37,作戦会議とティスイ君!
私は、もう沈黙を貫くことに決めた。
私と同じ時に入ったヒロ君でさえ会話に加わっているというのに、…………このボッチ感があああああ!
「………なに一人で狂ってんの。」
「ううう、うるさいシノ!」
どこか小うるさい幼馴染にどつきながら、私はがっくりとうなだれる。
すると。
ポンポン。
ふいに頭をやさしくたたかれた。
顔をあげて、優しい手をたどると、そこにいたのは笑顔を浮かべたエン先輩だった。
「大丈夫、ヒマリ。シノはただの天邪鬼だからな。それにヒロは、元々場に馴染むのが得意な性格だから、気にしなくていいと思うぞ。」
まっ、眩しい………!
ここに神様が降臨されたよ!!
「………俺は神じゃないぞ。」
「ヒマリ、冷静になってよく考えろ。」
………あ、あれ?
エン先輩の苦笑いの後に続いたシノの言葉に、私は冷静になった。
まてよまてよ。
さっきから、私ほとんど言葉を口にしてないよね?
………ん?
エン先輩は、私の左隣に座ってる。
つまり、というかもちろん、伸びてきた手は右手……………"右手"?!
能力TIPS!
【読心能力】
エン基蒼の持つ特殊能力・読心能力は、世間一般でいう「心を読む」力である。
何もしなくても聞こえる、その人を見る、などタイプは様々だが、蒼の場合、右手で触れたものの心を読むことができる。
……そんなTIPSいらないよ!
私は、ドーン、とTIPSを殴り倒し、エン先輩に詰め寄った。
「エン先輩………まさか読んでいたんですか…………」
「すまない。ヒマリ、かなり苦しんでるみたいだったし。」
くそぉ、忘れてた。
私の能力も反映されてるんだから、皆の能力も反映されてるんだよ……………って、初めて皆のステータス見たときに思ったじゃん!!
「ヒマリ、お前も出場するのだから、加われ。」
「ヒマリん、早く!今回の唯一のサポートなんだからさ!」
「ヒマリさん、早く作戦会議しましょうね♪」
「そーだよヒマリ、加わってよ!」
うわぁ……………
私、こんなに幸せでいいのかなぁ…………
「いいと思うぞ。人それぞれに配られる幸せは平等じゃないかと思うが。」
おお、いいこと言いますねぇエン先輩…って
「エン先輩、そろそろ心を読むのやめてください。」
「同感。手、離して。」
シノが冷たい目でエン先輩を睨みながら手をはたく。
私は、「シノ……エン先輩は一応年上だからね?」と読まれなくなった心の中でつぶやいた。
ーーーーー
「茶番はそれぐらいにしろ。始めるぞ。」
「すみません………」
うぐぐ、なんで私が謝ってるの?!
私は巻き込まれた側だよ!
リョウ「草原と闘技場は、いつもの戦闘と同じだ。」
ミネト「じゃあ、市街地と渓谷と森林は、配置決めないとねー。」
ヒナタ「近接・遠距離が二人一組になっても、今度は一人近距離余るよね?前までは六人で、シノ君が遊撃行って遠距離が一人余ったけど。」
ナイト「じゃあ、俺一人で回る。レゥイいるし。」
リョウ「そうか。なら頼むぞナイト。」
エン「組み合わせはどうするんだ?」
シノ「………ミネト以外で。」
ミネト「ひどっ!」
ヒナタ「じゃあ、シノ君とリョウ先輩・僕とミネト・ヒロ君とエン先輩、でいいんじゃない?」
リョウ「その根拠は?」
ヒマリ「……属性とか?」
確か、シノは風・氷、リョウ先輩が炎と……何かで、えっと、えっと………
私が思い出せずにいると、そこに、絶対記憶の手助けが………
ナイト「シノが風と氷、リョウが炎と闇、ヒナタが草と風、エンが草と氷、ヒロが炎と光、ミネトが闇と光。ヒナタは、それぞれの属性がかぶらないようにしたんでしょ?」
おおお!さすがナイト先輩!
