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相対速度五二〇粁の戦い

 新鳥栖駅では九州新幹線に乗り換えです。




□新鳥栖15:59 → つばめ331号 → 筑後船小屋16:11




☆列車カード獲得!

800系『つばめ』

レア度★

10ポイント




「この旅初めての新幹線ですっ」


「やっぱり新幹線は速いな~。景色が飛ぶように流れて行くで」




 さすがは日本の科学技術の(すい)を集めた新幹線です。在来線の約二倍の猛スピードでぶっ飛ばしながら、それでいて乗り心地は抜群! 驚くほど揺れませんね。まあ先程の振り子コースター885系の直後、という相対的感覚もありますが……。




「このシート、木製なのね」


「めっちゃ座り心地ええわ~」




 車内は窓のブラインドや仕切り壁にも木材が使用されていて、柔らかく温かみのある空間となっています。




「基本的に新幹線の普通車は五列シートだけど、この800系は全車四列シートだから、ゆったり広々としてるねえ」


「気持ち良く眠れそうですねっ」




【遥香の車両解説・800系】

挿絵(By みてみん)

 800系は二〇〇四年三月、九州新幹線の新八代~鹿児島中央間の部分開業と同時にデビューしたJR九州初の新幹線車両です。

 基本的な構造は東海道・山陽新幹線の700系とほぼ同じですが、先頭車の形状や客室の内装にはJR九州こだわりのオリジナリティが発揮されています。

 九州新幹線の全線開通後は、主に各駅停車タイプの『つばめ』の運用に就いています。




 心地良いシートでくつろぐ私たちを乗せたつばめ331号は、徐々にスピードを落としていきます。もうすぐメダル駅の筑後船小屋です。




「大きな野球場が見えますね」


「あれは『HAWKSベースボールパーク筑後』だね。ホークスの二軍用の球場だよ」


「えっ、こんな立派な施設が二軍用なんか!?」


「できたばかりみたいだし、広くて綺麗だね」


「か~っ、道理でホークスが強い訳や。それに比べてタイガースときたら……」


「最近タイガースは調子良くないみたいだねえ」


「ホンマに何とかせなアカンわ。特に外国人選手! スカみたいなもんばっかり連れてきよってからに! そもそも球団の体質に根本的な問題が……」




 おっと、あずさはタイガースのことを語り始めたら止まりません。


 やがてつばめ331号は筑後船小屋駅のホームに停車しました。




「あずさ、降りるよ!」


「このままやと暗黒時代の再来に……えっ、何?」




 タイガース愛はいいけれど、熱弁を奮っているうちに乗り過ごしてしまいそうです。




「諏訪さんは熱狂的なタイガースファンなのね」


「うん! あたしのDNAはタテ縞模様やで!」




 ちなみに、女子寮のあずさの部屋はタイガースグッズで埋め尽くされています。まあ私の部屋も鉄道グッズで溢れ返っているので、あまり他人のことは言えませんが……。




☆駅メダル獲得!

筑後船小屋

50ポイント




 では、ここでのモンスター捜査は虎キチあずさにお任せしましょう。




「駅舎におらんから外に出たけど、駅前は閑散としとるな」


「新幹線の駅もできて、これから発展しようという街だね」


「あっちが在来線の駅やな」




 筑後船小屋駅は新幹線と在来線の駅舎が少し離れていて、その間に広場があります。




「おるとすればこの広場やろうな……。ほれ、やっぱりおった!」


「花火のオバケさんですねっ」




 この駅のある筑後市は、大きな花火大会が有名なのです。




『たまや~! クイズだドン!』




「何やこいつ……。はるか、やっちゃいな!」


「アイアイサー!」




◎鉄道クイズ・筑後船小屋

問題 四人の少年が線路を歩くシーンが有名な映画『スタンド・バイ・ミー』。その原作となったスティーブン・キングの小説は?


A The Memories

B The Journey

C The Body

D The Railroad




 ……は?


 しょ、小説!?


 え、ちょっと待って、そんなの知んないよ!?


 まずい、時間がない! ええい、こうなったら秘技・神頼みで……。


 私が震える指先でBをタップしようとしたその刹那。




「天王寺さん、Cよ!」




 背後から救世主の声が! 慌ててCの『The Body』をタップ!




