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水無月学園生徒会は、どんな世界でも最強なのです!  作者: 葉月 都
第四章 水無月学園生徒会は、平凡なる毎日を所望しています
44/68

44,グランドクエストⅤー破壊神ー


また範囲攻撃……今度はどこ?

ボスが範囲攻撃の構えを取ったのをみそめ、私はセーフティゾーンを探す。

でも、今回は今私がいるところよりかなり遠い。


………っ、急がなきゃっ…………!


私は攻撃を一旦中断し、全速力で走る。

でも、ゾーンに入る前に、ボスの溜めが終了してしまった。

ちょ、速くない?!



「ヒマリ!早く!!」



シノの声が聞こえるけれど、私、頑張って走ってるんだって!!

白い光の柱が、私を包み込もうと襲い掛かってくる。


うう、熱い熱い!


HPが減っていっているのが、バーを見なくても分かる。

ズサササーーーー!と見事にスライディングを決めて、私はセーフティゾーンへ滑り込んだ。




『ひ、ヒマリ様……大丈夫ですか?』

「うん………ギリギリ。」

「危なかったな。」




私の残りHPは48。

たちまちウィルの治癒魔法で全回復してもらい、私はほっ、と息をついた。




「でも、そろそろ弱点とか見つけた方がいいよね。」

「だけど、あの分厚い甲冑をどうにかしないと、無理だろ。」




あの白い甲冑は、かなりのDEF値があるみたいで全然歯がたたない。

すると、ウィルとララがニッコリと笑って、私たちに告げた。




『それなら、見つけましたよ!』

『あの甲冑の弱点!!』


「「…………へ?」」




綺麗なVサインを私達に見せる二人は、すごく得意げな表情で楽しそうだった。


ーーーーー



「へえ。つまりは、背中にあるあの小さな切れ目に刀をぶっさせと。」

『はい!明らかに、あの部分だけDEFが弱いんですよ~。』

『しかも、魔法防御値じゃなくて物理防御値!シノ様の適材適所だよっ!』

「うーん、地味に文章がやばいよ、ララ…………」




二人の見せる幻影から、騎士の背後の姿を見る。

確かに、二人の言う通り、鎧の一部に僅かな亀裂が見える。




「チャンスは、次の範囲攻撃後、だな。」

「おっけ。じゃあ、援護任せて!」




幻影がふっ、と目の前から掻き消え、私とシノは顔を見合わせ頷きあう。

そして、ウィルとララにも指示を飛ばして柱の陰から出ていく。


そう。

あの甲冑さえはがせば!


白いステージを駆け回り、私達は範囲攻撃が来るのを待った。

でも、そこで私は異変に気が付いた。



なんで、あの範囲攻撃の後なのに、こんなにMP回復してるの?



ボスの横に表示されるHPバーとMPバー。

HPの緑のゲージは半分を切ってる。だけど、下側の青いMPバーはなぜか満タンになっていたのだ。



うーん、やっぱりグランドクエストのボスだからヤヴァイスキルを持ってるんだろーけど………あんなにMP回復して、なんかすごい技飛んできそうで怖いんだけど。




「シーノー!なんかMP回復してるからー、注意しててー!!」

「りょーかーい!」




遠くで了承の声が聞こえて、私は攻撃に集中することにした。

うーんと、ウィルとララの方にも援護向かわせよっか。


私はコマンド操作をしてスピリットを発動。

小さな青と黄色の妖精たちが、二人の元へと飛び立った。

ただし、少しだけシノの支援へと向かわせた。これで、体制は整ったね。



しばらくして。

大きな雄たけびを上げ、ボスが範囲攻撃の構えをして柱が五本とも光り輝く。


今度は速攻でセーフティゾーンに滑り込んで、弱点への攻撃のために魔法を待機状態にする。

ほぼ同時刻にシノとウィル、ワンテンポ遅れてララがやってきて、三人が改めて魔法を構築した。




「じゃあ、鎧がはがれた瞬間に魔法打ち込んで。たぶん、時間制限で復活しそうだから。」

『承知いたしました!』

『りょーかいっ!』

「うん、わか………っ、まずい!」




最後に返事しようとした私の視界に、背後にいるはずのあのボスの巨体とあの回復の露が入ってくる。


まさか、魔力感知の無意識発動?!

