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水無月学園生徒会は、どんな世界でも最強なのです!  作者: 葉月 都
第三章 水無月学園生徒会は、隠れ最強副会長 望月日葵を育成します
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28,狐少女と楽天家

事件って言うほど、事件じゃないですね笑



事件は、ギリお爺さんに教えてもらった【アイテム収集屋ライクル】への道中で起こった。



「…………あれ、ヒマリ。」

「ナイト?おはようございます!」



ちょうど噴水広場に近づいたあたりで、ばったりナイト先輩と出会ったのだ。

だけど、そこにいたのは、ナイト先輩だけではなかった。



「ひま、り?」



か細い風のような柔らかい声が、私の耳に届く。

ナイト先輩の陰から出てきたのは、狐耳の女の子。私と同じくらいの身長で、ターコイズブルーのセミロングで、緑色の目をしている、とても可愛い少女だった。

装備は、ピンクの下地に白いレースが所狭しと並んでいて、胸元には大きな白いレース付きリボンが踊っている、世間一般で言う「ロリータ」系の服を着ていた。靴は、動きやすそうな白いトゥシューズ。頭には、右の狐耳の根元を隠すようにピンク色のリボンが付いている。



わあっ、可愛い女の子だなぁ…………



思わずじっと見つめていると、ナイト先輩が口を開いた。



「あ、ヒマリは知らないよね。彼女は【ミユウ】。」

「こんにちは。ミユウと言います。」



ぺこり、とミユウちゃんがお辞儀をする。

そこに洗練されたものを感じて、私は(なぜか)感動した。



「ヒマリです!こんにちは、ミユウちゃん。」



私はにっこりと笑顔を見せながら自己紹介をする。

その瞬間、ミユウちゃんの目が一瞬陰ったのは………きっと気のせいよね。


そんなことよりっ!!



「ナイト?もしかして、彼女?!」

「…………ヒマリ、本気で叩き潰すよ。」



怖い、怖い。


本当にナイト先輩ならやりそうなので、それ以上の詮索はやめておいた。



「ミユウとは、ネット友達。」

「ああ、そういうことかぁ。」

「ナイトとは、よくしてもらってるから。」



ミユウちゃんは、ちょっとおしとやかな女の子だね。

若干ミステリアスかも!


ナイト先輩との共通点をもう一つ見つけたところで、ふと、ミユウちゃんが口を開いた。



「それにしても………何か用事があったのでは?」

「………………あ!」



大変!ライクルに行く途中だったんだった!!



「教えてくれて、ありがとう!では、ナイト先輩、またあとで!!」



ビューン、と、素早さのパラメータを越した速さで、私はナビを呼び出しながらライクルへと向かった。



ーーーーー



「先輩、かぁ。」



残されたミユウとナイトは、噴水広場のベンチに二人並んで腰かけて話し始めた。



「呼び捨てでいいって言ってるんだけど…………ミユウは、やっぱり、憧れ?」

「…………もちろん。もう私も中二なのに、ずっと部屋に閉じ込められた・・・・・・・まんま。」

「案外、楽しいから。」



ミユウの緑色の目が楽しげに細められる。



「…………計画・・は、うまく行ってるの?」

「うん。なんとか父様にばれないように、組み直したから。」



彼女は、"エメラルドグリーン"の"メニューウィンドウ"を開き、何やら操作しながら、ナイトに言った。

ナイトは、"水色"の"メニューウィンドウ"を呼び出して、アイテムボックスからドーナツを取り出すと、一人でむしゃむしゃと食べ始めた。



「それ、しーくんの?」

「……………さすが幼馴染・・・

「美味しそう………しーくんのお菓子、食べたいなぁ。」

「この世界だから実現できることだよねー…………確か、別のお菓子があったと思う。」



そう言いながら、ナイトはウィンドウを再度開きなおし、今度はふわふわのマフィンを取り出して、ミユウに手渡した。

ミユウは、それを奪い取るように取って、もぐもぐ、とすごい勢いで食べ始め、十秒で完食してしまった。



「……………ごちそうさまでした。」

「はやっ」



丁寧に手を合わせると、ミユウは再びウィンドウをいじり始める。



「やっぱり、しーくんのお菓子は美味しいや。」




ーーーーーーー



【アイテム収集屋ライクル】は、西のサンテラストリートにあった。

木材の板に、オレンジのポップ体で書かれた店名の看板は、みているだけで元気が出てくるものだった。



「こんにちは!」

「ぁいー、いらっしゃーい!」



間延びしたとろんとした声が聞こえてくる。

カランコロン、と鐘が鳴り、私は店内に入った。


店内は、十畳ぐらいの狭さだった。しいて言うなら、縦に長細いお店。

カウンターらしきものがたぶん真ん中ちょっと奥あたりにあって、向こう側に一人の男性がだらりと座っていた。



「あのぉ………ドロップ品を売りに来たんですが……………」

「んー、あんた、新規の人だよねー。まー、別にどっちでもいいけどさー。そこ、座って。」



ううう……………どこか気が抜けないなぁ………


一応警戒を解かずに、私はカウンター前に置かれた黒い椅子に腰かける。

ギリお爺さんが言っていて、今現在私の目の前でメニューを操作している風な【ライキ】さんは、なんだかチャラ男っぽい容姿をしている(ように私は見えた)。


オレンジ色の髪の毛は所々はねてるし、赤い目は若干キツネ目みたいだし。右目の下には小さなほくろ。決してイケメンとは言いにくい人。ただ、耳が細長いから、妖精族のプレイヤーさんなのかな?


でもまあ、もしかしたらいい人なのかもしれない。


そんな期待を小さく持ちながら、私は口を開いた。



「あの、南フィールドのドロップ品を売りたいんですが……………」

「へー…………俺はーライキ。売りたいの全部見せてくれるー?」

「は、はい…………分かりました。私は、ヒマリ、です………………」



………………ダメだ。前言撤回。

この人、ナイト先輩・ミネトその他生徒会メンバー以上に掴みどころのないマイペース人だ!!!


脱力感を覚えながら、私はドロップ品をすべてリストにまとめてライキさんに送る。



「へー…………まーまーいい数だねー、全部換金でおーけー?」

「はい。」

「んーじゃあまとめて換えたらしめて5000Gなりー。」



5000!いい感じかな。



「じゃあお願いします!」

「ほーい。じゃートレードプリィズ。」



私はライキさんと、ドロップ品と5000Gをトレードする。



「おけおけ。これでかんりょーだぜー。またいらっしゃい。」

「あ、ありがとうございました……………」



なんだか、完璧にライキさんのペースに乗せられたまま、私は【アイテム収集屋ライクル】から脱出した。

目の前の空間をダブルタップすると、水色のウィンドウが現れる。右下の端に日付と時刻があって、現在の時刻は、



世界ゲームワールド時刻 八刻二十

リアルワールド時刻 PM16:50



と表示されていた。


うーん、四時かぁ……………じゃあ、あと一時間ぐらいフィールドでLvあげしてからログアウトしーよぉっと!


私は、にっこりと笑い、思えば今日はウィルとララと遊んでないなーと思い出しながらサンテラストリートを後にして、再び南フィールドへとむかった。


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