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解らなくなった
「あの……」
近くにいる警官に向かい、私は告白した。
「あれをやったの、私です」
解らなくなった。
だって、あれは確かに死んでいた。
反応もなく、反射もない。
充実した時を過ごした人が、生きてる実感を覚えることを、何一つしていないのに、あれが生きていると、誰もが言う。
私がやったのは、いけないことかもしれない。
だから、いけない事をしたら怒られなくちゃいけないと思って、私は名乗った。
でも、正しいか間違いかで言うなら、私は決して、間違いを犯したわけではない。
彼の母親には悪い事をしたと、罪悪感を覚えたから、私は名乗っただけで、彼を消したことまで、間違いだったとは思っていない。
そんな反省も贖罪もない私は、死刑を言い渡された。
執行までの長い、短いかもしれない時間。
私は、思うことができるだろうか。
死にたくないと、恐怖に怯えることが……。
(END:静止した生死)