25,なんでこんなに時間がかかるんですか!
ギルドへ向かうと、さっきとはうってかわって人の数は少なかった。
フードパーカは闘技場から出た瞬間に装備解除した。
「それにしても、二人ともその仮面はどうしたの?」
『はい!実は、ヒナタ様から頂いたんです!』
『「もしもの時に使って☆」って!』
……………蓮君。
何やってんの?
精霊用の装備品は主人である私の持ち物の中にあるらしいから、鑑定をするために私は二人の仮面を検索した。
【ヴェネチア仮面・精霊用】×2
評価 A
効果 着用時、ATK+15
備考 ヴェネチアのピエロのような青い仮面。精霊・妖精用でプレイヤーは装着できない。
ふう
よかった、普通のだ。
「じゃあ、後でヒナタ君にお礼を言っておかなきゃね。」
『ですね…………あ、ヒマリ様、順番が回ってきましたよ。』
どうやら二人とお話していた間に先頭までやってきていたみたい。
目の前には、ニコニコ笑顔の銀髪のお姉さんが座っていた。
エルフ耳で、きらきらの銀髪は肩少し下。南国風の赤色のサマードレスを着た二十代ぐらいの女の人は、私を見て言った。
「こんにちは!こちらは冒険者ギルドです。初心者プレイヤーの方でしょうか?」
「は、はい!」
「それでは、簡単にギルドの説明をさせていただきます。」
サマードレスの右胸元に付いていたプラスチックの名札に〈リコル〉と書かれていたので、私は勝手にリコルさんと呼ぶことにした。
「ギルドは、それぞれの国に三つから四つあります。
それぞれ、冒険者ギルド・魔法ギルド・商業ギルド(生産ギルド)・情報ギルドです。始まりの国には、すべてのギルドが揃っています。
冒険者ギルドでは、新しいプレイヤーの方の冒険者登録・新テイル創立・テイルメンバー追加・プレイヤークエスト受理ができます。
魔法ギルドでは、CPUクエストの受理・職業別クエストの受理・種族別クエストの受理が行えます。
商業ギルド(生産ギルド)では、魔法道具の生産・新店舗の開設、閉店の管理・定期的なお店の監査、調査情報の公開・店舗情報の管理をしています。
情報ギルドでは、すべてのクエスト、イベント情報の公開・アップデート情報の公開などを定期的にメッセージボックスへ送ります。情報ギルドに行けば、より詳しい情報を見ることもできます。
また、ギルドでのみセーブが可能です。
宿屋でのセーブも可能ですが、宿泊金が一時間500Gかかります。
テイルでセーブが出来るようにしているプレイヤーの方が多いですが、ほとんどの方がギルドセーブを行われています。
ちなみに、この世界には全体的に自動セーブ機能がありません。セーブをしないままログアウトされると、データが失われる可能性がありますので、必ずセーブをするようにしてください。モンスターに倒された時、PVPでの敗北(HP0状態)した時も同様です。ただし、フィールド外に出る場合だけ、自動セーブがされます。」
ほ、ほぉ……………
「つ、つまり、それぞれ四つぐらいギルドがあって、セーブはギルドで出来ますよ、ってことですか?」
「そーです!」
親指を立てて、リコルさんは言う。
「それでは、本日は冒険者登録でいらっしゃったということでよろしいですか?」
「えーっと………そうです。」
うん、たぶんそういうことだから。
ララが耳元で「そうだよっ!」ってささやいてくれたのもあるけど。
「では、冒険者登録を行います。
お名前は、【ヒマリ】様で、ご職業は精霊術師、種族が………………………え?」
と、私の情報を言っていたリコルさんがふいに口を閉ざして目を見開く。
あ、心当たりがある。
私は苦笑い。(をするしかない。)
「あああ、あのぉっ?あなあな、貴方様は"レアメタル"でいらっしゃるんですか?!」
「……………レアメタル?」
って確か原油か鉱石の名前だったよね?
突然リコルさんが大声を上げたので、ほかの受付のお姉さん方やプレイヤーさん達が私達のほうを見る。
「はいっ!!"レアメタル"っていうのは、レア種族である、ジャックフロスト・天龍・龍神・狐の半人・ガブリエル・大魔法使いと、八つの精霊種になっているプレイヤーの方を、希少な人"レアメタル"と呼んでいるんです!
