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水無月学園生徒会は、どんな世界でも最強なのです!  作者: 葉月 都
第四章 水無月学園生徒会は、平凡なる毎日を所望しています
39/68

39,ヤマタノオロチと龍王子

このボス戦、夜中にしか現れないランダムなレアイベントボスです



ん…………


テイル【幻想騎士団】のホームの中にある自分の部屋で、私は覚醒した。

いつも通りベッドから起き上がると、半分ぼおっとした思考をリセットさせるために数秒その場にとどまる。


………あー……何しようかな。


正直、約束の時間まではまだ三十分ほどある。

しかも、ゲーム内時間で今は真夜中。お店も開いてない。



やっぱり、フィールドだよねぇ…………



窓からは太陽光もささず、今日は三日月以下なので月光もほとんどない。

私は初級光魔法【ライト】を発動させて、外へ出た。













目指すのは、始まりの国の西フィールド。


基本、フィールドへ繰り出すための門は、次の国への門と同じになっている。

ただ、次の国へ行くには奥の奥へと行くことになる。それに、レベル制限があるから行こうとしてもレベルが足りなければ見えない壁に阻まれて奥に行けない(らしい)。


でも、私の目当ては普通にレベル上げだから特に気にしない。


時計機能のアラームで、こっちの時間で一刻五十……午後一時五十分にタイマーが鳴るように設定して、私は本当のソロで狩りに出かけた。















【マディンティー】Lv10

属性 闇・風

詳細 遠距離攻撃が得意で潜伏で姿を隠しながら魔法を撃ってくる。単体で動くことがほとんどだが、狩りをする場合は数匹でチームとなる。



私がフィールドに入って少しした時、突然バトルモードに入った。

喧嘩を売ってきたのは、どうやらマディンティーという遠距離系魔獣モンスターらしい。


ふぅん………姿が見えないのかぁ………それは厄介かも。

シノが言ってた魔力感知っていうスキル取ってから来たらよかったな。


頭の中で盛大に後悔してから、私は簡単な結界でセーフティエリアを作って戦略を練り始めた。



うーん……やっぱりホーリーアーチャーで攪乱を待つ?……でも場所がわかんないんじゃあなぁ……

まだ精霊魔法はLv1だから三つしか魔法使えないんだよね。それなら………スピリット?ううんダメ。今は私だけのソロ戦の練習だから、パーティにウィルやララがいないと発動できないスピリットはダメだぁ……

うぅん………じゃあレイティー?でも場所はわかんないよね…………


よし……じゃあ()()にしよう!初挑戦だから上手くいくかわかんないけど!





私は結界を解除し、間髪入れずにコマンドボードを操作。


二つの魔法を発動させる。

すると、現れた二つの魔法が作り出した、紫と黄色の幻球を二枚の鏡が挟む。


と。

幻球が水色の光を放ったかと思うと、二枚の鏡が消え、代わりに黄色の幻弓と紫と黄色のマーブル色の幻球が現れた。




少し前に水魔法特訓で進化した水魔法の上位魔法・鏡魔法の特殊スキル【合わせ鏡】。

これは、鏡魔法を所得したときに、超低確率で付与されるスキル。

…………ほんと、ラッキーとしか言いようがない。


合わせ鏡の効果は、二つの魔法を組み合わせる【混合】。しかも、二つの効果はそのままで。

ただ、例として、水魔法と鏡魔法の魔法は合わせられない。

上位進化してしまうと、上位魔法と元の魔法は混合できないんだって。



今回ミックスしたのは、精霊魔法【ホーリーアーチャー】と精霊魔法【レイティー】。

私の作戦は、レイティーの追尾で確実にダメージを与えるのと、ホーリーアーチャーの閃光でマディンティーの姿を出してやろうっていうもの!ついでに、低確率の攪乱も来てくれたらなw




私は幻弓の弦を引く。


キィーーーーン……………


どこか鉄琴の音を思わせる音を響かせながら、混合魔法はマディンティーに向かっていった。



ホーリーアーチャーの閃光が見えてから、私はもう一度鑑定をする。



【マディンティー】Lv10

属性 闇・風

HP 110/500

MP 320/350



あらら……攪乱は付かなかったかぁ………

がっくりしつつも、しっかりダメージが入っていることを確認して、私はほっとする。


そして、私はあることに気が付いた。



………マディンティーって闇属性だから、闇タイプのレイティーってほとんど効かなくない?



