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1年目・第1話 波乱の親任式

遅くなりましたが、本編第1話を投稿します。

お楽しみいただければ幸いです。


2015/9/26 ステータスの数値に誤りがあったため訂正

 異世界テライアに勇者として無事召喚された智樹が最初に行った事。それは、テライアに関しての情報を得る事だった。

 女王の執務室に移動し、女王アリシア=ロートファルケン、宰相ヴィクトール=アドラステア、そして女王の生母である王太后クリスティア=ロートファルケンの3人と向かい合い、質問を重ねていく。


 この世界(テライア)の歴史、人種、技術レベル、自分が召喚された理由等々、休憩を挟みながら話し合う事5時間。東の空にあった太陽が西の空に移動した頃、話し合いは終わりを告げた。


「長時間お付き合いいただき、感謝いたします。女王陛下、王太后陛下、宰相閣下」


 眼前の3人に深々と頭を下げた智樹は、口をつける事無く放置していたカップに手を伸ばしながら、入手した情報を頭の中で整理していく。  

 

 まず、この世界(テライア)についてだが、『西方大陸』『東方大陸』という2つの大陸と、いくつかの島によって成り立っているそうだ。

 西方大陸には人間族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、龍人族の主要5種族の他、妖精(フェアリー)小人(ノーム)といった少数民族が暮らしており、大陸中央に智樹を召喚した人間族の王が治めるロートファルケン王国、西にエルフ族の王が治めるウェスタルス王国、南にドワーフ族の王が治めるサウサリア王国、東に龍人族の王が治めるイストラト王国、北に獣人族の王が治めるノーザン王国、以上5つの大国が存在している他、妖精や小人といった少数民族の暮らす集落もいくつか点在している。

 主要5ヶ国の関係は良好で、対等な同盟関係を結んでいるそうだが、実際には人口の多さと勇者召喚を行える唯一の国という事から、ロートファルケン王国が他の4ヶ国より若干上の立場にあるらしい。


 一方、東方大陸には人型の魔物である魔人族が文明を築いているのだが、詳しい事はわかっていない。

 わかっているのは200年に1度、魔人族を統べる存在である魔王が出現し、軍勢を率いて西方大陸に侵攻してくるという事。

 そして、どういう原理かわからないが、魔王は倒されても200年後には復活するという事だけだ。次の復活は3年後。

 魔王がいなければ、東方大陸の魔人族はこちらに侵攻する意思を見せない。その為、東方大陸に関しては監視を続けつつも半ば放置状態らしい。無理に藪を突いて、蛇を出す必要もないという事だろう。


 次にこの国、ロートファルケン王国についてだが、元々はセントラン王国という名だったそうだ。

 197年前に召喚された先代勇者が魔王を倒した後、当時の王女と結婚。新たな王となった際に、己の姓であったロートファルケンを国の新たな名前とした。

 その為、ロートファルケン王国としての歴史は200年足らずだが、セントラン王国としての歴史を加えると700年ほどの歴史がある。

 森と平野と湖に恵まれており、他国へ農産物の輸出を行うなど、食料自給率は極めて優秀。農業以外の産業としては、林業や繊維・織物産業等があり、国庫事情はすこぶる健全のようだ。

 また、異なる種族の者も分け隔てなく受け入れるのが国風で、要職を異種族が務める事もよくあるらしい。事実、宰相のヴィクトールはエルフ族であり、陸海空3軍の大臣はそれぞれ獣人族、ドワーフ族、龍人族から選ばれている。


 良い国だ。自分を召喚したこの国を智樹はそう評し、すっかり冷めてしまった紅茶を一気に飲み干した。後々細かい粗は見えてくるかもしれないが、勇者としてこの国を守ってほしいと言われて、嫌な気にならない位の魅力がある。


「勇者様。1つお聞きしたいのですが」

 

 そんな事を考えていると、女王(アリシア)が声をかけてきた。すぐさま、居住まいを正す智樹。


「私にお答えできる事でしたら、何なりとお聞きください。女王様」

「勇者様は元の世界で何をなされていたのですか? 賢者にも劣らぬその聡明さ、とても只者とは思えません」

「あぁ…この世界に召喚される前は、教師をしていました」

 

