7. 第1章その7 発見してしまいました
修行を開始してから、数ヶ月たち。体力、剣術、魔法のバリエーションと着々と成長し心なしか身長も伸びていた頃。
将は、休憩を利用して湖の畔に来ていた。嵐が過ぎた次の日だったため水嵩は多いが、良く晴れ、雲が無い気持ちの良い天気だった。
(しかし、嵐の日まで外で剣術の稽古をするとは思わなったよ。足元滑るし最悪だったなぁ。)
(何が、「敵は晴を選んだりしないぞ。」だ。敵なんて居ないじゃないか。)
ブツブツとカゼールの厳しい修行に文句をいいながら、草叢に横たわる。
しばらく目を閉じてまどろみを楽しみ。
(さて、戻るかな。)
と元日本人サラリーマンらしく修行に戻ろうと起き上がると。
(あれ?)
湖岸に大きめの卵が転がっていた。
(おっ、ラッキー今日は卵焼きでも食べられるかな。)
拾ってみると案外重く、両手で持って帰った。
「師匠、卵拾ったよー」
「そうさわぐな、どうしたんじゃ。」
「いやー、今日はラッキーですよ。卵拾っちゃいました。」
「ほぅ、大きいな。ちょっと見せてくれ。」
カゼールは卵を受け取り太陽にかざすと。
「ふむ、この卵はまだ生きているな。しかも、状態から、それ程経たずに羽化するぞ。」
「えっ、じゃあ食べられない?」
「まあ、鳥肉として喰えん事もないが。
お主、最近良く食べるのぅ。」
「そりゃ、あれだけ修行すれば。成長期だし、身体は。」
「確かに、背も若干伸びたようじゃの。で、卵じゃがどうする?お主が見つけたのじゃから好きにするといい。」
「うーん、卵焼き。 じゃなくて羽化させてみたい。 かな。」
「そうか。 ちょっと待っておれ。」
そう言って一度家に入るとバックパックを持ってきて、将に渡す。
「これに卵を入れておけ。中に柔らかい布を入れておいたから大丈夫じゃろ。割らずに訓練するのも良い修行になろう。」
ニヤリと笑う。
(あぁこの人絶対Sだ。)
卵王子ならぬ、卵剣士みたいな状態で一週間過ごすと、たまごの中からコツコツ音がして、その後殻が割れた。
中から出てきたのは。ちょっと大きめなヒヨコ?ぽい生き物。
ミュー、ミューと鳴き近づいてきた。
(かっ、可愛いすぎる。こんな生物いたんだ。)
とりあえず、身体を布で拭いてやると、モコモコした感じになった。
いつもの走り訓練途中だったので、そのままバックパックに入れて家に戻る。
「師匠。ヒヨコになった。」
「お、羽化したのか。見せてみろ。」
カゼールは、ヒヨコをみると。
「うーん、鳥にしては足がしっかりしすぎな気もするが太っているからかのぉ。
餌はお主が自分で調達するんじゃぞ。それも修行じゃ。」
「餌って何をあげればいいかな?」
「自然に近い物が良いじゃろ。魚とか小動物かの。」
「魚がいいかな。小動物はちょっと苦手かも。」
「では、そこにある木槍を使って取るんじゃ。早速行かんと飢え死にしてしまうぞ。」
「わかった。行ってくる。」
そう言うと、卵を見つけた湖近くの川原に向かった。ヒヨコはカバンに入れ、顔だけ外に出ている。
(そうだ。名前を決めないと。
うーん、ピヨ、デブ。駄目だネーミングセンスない。)
「ミュー?。」
心なしか心配そうにこちらを見る。
「うん。ミューでどうだろう?」
「ミュー、ミュー。」
(どうやら気に入った様だな。じゃあミューに決定。
オット、早く魚取らないと。)
川に入りじっと魚を観察して槍を突き刺す。
「採ったどー!!」
思わず叫んでしまった。
魚は30cmぐらいの鱒の様だった。
ミューは、ビチビチはねている魚を見るとミュー、ミュー言いながら突ついて丸飲みした。
「うわっ。凄い食欲だな。」
そう、言いながら2匹目を取る。
続けて丸飲みすると、お腹いっぱいになったのかバックパックに戻って寝始めた。
(食っちゃ寝か。羨ましい。)
次の餌用に、さらに4匹採って家に戻った。
扶養家族が出来ました。