70. 第3章その34 カイザル西領
依頼の受付を済ませると、まずは準備のために家に戻った。
今受けている依頼の内容を簡単にヤスミーンに説明して、今月分の給料を事前に支払うのと、それとは別に30日ほどは暮らせる生活費を渡しておく。
20日経っても帰宅しない場合は、手紙を持って不動産屋に行く様に伝える。
手紙には、20日経っても帰宅しない場合はヤスミーンとの契約を解除する事と、もし生活費が残っていればヤスミーンの収入に加える事を了承している旨などを記載した。
「みなさん、くれぐれも怪我などしない様に気を付けて下さい。
家は綺麗にして待っていますから。」
ヤスミーンが半分泣きそうになりながら3人を送り出した。
カイザル男爵領までの道程は特に大きな問題なく、ちょうど3日後に街に到着した。
「小さいけど綺麗な街だなぁ。」
「ああ、カイザル男爵の本領はさらに東の国境近くだが、この飛び地領を下賜されてずいぶん整備に力を入れたらしい。」
受託時にもらった街中の簡単な地図を見ながらギルドに向かった。
「あっ、あれがそうじゃないか?」
「そうね、中に行ってみましょう。」
ギルドだと思われる建物に入っていった。
「いらっしゃいませ、カイザルウェスト支部へようこそ。」
受付の美人さんがにこやかに出迎えてくれた。
「こんにちは、王都のギルドで受託した依頼の件で来たのですが。」
「あ、魔物討伐の件ですか?」
「そうです。」
「わかりました、お三方でのパーティという事でよろしいですよね?」
「では、パーティ名だけ登録お願いします。
報告に関しては、ここで行って頂いても良いですし、王都にお戻りになられてからでも良いです。」
将は、パーティ名を所定の用紙に記載した。
「はい、簡単ですがこれで問題ありません。
ありがとうございました。」
「すいません、こちらに魔物の目撃分布地図が置いてあると王都で聞いたのですが。」
「はい、ありますよ。
申し訳ないのですが有料になってまして1シュケル頂きますが、よろしいでしょうか?」
「問題ないです、それと清潔でできれば風呂付の宿屋はありますか?」
「残念ながら、お風呂付の宿はこの街にないんです。
公衆浴場に近くて食事の美味しい宿屋でしたら紹介できますが、いかがでしょう?」
「あ、いいですね。
そこでかまいませんので教えてください。」
宿の場所を教えてもらい、そこに向かう事にした。
「じゃあ、計画通り5泊で可能な限り討伐して帰るって事で良いよね?」
「もちろん、そうすれば移動の時間も合わせて12日で家に帰れますからね。」
「そうだな、それならヤスミーンに心配される事もないな。」
エミリア、シルフィともヤスミーンに心配かけたくない様だった。
「あ、あれが『子猫の昼寝亭』じゃないか?」
宿とおぼしき建物の周りに野良猫が数匹寝転がっていた。
2人部屋とシングルを5泊分前払いして予約を済ませると、必要な物以外を部屋に置いて討伐に向かった。
「さて、まずは肩慣らしにオーガーの目撃されたあたりはどうだ?」
「シルフィ、油断は禁物だよ。
オーガーは魔法耐性が低いから問題ないとは思うけど。」
「ああ、言い方が悪かったな。
パワー系の魔物の討伐で剣術特訓の成果を試したかったのでな、油断はしないさ。」
シルフィが少し恥ずかしそうに微笑む。
「わかったよ。
じゃあ、とにかくそのあたりに向かいますか。」
3人は無言で頷きあうと地図を確認しながら、目撃報告があった場所に向かった。
道すがら、ストライクラットなども見かけたが、こちらの様子を伺ってそそくさと逃げて行くため、無視して奥まで進んでいく。
「どうやら、この近辺の様だな。
周囲を警戒しながら周りを調べよう。」
3人で、死角が無いように注意しながらゆっくりと捜索すると。
「ショウ、シルフィ、あそこを見て。
…たぶん、オークね。」
エミリアの視線の先に魔物を見つけた。
「いや、オークだけじゃない。
ほら、その5mほど後ろにオーガーもいるぞ。」
オーク4体の後ろにオーガー2体の団体さんを発見した。
「さて、久々に派手に暴れますか。」