 若干興奮気味に質問してくる女王(アリシア)に内心苦笑しながら、元々の職業について答える智樹。その瞬間、3人の目の色が変わった。


「教師! という事は、貴族階級の方だったのですね!」

「え?」

「高い教養をお持ちだと思っていましたが…なるほど、納得ですな」

「あ、いや…」

「勇者として、これ以上無い逸材ですわね」

「ちょ、ちょっと待ってください! 皆さん、何か勘違いされていませんか?」

「「「え?」」」

「たしかに私は大学を卒業し、教師として働いていましたが…一般庶民ですよ。その、こちら風に言うなら…平民です」


 自分は平民に過ぎない。智樹の言葉に3人は驚愕の表情を浮かべ、すぐに質問をぶつけてきた。先程までとは逆に質問に答えていく智樹。瞬く間に1時間が経過する。


「勇者様の故郷は、この国よりもはるかに進んだ国なのですね…」

「貴族や豪商の子弟でなくとも、高等教育を受ける事が出来る…本当に夢のようです」

「国の礎はやはり教育…貴族達の反対さえ無ければ…」


 智樹の故郷では、子ども達は全員9年の義務教育を受け、更に殆どの者が3年から7年の高等教育を受ける。そんな話を聞かされ、半ば呆然と呟く女王(アリシア)王太后(クリスティア)。そして悔しさに顔を歪めながら、静かに呟く宰相(ヴィクトール)


「貴族の反対…ですか」

「うむ、女王陛下は即位された時から、この国を更に発展させるには、国民の教育が必要不可欠である。との考えをお持ちで、現在は貴族や豪商の子弟のみが通う学校の門戸を開くか、平民の子弟が通う為の新たな学校を造るべきだと、仰っておられるのだが…」

「貴族の一部が強く反発しているのです。平民に学問など不要。読み書きといくらかの計算ができれば十分だ。と…」

「ふむ…」


 宰相(ヴィクトール)女王(アリシア)の話を聞き、暫し黙り込む智樹。女王(アリシア)に反対している貴族達。彼らは恐らく“学校に通う事で平民達が知恵をつけ、自分達に逆らうようになるのでは?”と考えているのだろう。

 そうだとすれば、彼らの言い分もわからなくはない。だが…もしも、それだけでは無いとしたら?

 例えば、国が定めた本来の税額よりも多く、それこそ足がつかない程度に税を多く取り、差額で私腹を肥やしているとしたら? それは立派な横領、犯罪だ。


「…これは、あくまでも仮定の話ですが…」


 迷った末に、自分の考えを3人に告げる智樹。


「やはり、勇者殿も同じ考えですか」


 どうやら、3人も同じ考えだったようだ。だが、今のところ横領の証拠となる物が何も無い為、根気強く調査を続けていく事で意見は纏まり、話し合いは終わりを告げた。



 2時間後。謁見の間に城内の主だった者達が集められ、智樹の親任式が執り行われた。

 目の前で跪く智樹を優しく見つめていた女王(アリシア)が、ファンファーレが鳴り響くと共に凛々しい目つきに変わり、先端に真紅の宝玉が取り付けられた杖を手に立ち上がり、宣言する。


「我、ロートファルケン王国第8代女王、アリシア=ロートファルケンの名の下に、汝、沖田智樹を勇者に任命します」

「勇者の大任、全身全霊をもって務めさせていただきます!」 

 

 女王(アリシア)の声に高らかに答える智樹。これで智樹は正式にロートファルケン王国、そしてテライアの勇者となったのだが…。


「お待ちください!」


 それに異を唱える者が現れた。智樹が振り返ると、動きを妨げない程度に装飾が施された軍服に身を包んだ茶髪の青年が、敵意剥き出しでこちらを睨んでいる。


「ニルス殿! 不敬ですぞ!」

  

 すぐさま宰相(ヴィクトール)が怒りの声をあげるが、ニルスという名の青年は更に声を荒げる。


「不敬なのは百も承知! しかしながら、どこの馬の骨とも判らぬ者を勇者と認め、共に戦うことはできません!」 


 ニルスの言葉に続くように、彼の背後にいた騎士達からも智樹へ無言の圧力が放たれる。そして


「たしかに、ニルス殿の発言は不敬なれど、一理ありますね」

「勇者とは我らの先頭に立ち、魔王に立ち向かう者。力無き者では到底務まりますまい」

「勇者殿の力を見極める良い機会かもしれませんな」


 ニルスと同じように軍服に身を包んだドワーフの女性、獣人の男性、龍人の男性が次々と口を開いた。着用している勲章の数からして、先の話に出てきた陸海空3軍の大臣達だろう。

