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13/19

変顔女子

 再び鹿児島中央駅です。次の列車までの空き時間を利用して、セルフ列車カードを獲得しましょう!




 四番線には指宿枕崎線のD&S列車、薩摩半島に伝わる浦島太郎伝説にちなんだ名前の『指宿のたまて箱』が停車中です。




挿絵(By みてみん)




「えらいパンチ効いた顔の列車やな」


「なかなか前衛的ですね」




『いぶたま』という愛称でも呼ばれるこの列車は、縦に半分ずつ白黒で塗り分けられた斬新な塗装が特徴です。これはたまて箱を開ける前後の浦島太郎の髪をイメージしているそうです。更にドアが開いた際には、たまて箱の煙に見立てた霧が噴射されるギミックも搭載しているようです。お客さんに楽しんでもらおうと、色々と凝った創意工夫が施されていますね。




 客室乗務員さんが見当たらなかったので、近くの駅員さんに撮影をお願いすると、これまた快く撮ってくださいました。みなさん温かいですね。




「ぶはっ! あやめちゃん、何やのこの顔は!」




 タブレットの写真を見ると、あやめちゃんが三つ編みのおさげ髪を両手で持ち上げ、変顔でポーズを決めていました。




「あはは、いつの間に!?」


「面白いわね、次はみんなで変顔しましょうか」


「ウケて良かったですっ」




 あやめちゃんは最高のムードメーカーです。チームを明るくしてくれる太陽のような存在ですね!




☆列車カード獲得!

キハ47形『指宿のたまて箱』

レア度★★

30ポイント




 ここからは長距離移動の連続になります。


 私たちは鹿児島名物のかき氷、『しろくま』を買って列車に乗り込みました。




□鹿児島中央16:18 → きりしま14号 → 宮崎18:26




「しろくまを発明した人は天才やな!」


「ほんと美味しいよねえ」


「冬にこたつで食べるしろくまも至高の逸品なのよね」


「わたくしの家の冷凍庫には、四季を通してしろくまが入っていますっ」




 九州では『しろくま』の名を冠する氷菓がいくつかのメーカーで製造されていて、メーカーごとに特色のあるしろくまを味わうことができます。また、喫茶店などでもオリジナルのしろくまを提供しているところが沢山あり、九州の食文化のひとつになっています。


 私たち九州人にとっては子供の頃から馴染み深いしろくまアイスですが、全国的な知名度はいかがなものでしょうか? とっても美味しいので、九州にお越しの際は是非食べてみてくださいね。




挿絵(By みてみん)




 私たちがしろくまに齧りついている間に、きりしま14号は鹿児島中央駅を発車、一路宮崎方面へ向かって走り出しました。




☆列車カード獲得!

787系『きりしま』

レア度★

10ポイント




 きりしま14号は宮崎県に入り、都城駅に到着しました。この都城駅はメダル駅なのですが、列車を降りてクイズモンスターを探す時間がありません。




「停車時間三十秒ではさすがに無理やな」


「もし乗り遅れたら洒落になんないからねえ」


「ハイリスク・ノーリターンの賭けはできないわね」


「ハイクスリ・ノータリーンはいけません」




 ここまで全てのメダル駅でクイズに挑戦、そしてボーナスを獲得してきただけに残念ですが、私たちの戦略上仕方ありません。ここはメダル獲得だけで辛抱なのです。




☆駅メダル獲得!

都城

50ポイント




 都城駅を出発してしばらく、きりしま14号は森の中の駅でもない場所で停車しました。ここは単線区間において対向列車と行き違うために設けられた信号場です。


 こんもりとした森の木々を眺めながら対向列車を待っていると、久々にタブレットのバイブレーターが作動しました。




「あんッ……」


「あら、カードバトルですねっ」


「そういや今日は初めてやな。というか、あんたバイブに敏感に反応し過ぎやろ」


「だって突然来るんだもん……」




 どうやら対向のきりしま17号に、どこかのチームが乗車しているようです。




「……ふう。今回の対戦相手は、沖縄県代表の島唄商業だね」


「沖縄かあ、ええなあ~」


「行ってみたいもんだねえ」




 小学校高学年の頃からあずさと二人で、あずさが部活で忙しい時には単独で日本全国列車の旅を敢行していた私ですが、鉄道では辿り着けない沖縄県は唯一残された未踏の地なのです。




「そうだ! 優勝したらさ、副賞の旅行券で沖縄のビーチリゾートなんてどうかな!?」


「それ、ナイスや!」


「心震えるほど賛成ですっ」


「名案ね、是非行きたいわ」




 楽しみだなあ、どんな水着を買おうかな? やっぱり定番の花柄ビキニがいいかな? などと取らぬ狸の皮算用的な妄想をしていると、向かいの線路に鹿児島中央行きのきりしま17号が停車しました。