その、白黒ベースで魔力だけ色彩色になる視界に覚えがある私は、とっさに振り向いて右手を露に向ける。





私が命じない限り、タイムラグは発生しない。






掌が露に向いた瞬間。

はじけ飛ぶこともなく、露の存在自体が消えた。


数コンマおいて、シノの呆れ声がぽつりと聞こえた。




「お前は前衛の方が向いてる気がする。」




……………ごめん。

それだけは断る。


姿勢を元に戻した私は、ひねり出せるだけの精一杯の苦笑で三人の顔を見た。






ーーーーー



「………GO。」




ぽつりと呟き、駿馬の如き速さでボスの背後を取るシノ。

それにつくのはララ。私とウィルはそれぞれ反対側の柱の陰からいつでも魔法を使えるようにしている。


小さくシノの口が動き、氷に包まれた刀が後ろから突き立てられる。



大きな叫び声を上げて、ボスが片膝をつく。

上側の鎧がはがれ、白い筋肉質な体が姿を現す。




「【リティルドール】」




扇状に待機していた5つの火炎球が、ボスの身体めがけて飛んでいく。

追尾効果がないリティルドールは動いてる敵にはあまり使えないけど、動けない敵にはもってこい。


反対側からはウィルの幻想弾幕+スピリット達の弾幕×約50。


さらに追い打ちをかけるように、私は魔法を打つ。




「【エレメントフェニックス】、【バブルスラッシュ】!」




炎を纏う不死鳥と、泡の刃が飛んでいく。

シノもララも順調にHPを削っていく。


MPが少し回復したのを見て、私は支援系鏡魔法【ミラクト】で皆のDEF値を少しだけ上昇させる。

ボスのHPゲージがオレンジになり……黄色になり……そして、赤色に染まった。

魔力感知を発動させていた私だけが、その異変にまた、気が付くことができた。




このマナ……物理攻撃じゃないし、魔法攻撃のマナでもないような…………

!!!!マズイ!!!!


一つの可能性を導き出した私は、全線で戦うララに大声で叫んだ。




「っララ!!全員に聖光結界!!」

『………へっ!?』


GRAAAAA!!!!!!




ま、ずい!

大出力のマナの放出。そんなのくらったらひとたまりもない。


一か八か。


私は、迫りくるマナの波に立ちふさがり、右手を彼に向けた。














代償付特殊攻撃魔法【デストラクション・パワー】。またの名を【破壊神】














そこには、ヒマリしかいなかった。














ーーーーー



「ヒマリ!ヒマリっ!」

「………………あっ、ぶなかったー………」




だらりと垂れ下がった彼女の右手は力なくシノの服をかすった。

ヒマリの残りHPは僅か【 1 】。


ウィルとララも二人のもとに駆け付け、ウィルは治癒魔法を発動。

跡形もなくボスの姿が消え去った白いフィールドには、ぽっかりと空いた天井から見える空に花火が上がっていた。



四人のパーティは、いくつも流れるログを見ることなく、ヒマリの体を抱えて開ききった純白の石扉を開けて、光に吸い込まれていった。




【グランドクエストⅠ・古の洞窟と精霊神殿】CREAR







ーーーーー




少女は、大きく息をついた。

画面に大きく表示されるクリアの文字と、なにもなくなってしまったフィールド。


ほっ、としたように浮かべる笑顔は慈愛の感情そのものだった。




「………………よかったぁ……………」




半分泣きそうな表情を手でごしごしと消し、彼女は今まで見ていた画面を閉じて別のパソコンの前に移る。

英文字と数字の羅列が彼女を包み込み、真ん中の大きなPCの中に、やや古ぼけた闘技場を中心とする広大なマップが組み上げられていく。



【ARENA専用MAP】



それが、今少女が操作するファイルの名前だった。




おーわああああったあああ!

………と絶叫する葉月でした。

長かった……うん。


次からは、アリーナへ向けて修行だ!(たぶん)


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