エン「そうだな。じゃあそのペアで行くか。」
シノ「…………ちょっと、いいですか?」
エン先輩が決定を発言したところで、突然シノが手を挙げた。
シノは、ピシッと隣の私を指さして言った。
「ナイト先輩はソロでもいいとして、こいつ一人で大丈夫なんですか?」
「同意!!!」
そうだ。
私の担当はサポート担当。
私が見てきたゲームでも、後ろから援護する回復役は真っ先に狙われやすい。私のステータスはATKは高くても、DEFが大変な状況。もしウィルとララがいなければ私は即失格だろう。
だけど、リョウ先輩とナイト先輩はたやすく私とシノの異議(?)を打ち破った。
「ティスイなら絶対に守れる。契約主の俺が言うんだから間違いない。」
「ヒマリは規格外だ。案ずることはない。」
………………。
「あの、遠回しにディスってませんか?」
「気のせい。」
「気のせいではないのか?」
すみませんでした。
私は速攻でお二人に謝ってから、ずっと気になっていたことを口に出した。
「ところで、さっきから会話に出てくる"ティスイ"って誰ですか?」
「俺の契約獣。」
……………。
ナイト先輩が速攻で返事を返してきたのにも驚きましたが、契約獣…………!?
「な、ナイト先輩って、職業錬金術師ですよね?!」
「うん。」
「契約者なんて職業なかったですよね?!」
「うん。」
「なんで契約できてるんですか?!」
「報酬。」
私の三連撃を「うん。」と「報酬。」というわずか一単語で返したナイト先輩は、短く、要点だけを言った。
「シークレットクエストをやって、それでもらったスキル報酬が【契約】。」
「は、はあ…………」
分かりやすいような、分かりにくいような……………。
まあ、うちの生徒会は規格外ですから!!!
取りあえず疑問が何となく解決したところで、再び会議は本筋へと戻った。
ーーーーー
「取りあえず、各自レベル上げをしておけ。シノ、お前は龍化がアリーナまでに覚えられるのなら覚えておけ。ヒマリ、お前は治癒魔法の取得だ。ヒナタもレベル上げとアイテム購入を任せる。」
「了解。」
「分かりました!」
「おっけー♪」
ふぅあぁ………………
『ヒーマリ様っ!』
『お疲れ様です。』
「ララ、ウィル!」
会議が終わり、各自自由になったところで、私の可愛い相棒二人が私に飛びついてきた。
『治癒魔法、覚えるんでしょ、ヒマリ様!頑張って!!』
「うん。ありがとう!……そういえば、ウィルは治癒魔法持ってたよね?教えてくれる?」
『はい!分かりました。』
良かったぁ。これで一安心かな。
私が笑顔で二人と話していると、突然肩をポンッと叩かれた。
「ヒマリ。」
「うぎゃぁああ!……な、なんだ、ナイト先輩か…………」
後ろに立っていた錬金術師兼サモナーのナイト先輩は、私がほっと一息なでおろしたのを見て言った。
「ティスイ、見せるから、来て。」
「あ、分かりました……」
ちょいちょい、と手招きをして、ナイト先輩は裏側のガーデンへ私を誘導する。
そっか、そうだよね。一緒に戦うなら顔見知りになっておかないと!
どんな子だろう!
女の子かなぁ、男の子かなぁ?猫とかワンちゃんとか可愛い系アニマルかも!
あ、でも実は大きな熊とかライオンみたいなのかも…………
そんな私の思案は
「サモン:ティスイ、レゥイ」
現れた巨大ドラゴンに踏みつぶされた。
……………………………。
「あれ、ヒマリ?」
『ヒマリ様ー?』
『………フリーズしちゃってますね。』
………はっ!気を失っていた!
