16,【一日限りの少女】1-1
ちょっと書きたくなった短編ストーリーを思いついたので書いてみました。
ちなみにまだ続きますが、次は本編戻ります
これは、このお話が始まる少し前の不思議な一日のお話……………
ーーー【?目線】ーーー
ふふふ…………
私はある夜、一軒のテイルへ訪れました。
向かう先は、小悪魔少年のお部屋です。(でも、ログアウトしてるからいないけれども。)
そして、そんな泥棒のまねごとをする私の手には、ある小瓶とカードがありました。
もちろん!
このお話の重要すぎるキーワーd……ゴホンゴホン。キーアイテムですからね!
カチャリと鍵を開けると、私は蛻の殻の部屋の窓際にあるベットのサイドに置いてある茶色い小さな箪笥の上に、その二つのキーアイテムを置きました。
小瓶とカードは、「カタン」と小さな音を立てただけで、素直に置かれてくれました。
さて!準備は整いました!!
私は部屋を見渡すと、にっこりと悪魔の笑みを浮かべました。
「よろしくお願いしますよー、蓮♪」
そうして、私はそのまま消えさせていただきます。
ふふふ
"彼"は、どうなっちゃうのかな………………?
久々に、私のドS小悪魔な本能がたぎっています。
さあて、今日の主役達のおはこんこんのお時間だよ!
ドロンッ!!!
ーーー【蓮目線】ーーー
ある日。
ログインしてきた僕ー陽河蓮ーは、自室ーテイル内の自分の部屋ーに入って目を疑った。
………………何これ?
明らかに昨日までは、というか昨日ログアウトする前まではなかった物が、ベット横の小さなタンスの上に置かれていた。
「………………もしかして、リョウ先輩の悪戯?」
僕は、ミナガクの帝王の顔を思い浮かべて、消した。
いやないない。
水樹くんとかシノくんじゃあるまいし、あの帝王の逆鱗に触れたことは絶対ないし。
そうやって、思考を巡らせていた僕だけど、僕はタンスの上に小瓶とともに置かれていたカードに気が付いた。
あ、カードなんてあったんだ。
小瓶の横に置かれていた、水色のリボン柄が付いたメッセージカードには、たぶん女の子の丸まった字で(僕にとっては)素晴らしいことが書いてあった。
「…………………ふっ………………」
僕の口から、悪夢の始まりを告げる笑い声が漏れる。
僕の顔は、まさに悪魔のように歪んでいた。
「ありがとう、誰か分かんない人………………おかげで楽しい一日になりそうだよ!」
僕は小瓶とメッセージカードを持つと、一人しかいないテイル内で、鼻歌を歌いながら一階へと降りた。
ーーー【第三者目線】ーーー
「おっはよー、シーノくんっ!」
「おお、はぇーなヒナタ。」
ログインしてきたシノを迎えたのは、満面の笑顔のヒナタだった。
だがこれはいつものことなので、シノもあまり何も言わずに自室へ向かう。
「シノくーん、コーヒーいるー?」
「……………?じゃあもらう」
階下からヒナタの声が聞こえる。
少し驚きつつも、シノは肯定の声をあげた。
(珍しいな。蓮がなんかするって。)
首をかしげながらも、シノは自室でいつもの装備を整えた。
下に降りると、コーヒーのいい香りが漂ってくる。
「はーいどうぞ!」
「って、お前調理スキル持ってたっけ?」
「……………調理は、料理の時だけでしょ。コーヒー淹れるだけなのにスキルいるとか最悪だよ。」
「正論、だな。」
ぶくーと頬を膨らませるヒナタを見つつ、シノはふっと小さく笑ってからコーヒーをすする。
すると、シノの前のソファに座ったヒナタが、またもや完璧な笑顔を見せながら言った。
「シノくん!」
「?なに。」
「楽しい一日を♪」
「は?」
だが、そこまで会話をしたところで、シノはなぜか急激な眠気に襲われ、コーヒーのカップをテーブルに置き、そのままソファへと沈んだ。
ーーーーーーーーー
「な、な、な……………なんだこれぇーーーーーーーーー!!!!!!」
ーーーーーーーーー
「あ、リョウ先輩☆おはようございまーす☆というかこんにちはー!」
「……………どうしたヒナタ。テンションがいつもとおかしいぞ。」
現実世界で朝十時半、こちらの世界で八刻半。
現実世界は一日二十四時間だが、ファンツリの世界では一日が十二時間(十二刻)のため、朝八時半と言えども昼間なのだ。
「いえいえー!今日はちょーっといいことがあったので!」
「何かあったのか?」
続いてやってきたエンも、あまりのヒナタの笑顔に驚いているようだ。
すると。
エンがあることに気が付き、素っ頓狂な声を上げた。
「え、は…………まさか……………?!」
「ん……………?」
「ぷっ……………」と見せつけて笑う湊。
「くくくくく……………………………」と笑いをこらえきれていない蓮(犯人)
「んんん…………………」と口を押えているが僅かに漏れている蒼に、
「ふっふっふっ………………」となぜかにやにやと笑う涼雅。
「可愛いは正義ですし、もーまんたいですよ!」と天使の笑顔で天然発言をする水樹。
「何が、あったの…………………?」と興味深そうな目でしげしげと見つめる奈糸。
六人の目線の先には、
艶やかな長い黒髪
今にも泣きそうな、少し潤んだ紫色の双眸
白い服で強調された胸
どこか色香を醸し出す妖美な身体つき
まさに百人が百人認める絶世の美少女が恥じらうように頬を赤く染めて座っていた。
「やっばぁー………………シノくん可愛いーw」
「湊……………今、あんたに殺意が芽生えた。」
風鈴のようなその声で、彼女は恨みがましい言葉を発する。
「それにしても………………これは……幻術魔法の一種かな?それとも何かの薬?」
「ナイト………冷静に分析しなくていいから。」
ぎゅっぎゅっと大き目の白いパーカの裾を引っ張り、彼女はぼそぼそとつぶやく。
「というか…………これ、ヒナタがやったのか?」
「えーー、違いますよー」
エンが、にやにや笑いを続けるヒナタに問うと、そのチェシャ猫は悪戯っぽく言った。
「ちょっぴり、頂き物の薬で実験してみただけですから♪」
ーーーーーー
「女体化する薬……………錬金スキルで作ったの?」
「ナイト先輩、言ったじゃないですか。『頂き物』だって。」
「だが、作るとするならかなりのスキルだな。見事な分子配列だ。」
エンの鑑定スキルの情報を共有しあう六人。
そんな光景を見ながら、彼女基女子化シノは真っ赤になって毛布を頭からかぶっていた。
「絶対今日外出たくない……………」
そうぼやくシノ。
布団の隙間から微かに見える紫色の目にはほとんど光は残っていなかった。
状況を整理すると、
・ヒナタの入れたコーヒーには、飲んだ人を女の子の姿にする薬が入っていた。
・それを飲んだシノが女の子になった
というのが大まかな内容である。
期間は一日らしく、シノはテイルに引きこもると言い張っているが、いったいどうなるのやら?
三千………
3000PV来た………
っていうか、185人の方が見てくれたって…………(八月九日)
な、何があったの?




