72. 第3章その36 出会い?
前日の予定通り、将達は岩石地帯に向かっていた。
「距離はそれほどでもないけど、ずっと登りなのはちょっとつらいわね。」
エミリアが珍しく愚痴をこぼす。
「昨日、食べ過ぎてたみたいだから、ちょうどいいんじゃないか?」
将が余計な事を言うと。
「余計なお世話よ!!」
と、軽くキレてズンズン歩を進めていくエミリアを見て。
『全然バテてないじゃん。』
さすがに心でつぶやく。
しばらく順調に進んでいくと。
「んっ、何か聞こえるぞ。」
シルフィが歩を止めて、警戒を即す。
将とエミリアも周りを見ながら耳を澄ますと、何かが争っている様な音と叫び声が微かに聞こえた。
「どうやら、あちらの方からの様だ。どうする?」
「警戒しながら近づいて、戦闘になったらいつも通り、俺は初撃で魔法を使う、シルフィは状況を見ながらエミリアを守るか、攻撃を判断、エミリーは周囲警戒と援護、後は柔軟に対応ってことで。」
3人は急ぎ足で会話をしながら、音のした方向に進んだ。
近づくと、ガサゴソといった感じの昆虫独特な行動音とはっきりとした人の声が聞こえてきた。
「お前らー、バラバラになるな。麻痺した奴はもう助からない。こっちに集まって…を守りながら逃げる事に徹しろ。」
「しかし、まだ生きているのだ。今ならこいつらを倒す事だって。」
「あほか。こいつらはまだまだ出てくるぞ。周りを良く見てみろ。」
巨大なアリが半分壊れた塔の様な穴から、ドンドン現れていた。
将達が、ようやく様子が見えるところまで到着すると、12人の兵士らしき装備をした人間と大量の巨大アリが争っているところだった。
ただ、人を襲っているアリは10匹ほどで、その他は少し距離を置いて近づいている状況だった。
「おい、助けるからもう少し頑張れ!!」
将が声を出すと、そのうちの一人は、こちらをチラ見して。
「危ないから、近づくな。お前たちも早くここから逃げろ!!」
そう言うと、棍棒を振ってアリに攻撃し、一人をかばいながら徐々に後退している。
「シルフィ、エミリア。俺が後続のアリと兵士達を分断する。」
「わかったわ。ショウ、シルフィ、あのアリはジャイアントアーミーアントよ。腹部の針は麻痺毒を持っているから気を付けて。」
エミリアの声を聞きながら、将は魔法に集中する。
「ボルケーノ!!」
呪文と同時に人を襲っているアリと後続のアリの間に灼熱のベルト地帯が出来上がり、後続のアリは、触覚を動かしながら前進をためらう。
その隙に、シルフィは倒れている兵士に襲い掛かろうとしているアリに急行して頭部の関節を分断した。
さきほど将達に逃げろと言っていた男が声をあげる。
「暑いが助かった。おまえら、落ち着いて自分の前のアリ達を片付けろ。」
そこに、エミリアがエクストラヒールを倒れていた4人の兵士にかける事で前線の戦況は好転した。
「ファイヤーストーム」
将は、周りが岩石ばかりで燃え広がる心配がない事を確認すると、業火の範囲魔法を唱えた。
アリ達を巻き込みながら、炎の竜巻がボルケーノでできた溶岩の向こう側を舐め尽くし、魔物を一掃した。
その炎の竜巻に気を取られながらも、シルフィや兵士たちはアリを殲滅する事ができた。
将が、近づくと一人は見覚えがある顔だった。
「あっイルハンじゃないか。」
「おー、ぼうず。えーとショウだったな。助かったぜ。今回はかなりやばかったからなぁ。」
「いや、間に合ってよかったですよ。」
その様子を見ながら、イルハンに守られていた一人が前に出て将達に礼を言った。
「この度は、ご助勢感謝する。
私の名前は、ルクサーナ・カイザルと言う。
よろしければ貴公らの名を教えて頂けないか?」
ひどく丁寧な言葉に、一瞬将は戸惑いながら答える。
「ショウです。」
「シルフェディアです。」
「エミリアと申します。」
3人がそれぞれ名乗る。
「ショウ様、シルフェディア様、エミリア様ですね。
この度は、我らの危機をお救い下さり誠にありがとうございます。今この場では、言葉にて礼を申し上げる事しかできませんが、街に戻りましたら我が家にお招きしてお礼を差し上げたく。
受けて頂けるでしょうか?」
「え、ええ。」
急な展開についていけず、将はぎこちなく答える。
「それは良かった。
申し訳ないのですが、私達は傷ついた者たちもおりますので、早急に戻ろうと思います。
失礼ですが、宿はどちらにお取りですか?後ほど迎えに参りますので。」
「子猫の昼寝亭です。」
「ああ、そちらでしたら家からさほど遠くないです。よかったですわ。」
「ルクサーナ卿、用は済んだかい。そろそろ、やつらも動けるから屋敷に戻ろう。」
イルハンが促すと。
「はい、それではショウ様達。失礼いたします、重ねてですが、ありがとうございました。」
そう言うと、後ろの兵士達も頭を下げた。
将らは、彼女達を見送ると、顔を見合わせ。
「ふー、なんだか大変だったな。」
「まあ、でも。あなたの魔法の修行の成果は良くわかったわ。」
エミリーが言うと、シルフィが頷く。
「さて、魔石と素材の回収…は、できるやつだけやって帰ろう。」
黒焦げになったほとんどの残骸と、一部の燃えていない魔物の死骸をみやってシルフィが息を吐く。
「俺…、わるくないと思う…。」
なんと100万ユニーク超えていました。
拙い作品を多くの方に閲覧頂き、喜びと伴に感謝の念を禁じえません。
誠にありがとうございます。