 おや、ちょうど私たちの正面に制服を着た四人組の女の子が……。きっと島唄商業のみなさんですね。




「あら、手を振ってくれてますよ」


「お互いに頑張りましょうねえ!」




 車窓越しにみんなで手を振り合ってエールの交換です。この大会のライバルであるのと同時に、過酷な旅に挑んでいる同志でもありますからね。こんな人里離れた山奥の信号場での巡り会い、何だか妙に嬉しくなるものです。




 一足先に私たちのきりしま14号が発車すると、カードバトルが始まりました。


 最初に配られたカードは、『なのはな』『つばめ』『DENCHA』『日南マリーン』です。




「あっ、『快速・普通』の属性が三枚来ましたっ」


「ということは『つばめ』を切って、『SL人吉』『シーサイドライナー』『いさぶろう・しんぺい』のどれかが来れば、特殊役Bの『青春の旅』だね! 青春18切符でも乗れる列車揃いだ!」


「三十三種の中で三種ね。プレミアム役というだけあって、確率的にはなかなか難しいわね」


「それに、ワンペアが確定する『つばめ』を捨てることになるんやな」


「でも、何だか引けそうな気がするよ! 何ならもう一回ジョーカーを引いちゃえばオールオッケーさ!」


「あんたえらい強気やな! ほんなら狙ってみる?」


「カードバトルは連勝中だし、勢いに任せてチャレンジするのも良いかもしれないわね」


「猪突猛進ですねっ」


「よし! じゃあ『つばめ』を交換するね!」




 特殊役Bが成立すれば、プレミアムボーナスゲットなのです! 一気にトップとの差を詰めるチャンス! さあ来いこの野郎!


 気合いを込めてドローをタップ! 配られたカードは……、『きらめき』。




「うわっ、これアカン奴や!」


「うぐぐぐ、全然きらめいてないよ……」


「残念ながらハイカードね……」


「茫然憮然です……」




 何の根拠もない私の強気が裏目に出て、無様にも役なしです……。とりあえず『或る列車』を手札に加えますが、さすがに分が悪そうですね。




 カードオープン!




 島唄商業は、『九州横断特急』『指宿のたまて箱』『ゆふ』『A列車で行こう』『シーサイドライナー』と、見事に『国鉄型』の属性で揃えた特殊役Cでした。完敗です。




★バトル敗北

 マイナス100ポイント




「ごめんね、負けちゃったよ……」


「積極的に攻めた結果だし、仕方ないわ」


「せやな、また次勝ったらええねん」


「七転八起ですっ」




 悔しいですが、ここは潔く負けを認めるしかありません。勝負事は気持ちの切り替えが大事なのです。また次の機会にリベンジしましょう!




挿絵(By みてみん)




 さて、きりしま14号は終点、宮崎駅に到着しました。


 背の低い私にとって、カバンを座席上部のラゲッジスペースに出し入れすることは至難の技なのです。




「はい、天王寺さん」


「ありがとう! いつも悪いねえ……」




 この旅が始まって以来、列車に乗る度に悪戦苦闘していた私を見かねたのか、のぞみちゃんが私のカバン収納&取り出し係を引き受けてくれているのです。




「せめてあと五センチ背が高ければ……。ガッデム!」


「はるか、最近話題の『確実に背を伸ばす方法』があるらしいで」


「えっ、ほんとに? どどど、どんな方法!?」


「イリザロフ法っていうんやけどな……」


「背が伸びるんだったら何でもやるよ! 耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶよ!」


「わざと足の骨を折って、そこから少しずつ伸ばしていくんや」


「……やっぱり結構です」




 そんなもんできるか馬鹿!


 もういいよ来世に期待するよ……。




☆駅メダル獲得!

宮崎

50ポイント




 南国宮崎とはいえ、夕暮れ時にもなると随分過ごしやすいですね。何となく大分よりも涼しく感じます。都会度に比例して暑さは変化するという私の仮説が信憑性を増してきました。




 宮崎駅では乗り換え時間に多少の余裕があります。さあ討伐にレッツ・ゴー!




「何だか久し振りのモンスター探索だね!」


「駅前には椰子の木が沢山植栽されているのね」


「おっ、椰子のてっぺんに何かおるで!」


「マンゴーのオバケさんですねっ」




『マンゴー汁プッシャ~! クイズを出すマンゴ!』




 えっと、何か色々と問題がありそうですが、大丈夫なのでしょうか?




