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1年目・第5話 初めての魔物退治(前編)

1ヶ月以上のご無沙汰となり、申し訳ありません。


本編第4話を投稿します。

お楽しみいただければ幸いです。


2015/9/26 ステータスの数値に誤りがあったため訂正

「トモキ、お前のレベルは今どのくらいだ?」


 智樹が異世界(テライア)に召喚されて1週間が経過したその日。訓練を終えた智樹にニルスがそんな事を尋ねてきた。


「レベルですか? 少々お待ちを」


 ニルスの問いに答える為、自分に“ブラウズ”をかけてみる智樹。すぐさま脳裏に自身のステータスが表になって浮かび上がる。



 【名 前】沖田智樹

 【性 別】男

 【年 齢】20歳

 【種 族】人間 


 【レベル】8


 【H P】122(72+50)

 【M P】259(129+130)


 【筋 力】53(26+27)

 【耐久力】40(25+15)

 【器用さ】63(26+37)

 【敏捷性】56(25+31)

 【反 応】66(25+41)

 【知 力】20(13+7)

 【魔 力】72(25+47)

 【加 護】18(13+5)



 【称 号】


  勇者(HP&MP+50、筋力、耐久力、器用さ、敏捷性、反応、魔力+15、加護+5)

  教師(知力+7)

  凄腕料理人(器用さ、反応+10)



 【各種補正】


  格闘攻撃ダメージ+17

  近接攻撃ダメージ+17

  射撃攻撃ダメージ+21

  魔法攻撃ダメージ+24


  格闘攻撃命中率+10%

  近接攻撃命中率+10%

  射撃攻撃命中率+12%

  魔法攻撃命中率+14%


  防御成功確率+12%

  回避成功確率+12%


  物理防御力+9

  魔法防御力+9



 【スキル一覧】


  長剣術 ランク3(筋力+6 器用さ+6)


  弓術 ランク3(器用さ+6 反応+6)


  打撃術 ランク3(筋力+6 敏捷性+6)


  投擲術 ランク4(敏捷性+10 反応+10)


  魔力操作 ランク3(魔力+6 MP+15)


  MP回復速度上昇 ランク3(MP回復速度50%上昇)


  複数詠唱破棄 ランク3(1度の詠唱で低級魔法を4回まで同時発動可能。魔力+6 MP+15)


  火属性魔法 ランク2(魔力+4 MP+10)


  水属性魔法 ランク2(魔力+4 MP+10)


  風属性魔法 ランク2(魔力+4 MP+10)


  土属性魔法 ランク2(魔力+4 MP+10)


  無属性魔法 ランク2(魔力+4 MP+10)



「レベルは8ですね。あと、投擲術と各魔法のランクが1ずつ上がっています」

「訓練を始めて1週間でレベルを7上げたか。さすがは勇者といったところだな」

「いえ、ニルス殿やルィーナ殿の指導のおかげです」

「そう言ってもらえると教える側としては嬉しいものだがな。それでトモキ、そろそろ魔物退治をやってみる気はないか?」

「魔物退治ですか?」


 ニルスの言葉にそう答えながら、ついに来たか。と内心呟く智樹。

 3年後に復活する魔王を倒す為にも、自分は強くならなければならない。その為にも実戦は最高の訓練になる。


「あぁ、俺達相手の訓練だけじゃ、レベルアップにも限界があるからな。やはり、実戦で腕を磨くに越した事はない」

「たしかにその通りですね。正直、今の自分がどの位戦えるのか、試してみたくもあります」

「なら、決まりだな。明日の朝一で冒険者ギルドに行くとしよう」


 

 翌朝。智樹はニルスと共に城下町にある冒険者ギルドを訪れていた。

 ニルスの先導で建物の中に入り、一直線にカウンターへと向かう。


「これはニルス団長。今日はどういった御用で?」

「新人の付き添いだ」

「沖田智樹と言います。よろしくお願いします」

 

 ニルスの言葉に続く形で自己紹介し、受付嬢に一礼する智樹。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。冒険者ギルドについてのご説明は必要ですか?」

