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昔書いたやつ

わ・た・し、の闘魂注入

作者: 粟家 大三治

年をとると減るもの、

と一口に言ってもたくさんある。

コラーゲンや

お肌のハリ、

髪のうるおい、

そしてなによりも

闘魂

である。


私も例にもれず

最近、闘魂が減ってしまい

慢性化した関節の痛みなどに

苦しんでいた。


そんなある日、

“闘魂注入”

とやらをやってくれるという

某エステの噂を耳にし、

さっそく向かってみることにした。


そこには

人がたくさんいた。


闘魂注入をお願いした私は

なぜか他の人とは違う部屋に

通された。


松脂のような

ワセリンのような

不思議な香りが漂っているが、

部屋が薄暗いため

なんなのかよくわからない。


やがて大音響の曲が

流れだしたかと思うと

ドライアイスの煙が吹き出し

スポットライトの中に

一人の男の姿が浮かびあがった。


その直後、私にもライトがあたる。

その時わかったのだが

いつの間にか私の四方は

ロープで囲まれており、

どうやら私は

ボクシングやプロレスであるところの

リングのようなところに

いるらしかった。


突然、乾いた鐘の音が響き渡る。


状況がよくわからず

困惑している私を無視し

男は

「バカヤロー!」

と叫び、私の頬をしたたか打つ。


いきなり殴られたものだから

驚くやら腹が立つやら、

気付けば私は

「なんだコノヤロー!」

と平手打ちを返していた。


それからしばらく

殴りあったり

掴み合ったり

投げあったり

関節を取ったり取られたり

色々していたのだが、

私は惜しくも判定で負けた。


控え室に戻る際、

バケツを持った知らないおじさんに

「手数じゃあ負けてなかったな。

 いやぁ、いい試合だったよ。

 しかし惜しかった。

 ホームタウンデシジョン、

ってぇやつさ。

 どこの国でも

 そこらへんの基準は

よろしくできてると見える。

 ま、気を落すな。」

と励まされたが

意味がわからない。


なんだかよくわからないままに

帰宅。


闘魂注入が

ヒアルロン酸注入のようなものだ

と思っていた私が、

あの「バカヤロー」の一撃こそが

それだったのだ

と気付いたのは、

試合の2週間後

夕飯用にと鶏肉を煮込んでいる時だった。


試合の日以来、

不思議と関節の痛みも消え、

いつからか

次の試合を待ちわびている私には

確かに

闘魂が

注入されたものらしい。


次の試合に勝って

ランク入りすれば

後援会が

タイトル挑戦への交渉をはじめる、

との約束をしてくれたので

練習にも身が入り、

充実している

今日この頃の私。

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