◎鉄道クイズ・宮崎

問題 一九七九年、リニア宮崎実験線にて当時の世界最速である時速517キロメートルを記録した車両は?


A ML200

B ML300

C ML400

D ML500




 ふっ、これは簡単だね。時速500キロを目標に開発された車両なんだから、答えは当然、DのML500!




○正解!

アイテム獲得!

『グリーン券引換券』




「はるかさん、楽勝ですねっ」


「えへへ、日本史は苦手だけど、鉄道の歴史はバッチコーイだよ!」


「ほう、まるで日本史だけが苦手みたいな言い方やな。十字軍を国境なき医師団みたいなもんやと勘違いしてたのはどこの誰やったっけ? あん?」




 この女に天罰が下りますように……。




 さて、呪いの言葉を唱えながら再び宮崎駅のホームに上がると、日南線のD&S列車『海幸山幸』が回送待ちで停車していました。




挿絵(By みてみん)




「あっ、これはラッキーだね! 時刻表には載ってなかったけど、たまたまこの時間に回送してたんだ!」


「これも変わった車両やな~。車体の外側に木の板が貼ってあるで!」


「ログハウスみたいですね」


「一号車が山幸、二号車が海幸なのね」




 海幸山幸のコンセプトは『木のおもちゃのようなリゾート列車』ということで、内装も外装も宮崎特産の飫肥杉がふんだんに使われています。




「このキハ125形400番台は、元々高千穂鉄道で走っていた車両なんだよ。水害が原因で高千穂鉄道が廃線になり、職場を失ったこの車両をJR九州が購入して海幸山幸に改造したのさ」


「ほう、そうなんや。高千穂といえばめっちゃ高い鉄橋があるところやんな?」


「そうそう、水面からの高さが日本一だった高千穂橋梁だね。今は観光名所になっていて、軽トラを改造したトロッコ列車で鉄橋を渡ることもできるそうだよ」


「高千穂は竹田からも結構近いわね」




 大分県竹田市と宮崎県高千穂町は、県境を挟んでお隣さんなのです。




「ねえねえ、今度みんなで高千穂に行ってトロッコ列車に乗ろうよ!」


「……あたしが高所恐怖症なんを知ってる上で、そんなタワケたことを言うとるんやな?」


「あら、諏訪さんにも怖いものがあったのね」


「意外ですねっ」


「もう! 絶対イヤやからな!」


「えっと、竹田から高千穂行きのバスは……」


「やめろ! 調べんでええ!」




 普段から私に酷いツッコミをしている仕返しです。縄で縛り付けてでも連れてってやるんだから!




 おっと、回送列車が発車してしまう前に撮影しないといけませんね。辺りに駅員さんがいなかったので、たまたま近くにいたOL風のお姉さんにお願いしました。




「うん、良いっちゃよ。このタブレットで撮るんね?」




 宮崎訛りがかわいいお姉さんです。




「おっしゃ、みんな変顔するで!」


「オッケー!」




 お姉さんにはとんだ災難だったかもしれません。突然見知らぬ四人組に撮影を頼まれ、いざ撮ろうとすると全員妙ちくりんな顔でポーズを取っているのですから。




「アハハ、てげおかしっちゃが! ……あ、ごめーん、手が震えて上手く撮れんやったかも」




 いえ、バッチリ大丈夫ですよ! こちらこそおかしな顔をしてすみませんでした!


 お姉さんにお礼を言って、私たちは隣のホームに入ってきた列車に乗り込みました。




□宮崎18:41 → にちりん26号 → 大分21:48




「うわ、みんなひっどい顔!」


「恥も外聞もあらへんわ!」


「のぞみさんが一番面白いですっ」


「こんな顔で写真を撮られたのは生まれて初めてだわ……」


「のぞみちゃんが『みんなで変顔しよう』って言い出したんやんか!」


「うん、確かにそうだったね!」




 タブレットの変顔写真を見てみんなで大笑いです。たまにはこういう写真もいいですよね!




 さて、大会本部との通信が終わったようですが……、あれ?




「なぜか列車カードにはならなかったみたいだね……」


「何でや? 変顔したから?」


「あら、『九州レールアスロンパスで乗車可能な列車は、実際に乗車しないと列車カードは付与されません』と書いてあるわね」


「そっか、海幸山幸には自由席があるから、私たちの切符でも乗れる列車なんだね」


「至極無念です……」




 残念ながら海幸山幸の列車カードを獲得することはできませんでしたが、最高に面白い写真が撮れたから満足なのです!




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