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水無月学園生徒会は、どんな世界でも最強なのです!  作者: 葉月 都
第三章 水無月学園生徒会は、隠れ最強副会長 望月日葵を育成します
29/68

29,お誘い

久々に現実世界です。



「—であるからして、次。望月、答えてみろ。」

「……はい。」



いくら保護所とはいえ、一学校だ。

今日は、オープンスクール、と言っても名前ばかりで、午前中授業がある十日間の内の二日目だ。


生徒達にとっては「いい迷惑」なのだが、正直日葵はどこかホッとしていた。


その「ホッとした」原因は、昨日のことだ。











昨日、【アイテム収集屋ライクル】に行った後、日葵は南フィールドで再度Lv上げをしていた。今度はウィルとララと共に、集団戦の練習をしていた。


ちょうど中ボスを撃破し、この前のキングスパイダーより奥のボス・超ボスに挑もうと転移ループに足を踏み入れたその時。


転移されたのは、チュートリアルのような真っ白な世界だった。

そして、強制的に開かれたメニューウィンドウに表示されていたのが、次の文面である。




【Fantastic Treeご利用のプレイヤー皆様へのGMゲームマスターからのお知らせ】

下記日時より、〈Fantastic Tree 世界樹と大精霊〉での大規模アップデートを行います。それに従い、下記日時より、一時的にゲーム内へのログインをストップします。また、下記日時までゲーム内に残られているプレイヤー様は、運営側より強制的にログアウトさせることとなります。

ご不便をおかけしますが、これからのVRMMOゲームの発展にご協力お願い致します。




2XXX年七月二十九日(月)0:00~同年七月三十日(火)23:59まで




《アップデート内容》

・新エリアの解放

・新イベント・クエストの追加

・新スキル解放

・ステータス情報の構成変更

・コミュニケーションシステムの大幅改良

・CPU、NPC、AIの不具合調整

・その他不具合調整



ご迷惑をおかけします。


Fantastic Tree運営チーム一同







「はああああ!?」の「は」の字が出る前に、日葵の前からウィンドウが消滅し、【ボスエリアへ転移します 5 】のテロップが表示される。


慌てて装備を整え、日葵はボス戦へと向かった。




無事討伐し終わった日葵は、街に戻ってプレイヤー達の阿鼻叫喚?……………ともかく、大慌てな人々をみて、大きなため息をつく羽目になったのであった。










だが、運よく今日七月二十九日は登校日。しかも午後からはまた生徒会の集まりがある。次の日はさすがにフリーだが、なんとか二日間持ちこたえられそうだ。


スラスラと数式をこたえ、日葵は着席する。

クラスメイト達からの羨望のまなざしにも、もう慣れ始めてきた。


(…………明日、どうしようかなぁ……………)


気を抜けば机に突っ伏してしまいそうなほど、日葵は疲れてしまっていた。




ーーーーー



「日葵、起きてる?」

「…………起きてるもん…………」



今日の議題は、十一月に開催される【学園祭】。水無月学園は注目の進学校であるため、一、二回は敷地内に大勢の人を入れたほうがいい、という理事長の判断で、以外に大規模な学園祭になっている。

まあ、生徒達も楽しんでいるから良しとしようではないか。



「…………ただ、予算の配分が微妙。いつも通りだと、部活への配分が少し少なめになる。」

「だったら奈糸先輩、少し全クラスの予算を減らして、配分を考え直しませんか?」

「ああ。じゃあ、一クラスごとの予算を大体…………」


「蒼ー、こっちの箱はどこに持っていくー?」

「それは第一倉庫だ。………湊、ついでに第一教材室にこれを持っていっておいてくれ。」

「……了解。」



会計員の二人は、肩を寄せ合い予算の相談。運営委員二人は機材運び。生徒会長・生徒会副会長・書記の四人は学園祭のプログラム・出入りの警備・能力の制限法について話し合うことになっている。


ミナガクの学園祭では、能力を使うことが一部のみ許可される。ただし、外部の人に能力を見せるのではなく、裏方での仕事の補助についてのみ、そして、敷地内の警備担当の生徒に限る。ただ、今回は能力を使う出し物が若干多いようなので、こうやって相談をしているのだ。



「異能力法(水無月学園での能力に対する校則)にぎりぎり適するものは良いとするが、少しずれたものをあるようだ。」

「はい。中等部二年D組、中等部三年A組、中等部三年B組、高等部一年D組。それと、剣道部、魔法研究部がその分類に入ります。少し大掛かりな仕掛けのため、それだけ能力の使用が多いのでしょう。」

「ただ、だからって校則は校則だしな。」

「シノの言う通りだ。そのクラスだけ甘くするわけには行かぬからな。」



三人が話し合っている中、日葵だけは机に突っ伏してため息を繰り返している。

そんな日葵を見咎め、涼雅が口を開いた。



「………望月。どうした。」

「……………ぃぇ…………」



ぐったりとしたような日葵の声音に、三人は顔を見合わせる。

いつも笑顔な日葵が、こんな風にため息ばかりつくのは珍しいことだった。


その時。

翔の目が、何やらひらめいたかのように、一瞬だけ、輝いた。




ーーーーー




夜七時。日葵は早めの晩御飯を食堂で食べてから、部屋に引きこもっていた。

ベットにうつぶせになり、半分視界が黒くなりかけていた時。



コンコン



ふいに、扉がノックされた。

日葵はなんとか体を起こし、ノロノロとした歩みでドアに向かう。



「………………はい、誰ですか?」

『俺。』



ドアの前にいたのは、翔だった。

日葵はその声を聞いて、ゆっくりと扉を開けた。



「……どうしたの?翔。」

「明日、お前も全員フリーだろ。」



突然の言葉に、日葵は一瞬戸惑いを見せる。



「そうだけど。」

「………………午前八時、校門前に来て。」



そう言うと、翔はくるりと踵を返して去っていく。

ぼおっとした頭の中だから、日葵は翔の言った言葉の意味が分からなかったが、思考より睡眠欲が勝り、日葵はそのままベットに転がり込んだ。


眠る前、日葵はいつものように銀色のイヤリングにゆっくりと触れてから、静かにシーツの海に埋もれた。





ーーーーーー



次の日。



「おはよー、翔。」

「はよ。」



校門前。オープンスクール後の外出日で多くの人が出入りをしている中、日葵は、手持ちの薄水色のサマードレスを着て、柱にもたれるパーカ姿の翔の元へ駆け寄った。



「…………ところで、どうしたの?」

「ここ。」



そう言うと、翔は二枚のチケットを取り出す。

そこには、二駅向こうの遊園地の無料招待券と書かれていた。


ちょこんと首をかしげると、翔は続けた。



「ここ、行こう。」



瞬間、日葵の頭の中の霧が晴れた。



「ええええええ!?」





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