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71. 第3章その35 久々に

「まず、俺が隠れながら先行して6体同時にサンダーストライクを打つ。それと同時にエミリーはフィジカルガードを全員にかけてくれ。

 その後、シルフィと俺は左右のオーガーをそれぞれ攻撃、オークに生き残りがいればエミリアが対処、全滅していたら俺たちの回復と周辺警戒。

 これでいいか?」

 二人は無言で頷く。

「よし、じゃあ行くからな。」

 将は、警戒しながら徐々に近づきそれから5mほど離れて二人が続く。

 オーガー達は特に警戒する様子も無く、どんどんこちらに近づいてくるため、ほぼ待ち伏せの様な状況だ。オーガー達を恐れているのか、他には魔物が見られない。


 下草はあるが、木々が少ない場所に6体が移動したところで将が魔法を放つ。

「サンダーストライク!!」

 6本の光束が魔物を襲い4体が倒れ、2体のオーガーは悲鳴とも咆哮ともとれる声をあげた。

「グォーギャーーー。」

 その声に重なる様にエミリアの真言が唱えられた。

「マナよ、我が声を聞け。我が同胞の肉体をその聖なる力により守りたまえ。」


「フィジカルガード。」


 先の修業期間で新たに覚えた物理攻撃の威力を半減させる効果を持つ神聖魔法を唱えた。

 3人は体の表面が微かな痒みと伴に活性化されるのを感じた。

「我はマナに感謝のいのりを捧げる。」


 シルフィは修行の成果か、将とは若干の距離があったにもかかわらず、同時か少し早いぐらいのタイミングでオーガーに切りかかった。

 エミリアは、2人がオーガーに切りかかると同時に、棍を油断なく構えてオークの様子を伺いつつ近づき、止めに喉に突きを入れてまわった。

 4体とも、こと切れていた様で特に反応もなかった。


 少し余裕が出来たところで、周りの様子を伺うと伴にシルフィと将の戦う様子を見る。


 将は相変わらずミスリルソードにシャープウィンドを纏わせているようで、オーガーの防御ごと切り刻む様に攻撃を加えていた。

 シルフィの方は、なんというか少し気持ちが悪い動きだった。

 オーガーも、その攻撃パターンに戸惑い、苛立ちながら攻撃を加えるのだが、全く当たる様子が無く、攻撃でできた隙をつき、腕の腱、膝の後ろ、踵などに攻撃を加え動きが鈍ったところを容赦なく首筋に強烈な一撃を加え半ば首を絶ち勝負をつけた。


