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プロローグその2 神様との会談

短いですが、第2話を投稿します。

プロローグは次回で終了し、第4話から本編に突入する予定です。

 沖田智樹。彼の人生は長い目で見れば、普通のものだった。

 そこそこ裕福な家庭に産まれ、大怪我をしたり、大病に罹る事も無く健康に育ち、中学と高校は地元の公立、大学はそれなりに有名な公立大学にそれぞれ進学。

 教員免許を取得し、大学卒業後は山間にある小さな村の小学校で、教師として働き始めた。

  

 全校生徒5人の小さな学校だったが、教え子達からは兄のように慕われ、同僚や保護者、村の住人達とも良い関係を築いていた。

 派手な成功は無いが、大きな挫折も無い。おそらくはこのまま順調に教師としてのキャリアを重ね、結婚して家庭を築き、平凡だが幸せな人生を送っていく筈。少なくとも3時間前まで、智樹はそう思っていた。それなのに…。


「人生、一寸先は闇とはよく言ったものだよ…」

 

 静かに呟き、現在の状況に至った経緯を頭の中でまとめてみる。

 

 1、麓の町へ教え子達を連れて買出しに来たら、牛刀を持って暴れる通り魔と遭遇した。

 2、教え子を庇おうと無我夢中で、通り魔に立ち塞がったら自分が刺された。教え子達を逃がす事は出来たが、自分は死んでしまった。

 3、魂だけになって天界にやって来た。と思ったら、自分の死は死神のケアレスミスのせいで起きた予定外の事態だと判明し、神様から謝罪を受けた。


 ライトノベルも真っ青な超展開である。しかし、この現実を受け入れない訳にもいかない。

 心の中で折り合いをつけ、前を向く智樹。そこには高そうなアンティーク調のテーブルを挟んで椅子に座る神様と、背後に控える天使アリエルの姿。

 今後の事を立ち話で決めるというのも無粋。という神様の配慮ですぐさま椅子とテーブルが用意されたのだ。

 周囲から丸見えだけどいいのか?という智樹の声なきツッコミは誰にも気が付かれる事無く、話し合いは始まった。


「さて、沖田智樹さん。今回の件では貴方に多大なご迷惑をおかけしました。そのお詫び…になるかどうかはわかりませんが、こちらとしては出来る限りの事をさせていただきます」


「ご厚情痛み入ります」


「まず、今回の元凶であるあの簀巻きの処分ですが…アリエル」


「はい、死神資格の剥奪及び準天使見習いへの5階級降格。さらに向こう300年の昇格停止処分、それから名前を『簀巻き』へと変更します。沖野さんがご希望なら、更に処分を追加いたしますが」


「…いえ、そのくらいで十分です」


 淡々とアリエルから告げられた簀巻きへの処分内容に、内心ドン引きしながらも、表面上は冷静に対応する智樹。


「では、そのように処理いたします」


「簀巻きの処分はこれで良し…では、沖田さん。ここからは貴方の今後についてです」


「……はい」


「こちらから貴方へ提示出来る選択肢は2つあります。1、このまま天国へ向かい、転生の時まで天国で過ごす。2、すぐに転生する」


「どちらも転生するわけですね。1と2の違いは?」 


「1を選んで転生する場合は、転生先や生まれ持った才能などは選べません。2を選ぶならば、貴方の希望を最大限考慮しましょう。流石に全知全能の存在にする事は出来ませんが」 


 大雑把に言えば、天国で暫く過ごして一般人に生まれ変わるか、天国行きを諦めてある程度のチートスキル持ちとして生まれ変わるか、という事だ。

 どちらを選ぶか、目を閉じて考え込む智樹。彼が口を開いたのは10分ほど後の事だ。


「確認したいのですが…転生先を選べるというのは、地球限定ですか?その、異世界なんかは…」


「選べますよ」


 神様の言葉に智樹の目が輝く。


「異世界って事は…魔法とかも?」


「存在する世界もあります」


「ドラゴンなんかがいる世界も?」


「ありますよ」


「2でお願いします!」


 神様の言葉に決断する智樹。子どもの頃、本で読んで憧れた剣と魔法の世界。それが実在するだけでなく、チートスキル持ちで転生できるなんてわかった時点で、この選択肢を選ばないという選択が出来るだろうか?答えは否である。 


「では、沖野さんの希望に合う世界をこちらでリストアップしましょう」


「お願いします」



 暫くして、智樹はアリエルが用意してくれた異世界のリストを入念にチェックしていた。

 アリエルの話によると、剣と魔法の世界はかなり多いらしく、智樹の出した幾つかの細かい条件に当てはまる物だけを抜き出しても30を超えるという。

 どの世界も魅力的で、選定は困難を極めたが…


「決めました! 異世界テライア、ここにします!」


 6時間後、智樹は転生する世界を選択した。


「異世界テライア。なるほど、あそこなら条件にピッタリですね。しかし、あそこは今…あぁ、そういう事ですね」


「はい! それで神様…図々しいお願いなんですが…」


「大丈夫。何とか出来ますよ」


 神様の言葉を聞いた途端、満面の笑みを浮かべ、子どものように喜ぶ智樹。 


「神様、沖田さんは何をあんなに喜ばれているのですか?」


 智樹の喜びよう、その理由が解らず神様に問うアリエル。そんな部下の疑問に神様は笑みを浮かべ答え始める。


「テライアには魔王が存在します。200年に1度現れ、世界を混沌と恐怖で包み込む悪の化身。そしてこの魔王は、倒されても200年後には必ず復活するという厄介な性質を持っています」


「なるほど、沖田さんがテライアを選んだ理由はそれですか。自分が勇者となり魔王を討ちたいと」


「残念ながら、それでは正解の半分ですね。次に魔王が復活するのは、テライアの時間に直して3年後です。今から転生しても3歳児では魔王に勝てるわけがありません」


「では、どうして?」


「ヒントをあげましょう。テライアは魔王復活の兆候を掴むと、別世界から勇者を召喚するのが慣習となっています」


「………まさか」


「そう、そのまさかです。彼は勇者としてテライアに召喚される事を望んでいるのですよ」

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

続きも極力早く投稿したいと思います。


ご意見、ご感想、誤字脱字の指摘、お待ちしております。

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