45,これが日常的になったらダメなのにーっ!
さあ!アリーナに向けて頑張りましょう!(私が)
「ヒマリ………大丈夫?」
「……う………ん……」
ボスを討伐してからの記憶が、私にはほとんど残っていない。
否、ない。ほんとに、ない。
というか気が付いたらベットで寝ていて、起きたらベット脇でシノが寝ていた。
重い頭痛と体のだるさに、私は一度セーブをしてからもう一度ベットに潜り込む。
「一回、落ちたら?たぶん、現実の体にかなり負担かかってる。」
「………うん。わかった。」
シノの勧めで、私は一度ログアウトしてきた。
そして、実際、現実での時間がたったの一、二時間しか経っていないことが、部屋の中で目覚めて時計を目視し気が付いた。
な、なんだかふわふわした気分………頭の中の時間と実際の時間が合わな過ぎて不思議な感じだなぁ………。
外はもう夕暮れで、だいぶ日が沈んでいる。
日付は変わっていなくて、まだ食堂が開いている時刻だったけど、私は金庫くらいの大きさの冷蔵庫から鮭おにぎりを取り出して胃につめる。
少しだけ外の空気を吸いに窓を開けて空気の入れ替えをしてから、私は再びヘッドギアを被る。
「Fantastic Treeログイン!ID【向日葵】」
私の意識は、再びVR世界へと吸い込まれていった。
ーーーーー
私の仮想体が目を覚ますと、そばにいたシノの姿が消えていた。
きっと私がログアウトしてから、シノもログアウトしたのだろう。
私はゆっくりと起き上がると、グランドクエストのログを確認する。
と言っても、持ちものに新規登録されたアイテムを確認するだけなんだけど。
・精霊騎士の鎧×1
・精霊騎士の靴×2
・神殿の欠片×4
・世界樹の滴×1
・霊鉄のブレスレット×1
・世界樹の石盤〈Ⅲ〉×1
・精霊石×50
・50000G
………うーん。
謎アイテムばっかりだなぁ。
プレゼントボックスにも⑤のマークがついているから、そっちも確認してみる。
【プレゼントボックス】
・光の帽子×1
(初心者クエスト1・魔法を一つ上位進化させよう!の達成報酬)
・光の杖×1
(初心者クエスト2・クエストを二回クリアしよう!の達成報酬)
・光のローブ×1
(初心者クエスト3・二日連続でログインしよう!の達成報酬)
・精霊石×10
(初心者クエストオールクリアの報酬)
・絆の石×20、精霊草×10
(グランドクエストⅠのクリア報酬)
あー……………
ダメだこりゃ……………
あいたたた、と頭を抱えながら、私は一斉受取をする。
取りあえず、初心者クエストがいつの間にか終わってたんだね。まったく通知に気が付かなかった……。
装備かあ……グランドクエストのアイテム見た時も思ったけど、今のでも十分だしいいかなぁ。
あ、いや……でも、新しいのも欲しいから久しぶりにリトルドールにいってみよっと。
私はこの日初めて通常パラメータの装備を見ることができた気がした。
ただ、精霊草とかはよくわかんないから、詳細を見ることにした。
【精霊草】
評価:S
効果:HP200回復、精霊薬術使用で回復値+200
備考:精霊の森にのみ自生している魔力を秘めた薬草。精霊姫の加護を受けている。
【精霊騎士の鎧】
評価:S
効果:AGL-50、ATK+150
備考:精霊神殿を守る聖騎士のみに与えられる純白の鎧。その硬さは黒曜石や岩盤をも上回る。
【精霊騎士の靴】
評価:S
効果:AGL+100、MP回復率アップ
備考:精霊神殿を守る聖騎士のみに与えられる純白の靴。その速さは天を一瞬で駆け抜けられるほど。
【神殿の欠片】
評価:A+
効果:薬術スキル使用時、MP回復率アップ
備考:マナを秘めている、神聖なる神殿の一部が欠けて小さくなったもの。
【世界樹の滴】
評価:S+
効果:滴に触れた味方のHPを全回復させる
備考:100年に一度しか現れない、世界樹から垂れる不老不死の力を持つ露。悪しき心を浄化する力もある。
【霊鉄のブレスレット】
評価:A
効果:(付与により効果をつけることができる)
