2,せわしなく走り回る指先
カチャカチャカチャカチャ
真っ暗闇の部屋に、光る画面が冴えて見える。
そして、部屋の中に響き渡るキーボード音。
カチャカチャカチャカチャ
何台ものパソコンに囲まれて、一人の人物が座っている。
その人物は一心不乱にパソコンに向かい、何かを打ち込んでいる。
カチャカチャカチャカチャ
キーボードの上を、忙しなく動き回る細い指。
その人物の瞳には、パソコンの画面しか映ってはいなかった。
カチャカチャカチャカチャ
息をつく暇もないほど速く、画面には、英語と数字の何かのワードが打ち込まれていく。
カチャカチャカチャカチャ
カチャカチャカチャカチャ
カチャカチャカチャカチャ
カチャカチャカチャカチャ
…………………カチャン
刹那
突如、鳴り響いていたキーボード音がいきなり消え去った。
謎の人物が、作業を止めたのだ。
ふぅ……………と大きく息をつくと、その人物は、深く椅子にもたれこむ。
そして、ぽつりと言葉を発した。
「……………………できた……………………」
パソコンの画面には、先ほどのたくさんのワードはなく、カラフルな色彩のタッチの絵が映し出されていた。
それは、何人かの少年少女が、槍や刀、剣や弓・杖など様々な武器を持ち、勇者のような鎧や、王女様が着ているような綺麗なドレスや、不思議の国のアリスのようなワンピースなどの服装を身に纏い、背中合わせに立っている物だった。
背景は、大きな大樹と真っ白なお城。
大樹のてっぺんには、七色に輝く虹が。
雪のように真っ白なお城の屋根は、真っ青なセルリアンブルーだ。
そして、少年少女の頭上には、英語と漢字・ひらがなで、こう書かれていた。
五月某日
日本全国を震撼させる、VRMMOゲームが発売された。
VRMMOとは、五感すべてを没入させる、仮想現実大規模多人数オンラインのことである。
今まで誰も成功させたことのない、新感覚のゲームに、日本各都道府県で売り切れ続出であった。
他の国々は、「なぜ私たちの国では発売されないのだ!!」と暴動が起きかけたが、企画者より「予算の都合により、日本限定」と発表があった。
そのゲームとは、
【Fantastic Tree 世界樹と大精霊】