我を取り戻した私は、改めて目の前にそびえたつ塔…じゃなくてドラゴンのティスイを見上げた。
水色を基調にした大きな体。海みたいな蒼色の目。銀色のとがった角。あれ、右側の翼に大きな切れ込みみたいな傷があるなぁ。
「この子がティスイ。種族は龍のウィンズドラゴン。風・火属性で、龍の国の北フィールドボス。」
「へぇ、すごく大きな龍なんですねー………ってはぇ?!フィールドボス?!」
私はふとあの南フィールドの大きなジャイアントスパイダーを思い出す。
お、大きい………想像以上だ。
「ティスイ、縮小化。」
ナイト先輩がコマンドボードを操作してティスイ君にそう言うと、ティスイ君はみるみる小さくなって、手のひらに乗っかるくらいの大きさになった。
そこで、私はもう一匹のナイト先輩の契約獣に気が付いた。
「あれ、この猫ちゃんは………」
「レゥイ。種族はルナイズキャットで闇と光属性。」
真っ黒な体に左右で違う目のオッドアイで、尻尾が黒から先に行くほど黄色になるグラデーションになっている。……なんだか、あの某有名アニメに出てくるモンスターのブラ○キーっぽいけど、違うね。
ナイト先輩は、小さくなったティスイ君を私の手のひらにのっけて言った。
「ティスイ。こいつはヒマリ。危なっかしいがいいやつだ。アリーナでこいつの援護頼む。」
『Gooo!』
か、可愛い!!
手のひらの上で吠える水色の龍は、私に精霊と違う可愛さを見出してくれた。
私はレゥイちゃんと同じくらいの目線になるようにしゃがみ込み、にっこり笑ってレゥイちゃんの頭を撫でた。
「レゥイちゃん、私はヒマリ!よろしくね!」
『Naaao♪』
「ふぅん……人見知りのレゥイとティスイが一瞬で懐くとか……さすがヒマリ。」
よしよし、と二匹を撫でたり、ウィルとララを紹介したりして、私は一日をしっかり満喫した。
私は、少しフィールドでレベル上げをしてから、薬を届けるクエストをクリアして報酬をいただいてから、今日は早めにログアウトした。
ーーーーー
「日葵、」
晩御飯。
人も少なくなってきた食堂で一人日葵がご飯を食べていると、突然翔が声を掛けてきた。
「んぐ……どうしたの?翔。」
「隣、いい?」
トレーを持った翔は日葵の同意の印を見て、静かに席に座る。
日葵のA定食セットの残りはあと半分を切り、翔はこれから簡単な軽食を取るようで、トレーの上にはサラダと果物、後お味噌汁が乗っていた。
「日葵、魔力感知って知ってる?」
「まりょく、かんち……ううん。」
聞いたことのないスキルに、日葵は首を横に振る。
「いただきます。」と手を合わせサラダに手を付けながら翔は言った。
「最近追加されたらしいんだけど、人や魔獣の気配を探れるようになるんだって。」
「へぇ………すごいねそのスキル!」
日葵は唐揚げを食べながら興味津々で翔の話に耳を傾ける。
「北フィールドのフィールドボスを倒すと、低確率で付与されるらしい。
ねぇ日葵………………取ってみたら?」
「無理だよ、私のレベルじゃ」
「【知っていれば、助けられた。未然に防げれた。】」
ふとつぶやいた翔のセリフに、苦笑いして断ろうとした日葵は口をつぐんだ。
そして、その言葉がぐるぐると頭を混乱させる。
「取っておいて損はないと思う。行ってみる?明日。」
「翔も、行くの?」
「ああ。あと少しで龍の国解放されるから、ついでに。」
小さく笑う翔はつづけた。
「行く?別に脅してるつもりじゃないけど。」
「………………うん。」
表情を曇らせた日葵は、小さく頷いた。
さすが翔はまずいと思ったのか、日葵の頭をぐしゃぐしゃと撫でて言う。
「ごめんごめん。強制するつもりはないから。…………別に、来れなくても大丈夫だから。」
そう言うと、翔は空になったお皿の乗ったトレーを持って返し口へ去っていった。
残された日葵の瞳には、強い意志の光が灯っていた。




