6. 第1章その6 神聖魔法は一味違う
「神聖魔法を行うためには、ほかの属性魔法と違い"真言"が必要じゃ。
これは、マナが微弱ながら意志を持つ存在であるから、その力を分け与えて貰うに足る理由を言霊として伝えるためじゃ。
もちろん、独自に真言を考えても良いが、マナに理解されるか否かを立証するには莫大な時間と労力が必要となる。
ワシが知る真言は、既に有用である事がわかっている。まずは、それを使える様に成って貰うかの。」
そう言うと彼は目を閉じて集中力を高める。
「マナよ、我が声を聞け。我が同胞に宿る常ならぬ悪しき事柄にその聖なる力をもって癒しを与えたまえ。」
「エクストラヒール」
そう唱えると、将は身体の疲れは吹き飛び、力が沸き上がった。
「我はマナに感謝のいのりを捧げる。」
最後にそう唱えると、カゼールは集中を解いた。
「今の真言は、エクストラヒール、これはあらゆる異常状態を解除し体調を通常に戻す。
先ほどの真言で、我が同胞、の部分を、我、に変えれば自分を治癒する事も可能じゃ。」
「さて、この辺りはマナを使ってしまったからの。移動して修行じゃ。」
カゼールは、背を向けて歩き出したので、その後を追う。
「ふむ、この辺りで良いじゃろ。」
彼は振り返り、将を見て微笑むと、おもむろにナイフで手首を切る。手首からは勢い良く血が噴き出した。
将は驚いてあわあわしている。
「なにしとる、痛いからサッサと治さんか。」
将は慌て集中力を高め。
「マナよ、我が声を聞け。我が同胞に宿る常ならぬ悪しき事柄にその聖なる力をもって癒しを与えたまえ。」
「エクストラヒール」
唱えるとカゼールの傷が癒える。
「ふぅ、良かった」
「良くないわ、感謝の真言を言わんか。心からじゃぞ。」
将は急いで祈る。
「我はマナに感謝のいのりを捧げる。」
カゼールは言葉を続ける
「感謝無き真言では、いつかマナはその祈りに答えなくなる。決して感謝を忘れるな。」
「分かりました。でも、練習でも、そんな真似しないで下さい。」
「しかし、すぐ集中出来たじゃろ。」
カゼールはイタズラっぽく笑う。
「まあ、そうですが、それでもね。」
「分かったよ。
じゃあ次からは自分でやるんじゃぞ。
そのためにも、今日からの剣術の練習は素振りでは無く、ワシとの申し合いにする。」
それから、自分で傷つける必要が無くなったのだった。