 勝負がつくと同時に、将の援護にまわると、明らかに劣勢となったオーガーが及び腰になったところへ。

「シュッ。」

 と鋭い気合を入れてシルフィが飛び上がり脳天から顎にかけて斬りおろし勝負がついた。


「ヒュー、すっげーなー。」


 将も半分あきれた様にシルフィの手並みを褒める。

 シルフィは、少し恥ずかしげに振り向き。

「すまない。気合が乗って、つい横取りしてしまった。」

「いいさ、誰が倒したなんて問題じゃないんだから。それにしても剣速が尋常じゃなく速くなったな。剣先なんてブレて見えたぞ。」

「しかも、動きもなんていうか、奇妙だったわ。」

 エミリアもシルフィの戦いについてコメントをする。


「奇妙はちょっとひどいな。動きに関しては、まあ、その、師匠のおかげだな。」

 シルフィは不本意ながら修行の効果を認める。

「あのエロ師匠の?」

「まあ…、そうだ…。ここで長々説明して何かあったら困る。とりあえず素材と魔石を採集して戻ってからにしないか。」

 二人は、それはそうだと頷き、周りを警戒しつつ素材採集をした。


 今日一日の成果としては十分だったので、とりあえず街まで戻る事にした。帰りは特に魔物にも出くわす事もなかった。

 ギルドで、報告と素材の換金を済ます。依頼報酬に関しては累積での結果となるため今回は清算しなかった。

 まずは、3人で宿屋に戻り、装備を脱いでから公衆浴場で汗を流し夕食時に食堂集合として、いったん解散した。


 リラックスして、先に将が一杯麦酒を飲んでいるとシルフィとエミリアがやってきた。

「あっ、先に飲んでるの?」

「風呂上りで、喉乾いたしね。悪いな。」

「おばさーん、こっちに麦酒2つ追加ね。」

「あいよー。」


 おかみさんが、ドンっと大きめのジョッキを2つ運んでくれる。

 3人の飲み物がそろったところで。

「じゃあ、久々の仕事終わりに、かんぱーい。」

「「かんぱーい。」」


 しばらくすると、食事も運ばれてきて、モリモリ食べながら麦酒をあおる。

 将は、心の中で

『やっぱ、仕事あがりのビールは最高だなぁ。』

 とオヤジな事を思っていたが、なんとなく言わずに飲んでいた。

 するとエミリアがシルフィに話しかける。


「そうだ。ショウの顔を見るまですっかり忘れてたけど、シルフィのあの動きってどうなってるの?」

 なぜ将の顔をみて思い出したのかは謎だが、そう尋ねた。

「ああ、あれはな。師匠の動きを避けるために必要だったんだ。」

「??」

 二人が良くわからない。という顔をしてシルフィを見る。

「説明が難しいから、実際にやってみるか。エミリーちょっと立って私の体に触れてみてくれ。」

 二人は立ち上がり、実演しはじめる。

「シルフィ。じゃ行くよ。」

 シルフィが頷くとエミリアが手を伸ばして胸に触れる。


「何よ。避けないの?」

「いや、今のは動かない場合だ。じゃあ、次は避けるから触ってみてくれ。」

 今度はシルフィは足を前後にずらして動く余地を作っていた。

「じゃあ、もう一回いくよー。」

 そういうと、手を出すがシルフィが避ける。さらにエミリアも手を出す。

 エミリアの方も棍の修行の成果か動きがシャープになっていて、5回ほどでシルフィに触れる事ができた。

「なによぉ、オーガーの時と違うじゃないの。」

「ああ、これが修行前の動き方だ。でもエミリアもずいぶん動きが良くなったな。以前だったら触れられなかったんじゃないか?」

「ふふっ。私だって少しは頑張ったんだから。」

 ちょっと自慢げに鼻腔をひろげるエミリア。


「そうだな。じゃあ、次は本気で避けるからどうぞ。」

 エミリアは何も言わずに襲い掛かる。

 それをヒョイヒョイ避けるシルフィ。将もその動きを目で追うのだが何というか見る事が難しい。“ヌルッ”という感じで予想外の場所に体が動くため視認しずらいのだ。

 エミリアが息切れをしそうになり。

「はぁ、これ以上やるとせっかく汗を流したのに、またお風呂行かなきゃいけなくなっちゃうわ。」

「まあ、こんな感じだ。アジーズ師によれば、人間や魔物の脳というのは、自然と動きを予想して見てしまうらしい。だから、その予想に反する動きをする事で脳が反応できなくなり、見えているのだが動きを追う事ができなくなるのだそうだ。」

 将はそれを聞いて。

「いや、それ簡単に言ってるけど。相当難しいんじゃないのか?」

「ああ、師匠も会得したのは40歳を超えた頃だそうだ。私ができるようになって体を触らせなくなったら驚いていたよ。」


 二人は、シルフィのコメントに唖然としつつ。仲間の成長を受け入れて話題を他に移した。

「ま、まあ本当にすごい事は良くわかったよ。ところで明日はどうしようか?」

「そうだな。明日はショウの修行の成果が試せる魔物がいそうな場所にしないか?」

 シルフィが提案する。

 地図を指さしながら。

「たとえば、この丘陵あたりはほぼ岩石地帯の様だし、昆虫系の魔物の住処みたいだから範囲魔法を試すのに良いんじゃないか?」

「ふっ、任せろ。」

 酔っぱらって少々かっこつけて将が答える。

 二人は、そんな将を華麗にスルーした。

「じゃあ、明日の予定も決まったし、寝ましょうね。」


 しばらくオヤジモードで一人酒を決め込む将だった。


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