「お願いします」


 智樹の返事を聞き、冒険者ギルドへの説明を始める受付嬢。その内容を纏めると以下のようなものとなる。


 ギルドランクは9級から1級の9段階。一般的に6級以上は一人前の冒険者と言う扱いのようだ。

 基本的に自分のランクより上の仕事は受けられないが、パーティーを組んでいる場合や、ギルドが特別に認めた場合は1ランク上の仕事を受ける事が出来る。

 登録は人間族の場合15歳から可能。ただし、成人である18歳に達するまでは、受けられる仕事に一部制限がかけられる場合がある。

 また、魔物の大量発生といった緊急事態が発生した場合、ギルドから召集がかけられる事がある。正当な理由なくこれを拒否した場合は多額の違約金を払う事になり、最悪冒険者資格の剥奪もある。

 予断ではあるが、宮廷騎士団や宮廷魔術師団の団員達も冒険者ギルドに登録しており、魔物討伐等の依頼をこなしているそうだ。


「以上で説明を終わりますが、何かご質問はありますか?」

「いえ、特には」

「では、こちらの用紙に必要事項の記入をお願いします」

「わかりました」


 受付嬢に記入用紙と羽ペンを貰い、必要事項を書いていく智樹。この1週間、訓練の合間を縫って異世界(テライア)の文字を練習していた為、それほど時間もかからずに記入を終わらせる。


 後で、ニルスから聞かされた話だが、あの用紙と羽ペンには特殊な魔法が付与されており、嘘の情報が書けないようになっていたそうだ。


「これで良いですか?」

「はい、記入された情報を基に登録票をお作りします。しばらくお待ちください」


 智樹から受け取った記入用紙を手に、奥へと入っていく受付嬢。


「登録票は10分もあれば出来上がる。手頃な依頼がないか見てみるか?」

「そうですね」


 登録票が出来上がるまでの間、壁に貼られた無数の依頼書を眺めていく智樹とニルス。


「初めての魔物退治なら、スモールゴブリンかジャイアントキャタピラーあたりがお勧めだな」

「依頼の掛け持ちは?」

「2つまでなら可能だ。失敗した時のリスクは大きいがその分実入りも大きい。まぁ、トモキの実力なら問題はないだろうがな」


 そんなことを話していると、受付嬢が戻ってきた。


「こちらがトモキ様の登録票になります。紛失した場合は再発行料として大金貨1枚が必要となります。また、一定期間内に3回以上登録票を紛失した場合は、冒険者資格の剥奪となりますので、登録票の管理はくれぐれも厳重にお願いします」

「わかりました」


 受付嬢からの注意に頷き、登録票を受け取る智樹。


「軍隊の認識票(ドッグタグ)みたいだな」


 智樹の呟き通り、登録票は地球の軍隊で用いられている認識票(ドッグタグ)そっくりだった。銅製の板に鎖が取り付けられており、首から提げる形だ。


「登録票には魔法が付加されている。トモキ、“ブラウズ”をかけてみろ」

「はい」


 ニルスに言われるまま、登録票に“ブラウズ”をかけてみる智樹。すぐさま脳裏に登録票の詳細な情報が浮かび上がる。



 登録票(銅):9級から7級の冒険者に与えられる登録票。装備する事で魔法防御+1、魔力+5、加護+1



「9級から7級までという事は、6級以上になると新しい登録票が与えられるのですか?」

「はい、6級から4級は銀、3級と2級は金、そして1級冒険者には白金の登録票が与えられます」

「ちなみに俺は4級だ」


 そう言って、首に提げていた銀製の登録票を智樹に見せるニルス。


「なるほど。それじゃあ、1日も早くニルスさんに追いつけるように頑張りますね」


 そう言うと智樹は壁から2枚の依頼書を剥がし、受付嬢に差し出した。


「この2つの依頼、やってみます」



 -スモールゴブリン退治-


 城下町南の森で発生が確認されたスモールゴブリンを7匹退治。

 報酬は小銀貨7枚。過剰分は1匹につき小銀貨1枚を追加報酬とする。


 依頼者:冒険者ギルド

 期限:依頼受諾より2日以内

 討伐証明部位:右手の小指



 -ジャイアントキャタピラー退治-


 城下町南の森で発生が確認されたジャイアントキャタピラーを10匹退治。

 報酬は小銀貨7枚。過剰分は1匹につき銅貨7枚を追加報酬とする。


 依頼者:冒険者ギルド

 期限:依頼受諾より2日以内

 討伐証明部位:触角


 