うわぁ………初めてレアメタルの方をお会いしましたぁ…………私、感激です!!」
「あ………え?」
一見真面目そうなリコルさんは、実はすごい好奇心旺盛な明るい人みたい。
若草色の瞳をキラキラと輝かせて熱弁を振るうリコルさんを見ていると、なぜかいたたまれなくなってきた。
「私は、冒険者ギルドで働く、エルフのリコルと申します!ヒマリ様、私とお友達になってください!」
「ひゃい?!なんでそんな話に!!!!!!」
完璧に話が脱線しちゃった。
私はいったんリコルさんをなだめてから、本題に戻ってもらった。
「まあまあ、一旦落ち着いて。私はただ冒険者登録をしてもらいに来ただけだからね?お友達ならいつでもなってあげるし。」
「本当ですか!わぁーーーーい!!」
立ち上がったリコルさんは、意外に小さかった。私の目の高さに頭があったもん。
そして、上目遣いで満面の笑顔を浮かべ言った。
「よろしくお願いしますっ!ヒマリ様!どうか私のことは『リコル』と呼んでください!」
うん。
分かったから本題に戻ろうね。
そうして、私はリコルをもう一度なだめることになり、ハイテンションなリコルに十分かけて懇切丁寧に冒険者登録をしてもらって、なぜか「今度二人で遊びに行きましょう!」と約束をしてから、20分かけてギルドから脱出した。
なんで、討伐クエスト行くのにこんなに時間がかかるの?
ーーーーーーーーー
時間は戻って、ヒマリが闘技場から出た時のこと。
「お爺ちゃん!!」
「ぬお?………なんじゃ、リユか。」
突然店に飛び込んできた孫娘を見て、ギリは素っ頓狂な声を上げる。
いつものクールなリユとは違い、荒い息遣いで真っ青な顔をしている。
「どうしたんじゃ?リユ。」
「お、お爺ちゃんは感じな、かったの?………………………さっきの、すごい波動。」
「…………………お前も、感じたか。」
リユの一言に、ギリの顔が引き締まる。
作業をしていた手を止め、リユのもとへ歩み寄ると、ギリは言った。
「すごい力の波じゃったのぉ。きっとあの子じゃな。」
「……………ヒマリ?」
「うむ。少しではあるが、儂の作った精霊の杖の気配がしての。なにかとはおもったのじゃが…………やはりあの子じゃったか。」
「ね……………ギリお爺ちゃん。」
すると、リユの目がすうっと細められ、ギリを見据える。
そして、こういった。
「ヒマリになら、【大精霊の鍵】を預けても、いいんじゃないかな?」
その言葉に、ギリは驚き目を見開いた。
「なんじゃと……………?」
「だって、あの子なら、必ず【精霊王女】と会えるような気がするもん。ヒマリの力が、それを物語ってる。」
「じゃが、それは【マスター】に報告せねばならぬのではないか?」
「だからギリお爺ちゃんのところに来たの。」
その時。リユの体から金色の光がほとばしる。
正確に言えば、金色の光の球体がリユの周りに集まり、リユの体に入っていった。
その光景を見て、ギリはうなずいた。
「そうじゃな、そろそろ潮時かもしれぬ。………………マスターに伝えるかの。」
「はい。」
静かに微笑むと、背の高い金髪の少女はギリとともに店の奥へと入っていった。
ーーーーーーーーー
暗い部屋。
そこには画面があるだけ。
一人の人影は、画面の集うデスクに体を突っ伏していた。
「………………眠い。」
そうつぶやいたその時。
突然、一つの画面が鳴き声を上げた。
むくりと起き上がると、人影はつぶやく。
「…………………CPUギリと、CPUリミュ?」
そこに表示されていたのは、ギリの大きな巨体とエルフの金髪美少女の姿であった。
画面の中に現れた二人は、白と黒、0と1が交錯する世界で、開口一番こういった。
「「プレイヤーヒマリに、【大精霊の鍵】を!!」」




