4,生命と死の神秘的な力
蒼と湊が同級生だった事実に改めて気が付いた私。
「ふん。いいだろう。やろうではないか。」
(((((((えっ!?マジで!?)))))))
あまりの展開の速さに、提案者含め他七人が絶句する。
日葵の予想では、「ふむ…………それで?」とか、やるにしても二つ返事ぐらいかなー、と思っていたからだ。
「だが、残念だったな、望月。
お前と真広以外は、全員やっているぞ、このゲーム。」
「「えええええええええええええ?!」」
日葵は生徒会室をぐるりと見まわし、もう一度叫ぶ。
そんな日葵に対し、水樹は、「そうなんですね!」と天使の笑顔で言う。
「水樹さん…………………驚かないんですね。」
「え?なんで?」
きょとんと、子犬みたいな顔で翔を見る水樹。
「だって、人気のゲームなんでしょう?奈糸くんはともかく、皆がやっててもおかしくないって。」
「…………………………図星なのがくやしい。」
「ってか、なんで僕はともかく、なんですか。」
水樹の無自覚発言に、翔と奈糸が突っ込む。
そこで、落ち着いた日葵が、涼雅に向かって頭を下げた。
「ありがとうございます!昼田先輩。」
「いや、構わん。親睦を深めるのも、悪くない。」
ふんっ、と不敵な笑みを浮かべる涼雅に、日葵は背中に冷や汗をかく。
あはははは……………と苦笑いしてから、今度は、水樹と奈糸と仲良さげに話す翔を、少し小バカにする目で見ながら、日葵は言った。
「…………………………でも、まっさか翔がプレイヤーだとは、ねぇ~~~」
「おい、こら、日葵。余計なお世話だバーカ」
「確か、シノくんってすごいLv上げてたしねー」
日葵と翔の口喧嘩に、小さく割り込んできたのは、生徒会会計員、陽河蓮である。
蓮は、生徒会の中で一番年下の中等部一年なのだが、まるで同級生のように日葵や翔、しかも、涼雅にまで接している。
「悪いか!面白かっただけだ。」
「翔らしい理由だね。でも、ゲームのし過ぎは体に毒だからなー」
「そういう蒼も、やってるでしょ、ファンツリ。」
「…………まぁね。」
湊の応戦に口をつぐむのは、生徒会運営委員、園崎蒼。
ミナガク生徒会のお父さん的存在で、料理・洗濯・掃除等、家事万能。
だが、とても過保護で世話焼きなのが玉に瑕だ。
日葵「じゃあ、これでみんなでプレイ出来ますね!よかったぁ」
水樹「僕は、今度の外出日に買ってくきますね。ちょうど、何か欲しいなーって思っていたので。」
翔「ま、ここは意外に規律もないし、ゆるゆるだからな。」
蓮「ぷっ………………シノくんの口から"ゆるゆる"とかいう単語が出てくるとかwww」
翔「うるせー!余計なお世話だ!」
涼雅「貴様ら、けんかはやめろ。」
蒼「……………どっかで聞いたことのあるセリフだな。」
湊「きのせーでしょ!」
奈糸「……………まだ、終わらないの?寮の最終入室時刻が迫ってきてるけど。」
7人「「「「「「「それを早く言えっ!」」」」」」言って!」
…………………………………。
なんやかんやで、いつも賑やかな水無月学園生徒会です。
その日の夜。
日葵は自分の部屋で、少し厚めの本を楽しそうに読んでいた。
俗に言う、攻略本である。
と言っても、ファンツリの攻略本は、ワールド内のモンスターの詳細やプレイヤーの種族・職業の詳細、ワールドの中のそれぞれの国のことについてしか載っておらず、あくまで「プレイヤー自身で自らを高める」ということをモットーとしているのだ。
「わ…………ごく稀に【精霊】っていう種族になれるんだ!しかも、最初に選んだ種族もちゃんと適用されて………………すごぉい!……………私なら、絶対【天使】がいいなぁ…………あ!それぞれの種族にも激レア種族があるんだ!まあ、ランダム配分だろうから、当たる確率低そうだけどー(笑)」
と、傍から見れば一人で笑いながらぶつぶつ言ってる変な人としかとれないが、日葵にとってはこの状況は至福のひと時でもあった。
そして、一時間ほど本を読みふけった後、日葵はそのままベットに潜り込み、わずか数秒で眠ってしまった。まるで、とある人気アニメのメガネのいじめられっこ主人公のようだ。
真っ暗闇の部屋の中、窓からわずかに指す月光が、日葵の右耳を照らす。
すやすやと眠る健やかな寝顔。
だが、その右耳につけられた銀色のイヤリングに刻まれた紋章の意味を知れば、誰もがみな、恐れおののくであろう。
楕円型のイヤリングに刻まれた模様。
魂を表す三日月の形、その真ん中には、霊・永遠を表す円。二つの模様の下には、物質の世界という意味を持つ十字。
この三つが重なり合う時、この形はある惑星のサインとなる。
それは…………………………………