「スモールゴブリンとジャイアントキャタピラーの退治…いきなりの掛け持ちですが、大丈夫ですか?」

「はい」 

「こう見えても、トモキは相当な実力者だ。俺が保証する」

「ニルス団長がそう仰るなら…」


 ニルスの言葉が後押しとなり、受付嬢は心配そうな顔をしながらも智樹の依頼受諾を許可してくれた。


「よし、次は装備の調達だな。良い店を知っているから案内するよ」 

「ありがとうございます」


 冒険者ギルドを後にした智樹は、ニルスに案内され城下町を歩いていく。10分ほどで1件の武器防具屋に到着した。


「この店は城にも武器や防具を納品している。品揃えと品質は折り紙つきだ」

「これはニルス団長。よくお越しくださいました。今日はどういったご用件で?」

「新人冒険者の付き添いでな。武器と防具を見せてもらいに来た」

「沖田智樹です。よろしくお願いします」

 

 ニルスの言葉に続く形で自己紹介し、店主に一礼する智樹。

 

「これはご丁寧に。私、この店の主をしております。シャピロと申します。オキタ様はどういった武器をご希望で?」

「そうですね…まず長剣を見せていただけますか? 片手両手兼用できるサイズの物を」

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」


 智樹の希望を聞いたシャピロは、智樹の体格も考慮に入れながら、条件に合う物を店の棚の中から探し出す。


「これなどいかがでしょうか?」

「拝見します」


 差し出された一振りの長剣を手に取り、鞘から引き抜く智樹。同時に“ブラウズ”をかけて性能を確認する。



 鉄の剣(上級):全長80cm。質の良い鉄を使って作られており、一般的な物よりも性能が高い。装備する事で格闘ダメージ+40、近接攻撃命中+15



「いいですね。これをお願いします。お幾らですか?」


 数回素振りをして、使い勝手を確認した智樹は、剣を鞘に納めながらシャピロに値段を問う。


「白金貨1枚ですが、ニルス団長からのご紹介ですので、大金貨1枚と小金貨4枚に勉強させていただきます」

「おいおいシャピロ。良いのか?」

「はい、ニルス団長や騎士団の皆様にはいつもお世話になっておりますので、ホンのお礼でございます」

「そうか。なら、甘えさせてもらう」

「ありがとうございます。シャピロさん。あと、投擲に用いる投げナイフや手頃な防具があれば見せてほしいのですが」

「かしこまりました。防具で何かご希望は?」

「出来るだけ動きを阻害しない物が良いですね」

「それでしたら、革製の軽鎧がよろしいかと。ちょうどジャイアントリザードの革で作られた物がございます」


 そう言うと店の奥に保管されていた赤銅色の鎧、篭手、脚甲を持ってくるシャピロ。


「ジャイアントリザードか。この辺りじゃなかなか見かけない魔物だな」

「一月前、5級冒険者のパーティーがイストラト王国との国境付近で仕留めた物を加工させていただきました」

「なるほどな」


 ニルスとシャピロの会話を聞きながら、鎧に“ブラウズ”をかけてみる智樹。


 