 3軍の大臣達まで女王(アリシア)の決定に異を唱えた事で、他の貴族達もざわめきだす。このままでは収拾がつかないと判断した智樹は、覚悟を決めて立ち上がる。

 

「ニルス殿、でしたね。貴方の仰る事も尤もです。良いでしょう。私の力を見極めてください。女王陛下、私の我侭をお許しいただけますか?」

「…わかりました。勇者殿と宮廷騎士団団長、ニルス=フレイマーの勝負を認めます。場所は訓練場、魔法及び真剣の使用は禁止、よろしいですね?」

「「はい!」」


 こうして、勇者と宮廷騎士団団長の勝負が急遽決定した。  



 城内の訓練場で向かい合う智樹とニルス。智樹は木剣、ニルスは2mほどの棒をそれぞれ装備している。 


(実力差は…まぁ、10倍は無いと思いたいけど…)


 そんな事を思いながら、数分前宰相(ヴィクトール)から教えられたニルスのステータスを自分のそれと比べてみる智樹。



 【名 前】ニルス=フレイマー

 【性 別】男

 【年 齢】26歳

 【種 族】人間 


 【レベル】33


 【H P】536(451+85)

 【M P】379(339+40)


 【筋 力】128(75+53)

 【耐久力】105(75+30)

 【器用さ】110(74+36)

 【敏捷性】84(74+10)

 【反 応】84(74+10)

 【知 力】11(11+0)

 【魔 力】74(74+0)

 【加 護】16(14+2)



 【称 号】


  宮廷騎士団団長(HP&MP+40、筋力+15、耐久力、器用さ、敏捷性、反応+10、加護+2)



 【各種補正】


  格闘攻撃ダメージ+42

  近接攻撃ダメージ+42+α

  射撃攻撃ダメージ+36

  魔法攻撃ダメージ+24


  格闘攻撃命中率+25%

  近接攻撃命中率+25%

  射撃攻撃命中率+22%

  魔法攻撃命中率+14%


  防御成功確率+16%

  回避成功確率+19%


  物理防御力+23

  魔法防御力+9



 【スキル一覧】


  長剣術 ランク5(筋力+14 器用さ+14 長剣装備時、近接攻撃ダメージ+10)


  槍術 ランク6(筋力+24 器用さ+12  槍装備時、近接攻撃ダメージ+20)


  防御術 ランク5(耐久力+14 HP+35)


  HP回復速度上昇 ランク5(HP+10 耐久力+6 HP回復速度80%上昇)



 【名 前】沖田智樹

 【性 別】男

 【年 齢】20歳

 【種 族】人間 


 【レベル】1

 

 【H P】78(23+50)

 【M P】121(41+80)


 【筋 力】39(12+27)

 【耐久力】26(11+15)

 【器用さ】39(12+27)

 【敏捷性】38(11+27)

 【反 応】38(11+27)

 【知 力】13(13+0)

 【魔 力】38(11+27)

 【加 護】18(13+5)



 【称 号】


  勇者(HP&MP+50、筋力、耐久力、器用さ、敏捷性、反応、魔力+15、加護+5)



 【各種補正】


  格闘攻撃ダメージ+13

  近接攻撃ダメージ+13

  射撃攻撃ダメージ+13

  魔法攻撃ダメージ+12


  格闘攻撃命中率+7%

  近接攻撃命中率+7%

  射撃攻撃命中率+7%

  魔法攻撃命中率+7%


  防御成功確率+7%

  回避成功確率+7%


  物理防御力+6

  魔法防御力+5



 【スキル一覧】


  長剣術 ランク3(筋力+6 器用さ+6)


  弓術 ランク3(器用さ+6 反応+6)


  打撃術 ランク3(筋力+6 敏捷性+6)


  投擲術 ランク3(敏捷性+6 反応+6)


  魔力操作 ランク3(魔力+6 MP+15)


  MP回復速度上昇 ランク3(MP回復速度30%上昇)


  複数詠唱破棄 ランク3(1度の詠唱で低級魔法を4回まで同時発動可能。魔力+6 MP+15)



(うん、まともにぶつかれば秒殺確定だ) 


 勇者の称号を得た事でステータスが底上げされても焼け石に水でしかないこの実力差。圧倒的過ぎて笑いが出てくる。

  

(勇者らしくないと文句を言われるかも知れないけど…勇気と知恵と根性でやってやるさ!)