だが、残りのHPは少しなので、私はもう一度遠距離魔法を撃つ。




ピロリン♪

マディンティーLv10を倒しました



ピロリン♪

プレイヤーヒマリのLvが18になりました



ピロリン♪

精霊魔法のLvが2になりました



ピロリン♪

鏡魔法のLvが2になりました




こうして私は、マディンティー戦を終了させた。

本来だったらもう少し進みたかったのだけど、途中でアラームがなっちゃったからね。

私はフィールドの機能の一つである、フィールド門へ転移する【強制転移】の場所まで行くと、一気に始まりの国へと戻った。




ーーーーー



「シノー」

「あれ……本当に来たの。」



噴水の縁に腰かけ、いつも通りのフードマントを目深にかぶった幼馴染を見つけ、私は彼の元へ向かう。

何かを読んでいたらしいシノは、ウィンドウを少し操作してから私のほうを見て開口一番そう言った。



「うん、もちろん!じゃあいこ!」

「………なんか罪悪感。」

「え?そんなことないよー?」



別に私が勝手に決断したんだから、全然感じなくていいのに!


シノは若干渋い顔をしていたけど、いつの間にか同じいつもの無表情顔に戻っていた。

私たちは、フィールドまでの道のりを、たわいない話をしながら静かに歩いて行った。







【北フィールド内】


「思えば俺とヒマリは近距離と遠距離だから、相性がいいかもね。」

「あ確かに!」



門に入り、真っ暗な林を進んでいく。

月明りも少しで、僅かな【ライト】の光だけが頼りになる。


私は杖の先に淡い光を灯し、シノは周りに光を浮かべている。


……………あれ?



「シノって、光属性じゃないよね?なんでライト使えるの?」



右上の隅に映るシノのHP・MPゲージと属性のアイコンを見ながら私は問う。

見たところ、シノは風と氷属性だ。


すると、シノは光の玉をつっつきながらこう言った。



「ああ、これはアイテム。【星の光源】っていうやつで、簡易的な明かりに使える。深夜になるから一応買っておいたんだ。」

「…へぇー」



アイテムもほとんど買ってないなぁ。だいたいを私とウィルとララの装備品かクエスト用のアイテム購入に使っちゃってるし。クエストのアイテムは絶対使い切っちゃうからなぁ。

未だ満タンにならないアイテムボックスを思い出しつつ、私は苦笑いを浮かべる。



「じゃ………早くボス行っちゃお!」

「かるっ…………」



シノのあきれ声が聞こえた気がするけれど私はスルー。

雑魚魔獣を蹴散らしていって、私たちはフィールドの最奥までやってくる。



と。

その時。



ふいにBGMが変わった。

太く、重い、重低音の音。ボス戦のBGMだ。


私たちは武器を構えなおす。

シノは銀刃の刀を水平に構える。

一応私はウィルとララを召喚し、臨時体勢をとる。




そして、現れたのは




大きな大きな、三つ首の龍だった。











「お、お、おっきい…………」

「っ………ヤバいでかさ…………」



あまりの大きさに、私たちは言葉を失う。

だけど、続いた二人の警告に意識を取り戻した。



『ヒマリ様!気をつけてください!』

『シノ様、横!』



見ると、左右からたくさんの蜘蛛がこちらにはいよってきている。

赤い目が辺り一面にあり、怖い。


シノが蜘蛛を薙ぎ払っている間に、私はBOSSモンスターを鑑定した。




【ヤマタノオロチ】Lv30

HP 3000/3000

MP 900/1000


属性 闇・炎・氷

詳細 日ノ本という国に伝わる神話に現れる三つ首の蛇龍。遠距離攻撃が得意で、三つの首から全く違う攻撃をしてくる。




えええ?Lv30ぅ?!?!

それに、三つも属性持ってるの?!チートじゃん!


