じゃ!!」




床に置いていた大きなリュックを背負いなおすと、ヒナタ君はバイバーイと手を振りながらギルドを出て行った。楽しそうだな、ヒナタ君。


消えていく鼻歌を聞きながら、私はウィルに話しかけた。




「ウィル?結局どうしよっか?ヒナタ君は東フィールドがいいよって言ってたけど……」

『そうですね……やはり、ヒマリ様の実力に合ったフィールドがいいかと思いますが……初見で東フィールドまで足を延ばすのはどうなんでしょうね…………』

『えー、ヒマリ様なら東フィールドぐらい大丈夫そうな気がするなっ!』




今まで黙りこくってティスイと遊んでいたララが、突然会話に入ってきた。

それに、ティスイもララの言葉に同意するかのように小さく吠えた。


可愛いなぁっ!

ぱたぱたと緑色の羽を動かしてて、すごく癒される!




『ヒマリ様は私達の力をもってしなくても、十分素材がいいんだから全然大丈夫だよ!それに、精霊魔法の回復系統はまあまあスキルレベルを上げないと所得出来ないからさ。』

『確かにそうですが……どうしますか?』

「うーん………でも、さすがにむちゃは出来ないよ。南フィールドにいこっ!」

「GAAAA!」




進路を決定した私達は、談笑しながらギルドを出ていく。


…………なんだか、さっきからすごく視線を感じる気がする。

実を言えば、ギルドでヒナタ君とお話ししているときも、私のことをじっと見る視線があることに気が付いていた。でも、ギルドは基本、生産系スキル以外は使っちゃだめだから、魔力感知も使えなかった。


だけど今度こそ、私は気づかれないようにコマンドボードを操作して魔力感知を発動させる。

すると、私の目に映る風景が一瞬にして切り替わった。



目の前に映るのはウィルとララとティスイのマナ反応。

藍色の世界で、私は背後10mほど後ろに、こちらを見つめる人影を感じた。


…………あの人か。




「ウィル、ちょっとごめんね?」

『へ?ヒマリ様!?』




ウィルにぼそりと呟くと、ティスイに向かって指示を出す。




「ティスイ。私に向かって【疾風】」

「GAAAA!」




ティスイの羽から大きな風が巻き起こり、私の体が押される。

体制を整えながら、私はマナの影に向かって移動した。



ピロリン♪

支援スキル【魔法移動】を取得しました



…………よし!

それについてはまた後でっ!




「こんにちは!何か御用ですか?」

「?!」




とりあえずログを意識の外へ追い出して、私は前を見る。


そこにいたのは、赤髪エルフの青年だった。

オレンジ色のマントを羽織って、頭にはシルクハットを被っている。


突然現れた私に驚いて、建物の壁にもたれかかりながら腰を抜かせていた。

私に害を向けてくる視線はしょっちゅうだけど、今日のこの人の視線は他の人とは少し違う。

そう思って、私は彼に話しかけた。




「ずっと、私たちのことつけてますよね?どうされたんですか?」

「え、あ、いやー、なんでもないですね。はい。…………」




あれ?急に黙っちゃった。

大丈夫かな?


心配になって声をかけようとすると、男の人はすごい勢いで立ち上がると、「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁ!!!」と物凄い叫び声を上げてどこかへ走り去っていってしまった。




『ひ、ヒマリ様!大丈夫ですかっ!?』

「うん。なんだかつけられてたから話しかけたんだけど、逃げられちゃった。」

『え?なに平然と言ってるのヒマリ様!つけられてるって……なんで言ってくれなかったの!?』

『そうですよ!ヒマリ様に危害を加える奴らには制裁を加えなければなりませんからっ!』




んんん?今ちょっと物騒な言葉が聞こえたような気がするけど?

とりあえず、私はスルーすることにした。



そんな私達の姿を、魔力感知でも察知できなかった謎の真っ白なフードを目深に被った少女が見ているのにも気が付かず、私と精霊たちは南門へと向かった。




「She'll my "hero"……………」





ーーーーー


カードリーダーに冒険者カードをかざすと、いつものように城門が音を立てて開いていく。

奥に広がる世界は、始まりの国と違い、森から古城がそびえたつ古都市に変化していた。




『森よりも障害物が多いですね。奇襲に注意しましょう。』

「うん。了解!」




びしっ、とウィルに向かって敬礼をすると、私は魔力感知を発動させて辺りのモンスターの索敵をする。


ふむふむ………水と闇属性のモンスターが200m範囲内に計六体。レベルの平均は約Lv10前後、か。それなら全然大丈夫だね!



と、思いながらも、私の現在のパーティにはいささか問題があった。

もちろん、レベルの問題じゃない。


それは、攻撃種のこと。


私は、この通り精霊術師、遠距離系。

ウィルやララは近距離もできるけど後方支援派。


だから、近距離に行けるのがティスイだけ。本来、支援・遠距離よりも近距離プレイヤーが多いほうがいいパーティ戦の構成としては(私的には)最悪だった。




どうしよう……………




うーん、と考えてみるけれど私に近距離系の武器はない。

今度、シノとかに教えてもらおうかなー、とかと呑気に考えながら(まず、近距離やだなと思いつつ)私は三人に指示を出した。



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