 革の軽鎧(上級):ジャイアントリザードの革で作られた革製の軽鎧。一般的な物よりも性能が高い。装備する事で物理防御+12、魔法防御+5


 革の篭手(上級):ジャイアントリザードの革で作られた革製の篭手。一般的な物よりも性能が高い。装備する事で物理防御+5、魔法防御+2


 革の脚甲(上級):ジャイアントリザードの革で作られた革製の脚甲。一般的な物よりも性能が高い。装備する事で物理防御+5、魔法防御+2



「3つあわせてお幾らになりますか?」

「鎧が大金貨1枚、篭手と脚甲がそれぞれ小金貨2枚になります」

「ジャイアントリザードの革を使ってその値段なら、文句なしだな。トモキ、それにしたらどうだ?」

「ええ、そうします」


 ニルスの勧めもあり、ジャイアントリザードの革鎧を購入する事を決める智樹。更に投げナイフを5本購入し、武器防具屋での買い物を終えた。


「全て合わせまして大金貨3枚と小金貨4枚になります」

「白金貨2枚から頼む」

「はい、小金貨1枚のお返しとなります。今後ともご贔屓に」

「あぁ、近いうちに槍の穂先と矢を注文すると思う。その時はよろしく頼む」

「かしこまりました。連絡をお待ちしております」 

「シャピロさん、色々ありがとうございました」


 シャピロに一礼し、店を後にする智樹。

 この後、道具屋で水を入れる革袋や体力を回復させるポーション等を買い、初の実戦への準備は整った。

 ちなみに、今回の支払いは全て宰相(ヴィクトール)からお金を預かっていたニルスが行ってくれた。


 

 それから1時間後、智樹は城下町南にある森の入り口を訪れていた。


「ここか」


 馬屋で借りた馬を近くの木に繋げ、装備の最終確認をする智樹。ニルスの姿はなく、智樹1人だ。


「さて、行きますか」


 軽く深呼吸をして気持ちを静め、智樹は森の中へと進んでいく。5分ほど進むと、目の前の茂みから何かが這い出てきた。


「ミギィィッ」 

「これがジャイアントキャタピラーか。デカいなぁ」


 現れた“ジャイアントキャタピラー”を前に、そんな事を呟く智樹。

 幸い智樹は何とも思わないが、全長1mほどの巨大芋虫など虫が嫌いな女性が見たら間違いなく悲鳴を上げて卒倒するだろう。


「ミギィッ」


 そんな事を考えているとジャイアントキャタピラーは声を上げ、口をカチカチと開け閉めしながら智樹に近づいてきた。


「僕は餌じゃありませんよっと」


 智樹は素早く後ろに下がり、“ブラウズ”をかけてジャイアントキャタピラーのステータスを確認する。


 

 【名 前】ジャイアントキャタピラー

 【性 別】♂

 【年 齢】不明

 【種 族】魔物(巨大昆虫) 


 【レベル】4


 【H P】7(7+0)

 【M P】5(5+0)


 【筋 力】5(5+0)

 【耐久力】5(5+0)

 【器用さ】4(4+0)

 【敏捷性】4(4+0)

 【反 応】5(5+0)

 【知 力】1(1+0)

 【魔 力】4(4+0)

 【加 護】1(1+0)



 【称 号】


  なし



 【各種補正】


  格闘攻撃ダメージ+1

  近接攻撃ダメージ+1

  射撃攻撃ダメージ+1

  魔法攻撃ダメージ+1


  格闘攻撃命中率+1%

  近接攻撃命中率+1%

  射撃攻撃命中率+0%

  魔法攻撃命中率+0%


  防御成功確率+0%

  回避成功確率+0%


  物理防御力+0

  魔法防御力+0



 【スキル一覧】


  なし



「なるほど、見た目通りの巨大芋虫。それがわかれば十分!」 


 ステータスを確認すると同時に、智樹はナイフを1本抜き、ジャイアントキャタピラーに投げつけた。ナイフは一直線にジャイアントキャタピラーの頭部に飛んでいき、深々と突き刺さる。


「ミギィィィィッ!」


 断末魔を上げ、体液を周囲に撒き散らしながらのた打ち回るジャイアントキャタピラーだったが、すぐに動かなくなる。


「…よし」


 ジャイアントキャタピラーの死亡を確認した智樹は、その死骸から触角を切り取り、袋に入れる。頭部に刺さっていたナイフも抜き、体液を布で綺麗に拭き取る。


「あと9匹。この分なら、意外と早く終わりそうだな」


 誰に言うでもなくそう呟き、智樹は森の奥へと進んでいく。



「お覚悟!」 

 