慌ててその結果をシノに送ると、蜘蛛の大半を消したシノが私の近くに戻ってきて言った。



「ヒマリ、総攻撃をかけよう。攻略サイトで見たら、HPが減ってきたら大技をバンバン撃ってくるから、早めに片を付けたほうがいい。」

「りょ、了解。」



私は今の会話の間に寄ってきた蜘蛛を魔法で消して、標的をヤマタノオロチに変更した。


ボスモンスターのこのヤマタノオロチは、私たちの身長の倍以上ある林の木をはるかに超え、月に頭が付くんじゃないかなと言っても過言じゃない。



「ウィルとララは連携して一つずつ頭にダメージを与えていって!たぶん目が弱点だと思うから。」

『分かりました!』

『はぁい!』



元気よく飛び出していった二つの光は頭とともに空中戦を始める。

私もコマンドボードを操作し続け、ダメージを与える。




ーーーーー



「【ミラーズインフィニティ】!」

「【アイスブレイズ】」



ヤマタノオロチのHPは、残り800を切った。

二人の健闘により、一度、一つだけ頭を破壊した。けれど、少しして復活してしまった。


でも、頭の破壊でかなりHPは削れたから、やっぱり弱点みたいだということは分かった。



と。

突然、オロチの周りで紫色のオーラが立ち上り、その口の中で、それぞれ紫、赤、水色の光線準備前みたいな光球を作り出す。



「ヒマリ、大技が飛んでくる!見極めてよけるか防御!」

「うん!」



オロチの様子が変わったのに気が付き、シノが鋭い声を飛ばしてくる。


私はウィルとララを呼び戻し、ララに聖光結界を張ってもらう。

シノは自らの能力を発動させているみたい。







ぐらぁぁぁぁぁぁ……………







ものすごい雄たけびを上げ、三つの首から違う色の光線が放たれる。

それと同時に、体の周りから紫色の、いかにも毒々しい液体が流れ出てくる。



「っ、毒?!」



まずいよ!

結界は攻撃を防ぐだけで、毒はダメなんだよ!


あと数センチで結界内まで毒の水が入ってくる。

その時、どこからかシノの声が聞こえてきた。



「ヒマリ、そこで待ってて!」



ええ?どういうこと?

突然のシノの言葉に私は戸惑うけど、一応大人しくそのまま待っている。


すると、前ぶれなく突然、服の後ろが引っ張られ、体がふわりと浮き上がった。

ふいに訪れた重力に、私は危うく落ちかける。


ふと下を見ると、ヤマタノオロチが小さく見えた。



も、もも、もしかして!



「私……飛んでる?」

『………お前が飛べるのは天空世界でだけだろ。』



あれ?シノの声がするけど………

きょろきょろとあたりを見回していると、私はとある事実に気が付いた。


私……竜に捕まってる?というか、くわえられてる?

あ。もしかして。


私は上を見上げて、ぽつりと呟いた。



「この竜、シノ?」

『正解。』



ぐぉぉ……と小さく吠えて見せて、シノ基蒼い大きな龍は言った。

これが……【龍化】?



「これって、龍化?」

『ああ。まあ、仮の状態だけど。…………ところでヒマリ。今からジェットコースターに乗るけど、おk?』



え?ジェットコースター?


ウィルとララは完璧にシノの体で遊んでいるけど気にしない。

私は「たぶん………」とあいまいに答える。すると、シノは突然元の人の姿に戻った。



「んじゃ、行くよ。」

「へ………は?……ッギャァァァァァ!!!」



もちろん、飛行動力を失った私たちは落下していくわけで。まあ、精霊のウィルとララは飛べるけど。


そして、地上では私たちを待ち構えるヤマタノオロチ先生。



ま、ままま、まさか!

このまま突っ込む気!?



流石にそんな危険な真似は好きじゃない私は、顔を真っ青にしてただひたすら叫ぶ。




「【魔剣″氷結″】」




ただシノだけは冷静で。


ボードを前もって動かしておいたみたいで、水色に輝く刀剣を、今まさにヤマタノオロチを突き刺さんと構えている。



その前に、ヒマリの悲鳴を聞いて気がついたヤマタノオロチが上を向き、再び光線を吹こうをするが、一瞬のうちに凍ってしまってはどうすることも出来ない。





グサリ。





無慈悲に貫かれた刃は容易くオロチの体を貫き、透明な結晶を散らせて、その妖は消え去った。





ピロリン♪

プレイヤーヒマリのLvが20になりました



ピロリン♪

プレイヤーシノのLvが32になりました



ピロリン♪

プレイヤーシノの氷雪魔法のLvが4になりました



ピロリン♪

プレイヤーヒマリの光魔法のLvが5になりました



ピロリン♪

支援スキル【魔力感知】を取得しました



ピロリン♪

契約精霊・ウィル、ララのLvが45になりました




「やったぁ!魔力感知ゲット!!」

「はぁ……やっと一安心。」

『ヒマリ様、シノ様、おめでとうございます!』

『やったねー!』



ログを一通り確認し、私たちはハイタッチを交わす。

が、そんな喜びは束の間。



私たち四人を、突如白い光が包み込んだ。



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