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09ーアルベルク視点ー

アルベルク視点になります。

彼女(シックス)話をしてみて、やはり変な人間だと思った。彼女を初めて見たのは数ヶ月前のことだ。


エメル国第二王子である俺は学生の内から騎士団に所属していて毎日のように国の壁を越えて魔物退治をしている。騎士団に所属すること自体は学生でも珍しいことでもないが、3年生の内に小隊の副団長というのは珍しい。王子だからではなく実力で試験を受けて取った地位だがまだまだ疎まれたりもしている。アメル国第一王子の兄は剣が余り得意ではないが、政治経済や人を見る能力が高い。今は政治を父から学び、じきに王になる。そんな兄を俺は剣で国を守り、兄を支えていきたいと日々鍛錬と魔物討伐に明け暮れている。



■□■□■□■□■□■□

いつものように魔物討伐を終えて、戻ると次々と声をかけられる。第二王子だからと近づいて来る女共には流石にうんざりだ。最初は苦笑い程度だったがあまりの勢いに同じ小隊のやつらは最近では哀れみの目で見てくるのが逆に辛い。当たり障りのない事を言ってその場を離れ、逃げるように図書館に来ていた。ようやく1人になれると思って図書館の奥の誰も近寄らないような場所にたどり着くと彼女を見つけた。


はじめは昼寝でもしようかと進んでいたが奥の薄暗いところでいきなり色素の薄い青色の長い髪が見えた。前髪が長く顔が見えなくて、一瞬幽霊かと思った。

声にならない驚きを飲んで、よく目を凝らすと学園の制服を着ていて足があるのが見えた。なんだ、ちゃんと人間なんだと認識してこんな所に人なんて珍しいと思って見えた彼女は大きな分厚い本を一生懸命に指でなぞりながら読んでいた。こんなに近くにいるのに俺の存在に全く気付いていなかったのが、少し面白かった。

それから図書館に行く時には彼女の姿を見てから昼寝や騎士団の書類を始末するようになった。

一応、邪魔をしないように少し離れた所にはいたのだが、彼女は全く気付いていなかったようだ。あの日がくるまで。


まさかいきなりランプが消えるとは思わなかった。珍しく報告書の始末が長引いていて閉館の時間に気づかなかった。とりあえず手から光を灯しながら受付と出口まで行ってみたが誰もいなかった。ふと、誰も居ないとは思いつつも彼女がもしかしたら居たらと思って彼女を探した。

すると見事に彼女はいつもの場所にいた。状況を理解して居ない彼女に説明をしたら予想外の答えが返ってきた。「明かりを貸して欲しい」と。前日のぶつかったことさえもあまり覚えていなそうな答えだったが一応、お願いをされたらしょうがないなと思って本が読み終えるまでそばにいた。近くにいると薄い青色の髪はとても綺麗だった。


無事、出れた時には彼女の事を知りたいと思った。なにを考えているのかと。折れそうな細い手を引いて寮に送っていったが、慣れない事をしてると緊張した。王子だからと特別扱いをしないのは小隊のやつらと家族くらいだったが、その中に彼女も加わった。きっと王子だと分かっていなそうだ。学園の人たちは俺のことを知っていると思っていたが新入生の彼女は知らないのだと、安堵したような自意識過剰で恥ずかしいような。




次の日に図書館に行くとまだ彼女は来ていなかった。彼女を待っていたのに、避けて通ろうとするので思わず声をかけた。

「昨日ぶりだな。」

もっと上手いこと言えれば良かったと思って少し後悔したが、控えめな

「はい。」

という声が下から聞こえてきて、嬉しい。


難しくもない言葉を調べている彼女との少しぎこちない会話も俺にとって面白かった。

マルスに頼んで彼女の事を調べてもらったがどうやら留学生だったようでこの国の事を知ろうとしていたようだ。最初は間者かと思ったが世間知らず過ぎてその考えはもう消えた。彼女に思わず言葉遣いを教えるなんて、我ながら馬鹿みたいな考えに

「よろしくお願いします。」

と言われて思わず、頭を撫でてしまった。彼女の柔らかい細い髪の毛に触れてしまった。

少し血生臭いのは、魔物を討伐してきたからだろうか。



今日はこれからまた鍛錬があるため、いそいでその場を後にした。これから彼女に色んな事を教えてやるのが楽しみだと感じながら。

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