 森を歩く事20分。智樹は早くも10匹目のジャイアントキャタピラーを仕留めようとしていた。

 放たれたナイフが、吸い込まれるようにジャイアントキャタピラーの頭部に突き刺さる。


「これで、1つ目の依頼はクリア。あとはゴブリンか…」


 切り取った触角を袋に入れながら、もう1つの依頼目標であるスモールゴブリンをどう探すか考える智樹。

 ジャイアントキャタピラー同様、適当に森を彷徨っていても見つける事は出来るが、それは非効率的だ。何か、良い方法は無いものか…。


「そうだ。これなら…」


 その時、智樹の脳裏にある思いが浮かんだ。見つけるのが面倒なら、誘き寄せれば良いじゃないか。と。

 早速、智樹は蔓草で編んだ即席のロープでジャイアントキャタピラーの死骸を縛り、肩に担ぐと更に森の奥へと進んでいく。

 

「あった」


 5分ほど歩くと視界が開け、それなりに大きな水場にたどり着いた。早速、ジャイアントキャタピラーの死骸を地面に置き、智樹は姿を隠す。


(ニルスさんの話だと、ゴブリンは悪食で死骸だって喰うらしいし…上手くすれば)


 息を殺しながらそんな事を考えていると、1匹のスモールゴブリンが姿を現した。

 

(来た!)


 スモールゴブリンの動きを監視しながら、“ブラウズ”をかける智樹。



 【名 前】スモールゴブリン

 【性 別】♂

 【年 齢】不明

 【種 族】魔物(亜人) 


 【レベル】5


 【H P】16(16+0)

 【M P】10(10+0)


 【筋 力】15(12+3)

 【耐久力】11(11+0)

 【器用さ】10(10+0)

 【敏捷性】9(9+0)

 【反 応】10(9+1)

 【知 力】3(3+0)

 【魔 力】7(7+0)

 【加 護】2(2+0)



 【称 号】


  なし



 【各種補正】


  格闘攻撃ダメージ+5

  近接攻撃ダメージ+10

  射撃攻撃ダメージ+3

  魔法攻撃ダメージ+2


  格闘攻撃命中率+3%

  近接攻撃命中率+8%

  射撃攻撃命中率+2%

  魔法攻撃命中率+1%


  防御成功確率+1%

  回避成功確率+2%


  物理防御力+3

  魔法防御力+0



 【スキル一覧】


  鈍器術 ランク1(筋力+3 反応+1)



 【装備】


  棍棒(格闘ダメージ+5 近接攻撃命中+5)

  腰布(物理防御+1) 



(やっぱり、巨大芋虫とは一味違うか…お、増えてる)


 スモールゴブリンのステータスを見て、そんな感想を抱いている間にスモールゴブリンは仲間を呼んだらしく、その数を大幅に増やしていた。


(5、6、7…よし、数は十分だ)

 

 奇声を上げながらジャイアントキャタピラーの死肉を貪るスモールゴブリンに溜息をつきながら、近くに落ちていた掌サイズの石を幾つか拾う智樹。

 ジャイアントキャタピラー相手に投げナイフを使って気が付いたのだが、このレベルの魔物に投げナイフを使うのは正直言ってオーバーキルだ。

 ナイフの刃が傷む事を考えれば、無駄に使う事は極力避けなければならない。


「そう言う訳なので…これでもくらえ!」


 言うが早いか、スモールゴブリンに全力で石を投げつける智樹。

 何かの弾ける音と共に、頭部を失ったスモールゴブリンが血を吹き出しながら次々と倒れていく。残りは3体。


「ギ、ギィェ!」

「ギェ! ギェ!」


 突然、仲間の頭が弾け、倒れていく光景にパニックとなる生き残りのゴブリン達。当然、その隙を逃す智樹ではない。


「もらった!」


 全力疾走で一気に距離を詰め、一番近くにいた1体に回し蹴りを放つ。肉の感触を感じた直後、首が90度折れ曲がったスモールゴブリンが吹っ飛び、近くの木に打ち付けられる。残り2体。 


