わたしの小さな、かみさまは。
また、いなわらと、布地の、焼けるにおいがした………。
沢山の炎と焔のなかに揺れている
大・小さまざまなかたちのツクリモノたち。
このなかに、去年まで私のココロをとらえていた
かの存在とおなじようなモノは、果たして、いるのかしら…?
もえる炎を見下ろす高台にて
そう視線を見るともなく、もえるモノたちに向けていた一人の娘は、
その体の大半を服と巻き布で奇妙に覆われて
だがきれいな朝焼け色の、瞳を宿していた。
毎年毎年、きたるべきときに次の年の恵みを祈る、炎ゆらめく村では
一時、この娘は名をはせた。
きょねんまでは、娘も、この炎にゆられ天に消えていく、さまざまなかたちのモノのようなのを毎年つくりあげていたのだ
燃えてきえていくのは、かみさまだった。
それぞれの、つくりてののぞむ、かみさま。
つくりての、その想いと、たましいを込めて出来上がるモノ。
さまざまな材料でつくられる。
さまざまな願いがこめられる。
娘が得意としていたのは、いろんな布でできた中身がワラのかみさまだった。
「かかしのかみさま……」
つぶやくと、ハイ、と声が聞こえるきがした。
たましい込めたツクリモノには、かみさまがやどる。
かみさまを、炎で天に還せば、かみさまはつくりての願いをかなえてくれる。
それがこの村の年に一度のお祭りの言い伝え。
炎にささげて、燃やして還そう…
「もやしたくなかった。」
天に還れば、願いが叶う
「私のねがいはかなわない。」
たましいをこめれば、かみさまが宿る
「宿るものは、たいせつなもの」
来年もかみを宿そう
「いつでも逢えると、あなたはいったのに。」
彼女がツクリモノに宿していたのは、小さな小さなかみさまだった。
古代にいた、たくさんの大きなちからをもつ神々は、
いつしか、その存在をわすれられ
そのちからと体を、ちいさく、ちいさく、させながら
いつしか一人の娘のツクリモノに宿っていた。
燃えてもそらにはかえれない。
神のせかいには還れない…。
ねがいをゆいいつのチカラにかえて、
「かれ」は、そのそんざいを、むすめのために使いきろうとした。
ゆらゆらと、もえている。
かみさまに戻れなかったものが、もえている。
わたしのねがいは、あなたとともにあることだったの。
いつしか
日の暮れるのとははんたいに輝きだす炎のなかへ
朝焼けのきらめきは降り立っていた。
さあ、そのそんざいを掛けてねがいをかなえよう。
炎のちからで、かみさまは還る。