○正解!

アイテム獲得!

『金の宝箱』




 あ、当たった……。




「のぞみちゃん、よう分かったね!」


「たまたまだけど、原作を読んだことがあったの」


「のぞみさんは博学才穎ですっ」


「ありがとうのぞみちゃん、助かったよ……」




 あと一歩で神を酷く冒涜する言葉を吐くところでした。




「天王寺さん、硬直してたからどうしたのかな? と思ったんだけど、間に合って良かったわ」


「問題を見た瞬間、胃から汗が出たよ……。というか、これって鉄道クイズ?」


「どうやら出題の範疇(はんちゅう)が想定以上に広いようね」


「鉄道が絡んどったら何でもアリ! みたいな感じなんかな」




 うーむ、完全に油断していました。今までの傾向から、てっきりこの辺りの地域に関する鉄道の問題が出るものだとばかり……。今回はのぞみちゃんのお陰で助かりましたが、次からは気を引き締めて掛からねばなりません!




「それにしても、原作は変なタイトルの小説なんだね。『身体』って」


「ん、まあ身体というか……」




 あれ、違うのかな? まあいいや、気が向いたら学校の図書館で借りてみましょうかね。




 後日、そのタイトルの意味を知った私は背筋が凍りついたのでした……。




挿絵(By みてみん)




 さて、カプセルの中から出てきたアイテムは『金の宝箱』ですが……。




「どうやら宝箱を開けるには、鍵が必要みたいね」


「ほんなら、さっき佐賀駅で取った銀の鍵は、銀の宝箱で使うっちゅうことやろか?」


「どこかで金の鍵も見つけないといけませんね」




 なるほど、宝箱に応じた鍵がないと開かない仕組みのようです。モンスターが落とすカプセルの中身はランダムに決定されるそうで、いつどこで金の鍵を入手できるかは全くの運次第……。うーん、宝箱の中身が気になって仕方ないので、できるだけ早く金の鍵をゲットしたいですね。




□筑後船小屋16:25 → つばめ330号 → 久留米16:33




 この後私たちが向かうのは熊本方面ですが、筑後船小屋駅は基本的に各駅停車のつばめしか停まらないため、一旦久留米駅に戻ります。千綿駅の時と同じ作戦です。




「のぞみちゃんは本をよく読むの?」


「うん。ずっと本が友達だったから……」


「あ、そうなんだ……」


「天王寺さんは読まないの?」


「そ、そうね。まああんまり、かな? あはは……」


「そらまあ、この人の愛読書は時刻表やし」


「失礼ね、歴史書とかも読みます!」


「そういえば図書館で『奥羽本線の歴史』みたいな本を読んでたっけ」


「まあそうなんだけどさ……」




挿絵(By みてみん)




 久留米駅での乗り換え時間は二分。対面のホームへ急ぎましょう!




□久留米16:35 → さくら415号 → 熊本16:55




☆列車カード獲得!

N700系『さくら』

レア度★

10ポイント




 列車カードも七枚目になりました。来たるべき『その時』に向けて、着実に戦闘態勢を整えていくのです。




 私たちを乗せたさくら415号は、九州新幹線の最高速度、時速260キロメートルで熊本へ向かって驀進南下中です。


 車窓に流れていくのどかな田園風景をぼんやり眺めていると、不意にタブレットのバイブレーターが作動しました。さあ、遂に『戦いの時』がやってきた模様です!




◆対向列車カードバトルについて

・同一路線において、参加チームの乗車している列車同士が擦れ違う場合、対向列車カードバトルが発生する。

・カードバトルは、競技区間を運行しているJR旅客列車の列車カード三十三種三枚ずつの九十九枚と、『JokeR九州』カード一枚、及びそれまでにチームが獲得した列車カードを使用して行う。

・勝利チームは、敗北チームから100ポイントのバトルボーナスを奪い取ることができる。


『ルールの詳細』

・基本的なゲーム性はポーカーに類似する。まず百枚の山札から、対戦チーム双方にカードが四枚ずつランダムに配られる。その中からホールドするカードを選択し、残りは山札のカードと交換する。交換後の四枚に手持ちの列車カードから任意の一枚を加えた五枚が最終的な手札となり、より強い役を完成させたチームの勝利となる。