「はぁっ!」


 続けて、こちらに向けて奇声を上げているゴブリンに近づき、その顎に掌打を叩き込む。衝撃で脳を揺らされ、崩れ落ちたゴブリンの首を容赦なく踏み砕いて止めを刺す。


「ギェ! ギェ!」


 パニック状態でその場から逃げ出そうとする最後の1体には、背後から容赦なく石を投げつけ、仕留める。


「よし。これで7体撃破。欲張らずに今日は帰るとしますか」


 そんな事を言いながら、智樹は物言わぬ骸となったスモールゴブリンから手早く右手の小指を切り落とし、袋に詰めると、森の入口へ向けて歩きだした。

 途中、2匹ほどジャイアントキャタピラーに遭遇するが、あっさりと投石で仕留める。

 

「スムーズすぎて、少々怖くなってきたな…」


 そんな事を呟きながら触角を切り落としていく智樹。口調は軽いが、心の中に芽生えた不安はそう小さくはない。


「ラノベだと、こういう時何かしらのトラブルが起きるのがお約そ…」


 そして、その不安は的中した。何かが一直線にこちらへ向かってきたのを察知したのだ。

 

「言わなきゃよかった…」 


 トラブル発生に顔を少々顰めながら、鉄の剣を鞘から抜き、構える智樹。一瞬の間を置いて、茂みから2つの影が飛び出してきた。


「人間?」


 魔物ではない。人間だ。長剣を持った男と、弓を持った女。2人とも全身傷だらけで盗賊の類とは思えないが、身分を確認するまで油断は出来ない。


「と、盗賊じゃない。ぼ、冒険者だ!」


 必死に呼吸を整えながら、首から提げていた銀の登録票を見せる男。女も同じように銀の登録票を智樹に見せる。


「失礼しました。いったい何があったんですか?」


 2人が6級冒険者である事を確認し、剣を収めた智樹は、ウェストバッグから取りだしたポーションを2人に差し出しながら、事情を尋ねる。


「森の奥で魔物退治の依頼をこなしていたんだが、突然見た事ない魔物が現れて…」

「見た事のない魔物?」

「トロールだと思うんだけど、普通のトロールと皮膚の色が違ってて…何より私達の攻撃が全く効かないの!」

「攻撃が効かない?」

  

 女性冒険者の言葉に眉を(ひそ)める智樹。


「見たところ、お2人の武器は長剣と弓…それが効かないほど、防御力が高いという事ですか? 皮膚が恐ろしく硬いとか?」

「硬いんじゃない…柔らかいんだ。スライムみたいにグニャグニャしているのに、剣で切り裂く事も矢で貫く事も出来なかった…それどころか、跳ね返されちまった!」

「何か特殊なスキルを持っている? …今の段階じゃ、判断材料が少なすぎるな」

「怪我をした俺達を庇って、仲間が1人足止めに残ったんだが…多分、長くはもたない」


 1人残った仲間を思い、沈痛な表情を浮かべる男性冒険者。

 

「だったら急がないといけませんね…えっと…」 

「俺はパトリック、パトリック=ワーカーだ。こっちはセシリー、セシリー=アーネス」 

「沖田智樹です。セシリーさん、森の入口に馬を止めています。それに乗って城に向かってください。そして、宮廷騎士団団長のニルス=フレイマー殿か、宮廷魔術師団団長のルィーナ=スィルバーン殿に救援を依頼してください」

「お、お城!? それも騎士団長や魔術師団長なんて、いくらなんでも無理よ!」

「大丈夫です。勇者、沖田智樹の要請だと言えば、2人は動いてくれますから」

「え…勇者…」

「そう言えば、女王陛下が異世界から召喚した勇者って、変わった名前だったけど…」

「ええ、変わった名前の勇者です。パトリックさん、その怪物の所に向かいたいので、案内をお願い出来ますか?」

「あ、あぁ…い、いや、お、お任せください!」


 いきなりの智樹のカミングアウトに呆然としていたパトリックだったが、すぐに我に返り、智樹を連れて森の奥へと進んで行く。

 そして、セシリーも森の入口へと走り出すのだった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

投稿ペースを上げる事が出来ず、猛省しております。


1ヶ月に1話ないし2話掲載できれば…と考えていますが、当面は1月1話掲載できれば良い…そんな程度のペースかもしれません。

こんな掲載ペースですが、今後ともお読みいただければ幸いです。


ご意見、ご感想、誤字脱字の指摘、お待ちしております。

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