 それでも智樹には勝算があった。1割にも満たない低い確率だが、賭けるに値するだけの勝算が。


「ぬぅぉぉぉっ!」


 試合開始の銅鑼が鳴ると同時に声をあげ、棒を振り回しながら智樹へ突進するニルス。自らの間合いに入ると同時に棒を全力で振り下ろす。

 ドカン!という音と共に、訓練場の石畳が砕け、その下の地面が大きく凹む。

 

「なんて出鱈目な威力!」


 ギリギリで回避に成功した智樹は、ニルスが放った一撃の威力に顔を引きつらせながらも、決して足を止めずに動き回る。


「えぇい! ちょこまかと!」 


 そんな智樹の姿に苛立ったのか、ニルスは怒りの形相で突きを繰り出す。

 

「っとぉ!」


 その突きを空中回転で回避した智樹は、ニルスの背後に降り立つと同時に、持っていた木剣を投げつけた! 一直線にニルスの頭部へ飛んでいく木剣。


「馬鹿か!」


 だが、起死回生の1発はニルスの振るう棒によって、あっさりと叩き落とされてしまう。

 これで勇者の武器は無くなった。己の勝利を確信するニルス。


「ッ!」


 しかし、その確信は一瞬で覆された。何かが自分の顔面めがけて飛んできたのだ。慌てて棒で叩き落し、その正体を知るニルス。


(つぶて)だと!」

「正解」


 ニルスの叫びを淡々と肯定する智樹。その手にはいつの間にか無数の石が握られている。

 

「貴方が石畳を砕いてくれて助かりました。おかげで飛び道具を楽に手に入れられましたから!」


 そう言うが早いか、ニルスへ次々と礫を放つ智樹。放たれた礫は投擲術ランク3を習得している為か、召喚される前よりも速くかつ正確に狙った場所へ飛んでいく。


「なめるなぁ!」  


 ニルスも負けてはいない。棒を振るい、飛んでくる礫を次々と叩き落していく。


「確かに速い。狙いも正確だ。だが、この程度の攻撃防げないと思ったか!」 

「だったらこれで!」  


 ニルスの声に答えるように再度礫を投げる智樹。礫は一直線にニルスの顔面に飛んでいく。


「こんな物!」

 

 今まで同様叩き落してやる! そう言わんばかりに棒を振るうニルスだったが、今度は今までのようにいかなかった。

 直線の軌道を描いていた筈の礫が、弧を描くように曲がったのだ。当然、棒は空を切り、礫はニルスの左太股に命中する。


「ぐぅっ!」


 高速で放たれた礫をまともに受け、その激痛に顔をしかめるニルス。それによって生じる隙を智樹が見逃す筈が無い。全速力でニルスに駆け寄り、その勢いのままドロップキックを放つ!


「…決まった」


 立ち上がりつつ静かに呟く智樹。顔面にドロップキックを受けたニルスは、倒れたまま動こうとしない。脳震盪でもおこしているのだろうか?


(…やりすぎた?)

 

 さすがに心配になり、声をかけようとしたところでムクリと起き上がるニルス。そのまま無言で智樹に跪き、頭を垂れる。


「参りました…勇者殿。これまでの無礼、どうかお許しください!」


 自らの敗北を認めたニルスに、観戦していた騎士達もざわめきだす。どう対応するべきか、迷った智樹が女王(アリシア)宰相(ヴィクトール)に視線を送ると、2人は静かに頷きを返してきた。 


(この場は任せる…という事か)


 2人の意図を察した智樹は軽く息を吐き、ニルスに声をかける。


「ニルス殿、顔を上げてください」

「し、しかし…」

「そもそもの原因は、私が勇者らしく見えなかった事にあるのですから…さぁ、この話はもう終わりにしましょう」

「勇者殿…」

「これからはその優れた武勇を活かし、私を支えてください」

「畏まりました。これからは勇者殿をもう1人の主と仰ぎ、全身全霊を持ってお仕えいたします!」

 

 騎士団長のニルスの言葉に、周囲の騎士達も一斉に跪く。こうして、波乱に満ちた親任式は終わりを告げた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

続きも極力早く投稿したいと思います。


次回から暫くの間は内政&外交話になる予定です。


ご意見、ご感想、誤字脱字の指摘、お待ちしております。

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