・『JokeR九州』カードはオールマイティの役割を果たす。レア度は五つ星に相当する。

・役は強い順に、ファイブカード、フォーカード、特殊役A、フルハウス、特殊役B、スリーカード、特殊役C、ツーペア、特殊役D、ワンペア、ハイカード(役無し)である。

・全ての列車カードはその列車に関連する属性を持っており、手札を同じ属性のカード五種、または特定の組み合わせで揃えた場合、特殊役A~Dが成立する。カードは最大で五つの属性を併せ持つ。

特殊役Aとなる役 『九州温泉巡り』『花鳥風月』

特殊役Bとなる役 『新幹線』『臨時列車』『青春の旅』

特殊役Cとなる役 『D&S列車』『国鉄型』

特殊役Dとなる役 『特急』

・両チーム共に同じ役だった場合、手札五枚の合計レア度の多い方を勝ちとする。それでも並んだ場合は引き分けとし、両チームにポイントは付与されない。

・特殊役B以上の役で勝利した場合、プレミアムボーナスとして最大で500ポイントを奪い取ることができる。




「みんな、カードバトルが始まるよ!」


「なるほど、擦れ違いの一分前にバイブレーションで予告してくれるのね」


「よっしゃ、あたしらの初陣やな!」


「相手はどこのチームなのでしょうか?」




 タブレットの画面がバトルモードに変化しました。対戦相手は上りのみずほ606号に乗車している、宮崎県代表の日向灘高校チームのようです。バトルスタートまでの秒数がカウントダウンで表示されています。


 やがてカウントがゼロになった瞬間、私たちが乗っているさくら415号の隣を、みずほ606号新大阪行きが一瞬で擦り抜けて行きました。そして同時にカードバトルが開始されました!




「基本はポーカーの要領なんやな」


「このルールだと、これまでに入手した手持ちの列車カードが多いほど有利になるわね」


「最強の『JokeR九州』カードが来てほしいですねっ」




 さて、最初に配られたカードは、『ひかり』『日南マリーン』『かもめ』『海幸山幸』の四枚でした。手持ちの列車カードに『かもめ』があるので、とりあえずワンペアは確保できそうです。




「ドローまでの制限時間は六十秒ですっ」


「属性がバラバラだから、特殊役は難しそうね」


「ここはセオリー通り、『かもめ』をホールドして残りは交換しようか!」




 私たちは『かもめ』以外の三枚をドローすることにしました。相手の日向灘チームは一枚だけ交換のようです。もしかして何か強い役が入っているのでしょうか……?


 入れ替わりに配られた三枚は、『にちりん』『にちりん』『或る列車』でした。『にちりん』が二枚入っていますね、これはラッキーです!




「よっしゃ、ツーペアや!」


「この場合、『かもめ』より『或る列車』を出したほうが得策よね」


「うん、レア度の高いカードが優先だもんね!」




 手持ちカードから『或る列車』を手札に加え、『或る列車』『或る列車』『にちりん』『にちりん』『かもめ』のツーペアが完成しました。


 そして、どうやら相手チームもカード選択が終わったようです。さあ、勝敗を決する瞬間です!




 カードオープン!




 日向灘チームの役は、『ソニック』『ソニック』『みずほ』『みずほ』『有明』のツーペアでした。




「おっと、相手もツーペアやな!」


「でも、こちらには五つ星レアの『或る列車』が入っているから、星の数は圧倒的だわ」


「わたくしたちの勝利ですねっ」




 タブレットの画面に『WIN』の文字が大きく表示されました!




「やったあ!」




☆バトルボーナス獲得!

100ポイント




 私たちはカードバトルの初戦を見事勝利で飾ることができました。


 おそらく今後何度も発生するであろう対向列車カードバトル。勝てばプラス100ポイント、負ければマイナス100ポイントと、その差はまさに天国と地獄。勝負は時の運とはいえ、できるだけ勝っていきたいところであります。そのためには沢山の列車カードを収集しておくことが重要です。


 次の熊本駅では、一気に三枚の列車カードを手に入れる予定なのです!




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