備考:冥界の職人が鍛え上げたブレスレット。霊鉄という希少な金属を使用している。
【世界樹の石盤〈Ⅲ〉】
評価:S+
備考:六枚に分断された石盤の一部。六枚すべてを集めることにより、何かが起こる………
…………私は、取りあえずすべてのアイテムを保護ロックしておくことにした。
こんなアイテム………売ったらかなりのお金になるんだろうけれど、残しておかないとまずい気がする。
グランドクエスト後のヒマリのステータス
◇ ◆ ◇ ◆
ヒマリ LV24
種族 ガブリエル・水精霊
職業 精霊術師
属性 水・光
HP 500
MP 320
SP 200
ATK 620
DEF 230
INT 180
DEX 150
AGL 240
称号 逆転・精霊姫・ボスを脅かす者・破壊の姫
スキル
魔法:水魔法≪LvMAX≫、鏡魔法≪Lv4≫、光魔法≪Lv5≫、精霊魔法≪Lv2≫
生産:精霊薬術≪Lv2≫
支援:光の神の加護≪Lv-≫、魔力感知≪Lv-≫
特殊:水操作、殺気≪Lv-≫、破壊の力≪Lv-≫
光精霊・水精霊との契約
◇ ◆ ◇ ◆
ーーーーー
『ヒマリ様っ!おはようございます!』
『おはよー!ヒマリ様!』
「うん、おはよ!ウィル、ララ。」
次の日(帰ってきた少し後)
テイルの一階で、私はウィルとララを呼び出した。
水色と黄色の魔法陣から現れた二人は、いつもと変わらない笑顔で私に抱き着いてきた。
「へー……すごい仲良くなってるね。」
「そうなんですよー!最高の相棒ですっ!」
一階には、ちょうど竜の国から帰ってきたナイト先輩がいた。
皆バラバラになって、アリーナに向けてレベル上げをしているみたい。
………というか、完璧にアリーナのこと忘れてた。
「で、ヒマリは今日は何するの?」
「んーと……取りあえずリトルドールで新しい装備を買ってからレベル上げをしようかと。」
「それなら、エルフェラとか行ってきたら?」
ピーン!
私の脳内の豆電球が光り輝く。
そっか!そういえば、私のレベル的にもうエルフの国行けるじゃん!
しかも、魔の国にもいけるよね?やったあ!新エリアに行けるっ!
私がおおお、と感動していると、ナイト先輩が何かを私に手渡してきた。
「じゃあ、ついでにティスイと触れ合ってきなよ。アリーナまでに仲良くなってきて。」
それは、一度だけ見たことがある小さな緑色のドラゴンだった。
ふわぁ!やっぱりかわいい!モフモフしたいっ!
そこまでモフラーではない私だけど、現実に存在しない、精霊やドラゴンはすごく魅力的な存在。
パタパタと小さな羽を動かして私の方に止まると、ティスイは「KUAAA!」と小さく吠えた。
「分かりました!では、行ってきますね!」
ナイト先輩に向けて小さく敬礼をすると、私は二人と一匹とともにテイルを飛び出した。
ピロリン♪
契約獣・ウインズドラゴンがパーティに加わりました
よしよし。
これでみんな戦えるね!
ログを横目で確認して、私はリトルドールへと向かう。
もちろん、フードを被るのも忘れずに。
噴水広場を抜けて、路地裏を通って少し行くと、洋風なこじんまりとしたお店が現れる。
カランコロン、と鈴が鳴り、私はリトルドールにやってきた。
駆け込んできた私に驚いたように、リユさんの持っていた針が空を舞う。
「リユさん!お久しぶりです!」
「っっ?!ひ、ヒマリか………駆け込んできたら危ないでしょ………」
お店の中には二、三人ほどのプレイヤーがいて、駆け込んできた私を見てかなり驚いていたみたいだけどすぐに装備選びに戻っていったようだった。
「えへへ、ごめんなさい………また装備を買いに来ました!」
「ふうん、朝から元気ねぇ…………じゃ、自由に見てってね。」
「はい。ありがとうございます!」
再び刺繍を始めたリユさんに一礼してから、私は装備を見に行った。
そんな私の姿を、店の中にいたプレイヤーのうちの一人が驚いたように凝視していたのに気が付かずに……………。
「あれって…………もしかして、【天使姫】?」




